第4章13 コール
「これより一時間後にギアでの模擬戦を執り行う。なお、模擬戦では実弾やビーム、その他武装の使用を禁止する。訓練用のサーベルや銃、ペイント弾を用意しているので、必要な者は係に申請する事。それでは、一時間後にここ、アリーナに集合するように。解散!」
模擬戦第一部が終了し、開会式と同じように志願者が横一列に並び、マリーから今後の説明を受け、一時解散となった。
「ヤオフー、大丈夫か?」
フリンが声を掛けた。ヤオフーは直前の模擬戦第五試合で対戦相手に背後から首筋に手刀を受け気を失ってしまった。幸い十分と経たずに意識を取り戻したが、まだ意識が朦朧とし本調子ではなさそうだった。
「あんな奴がいるなんて…」
ヤオフーはフリンの問いかけには答えず、こう漏らした。ヤオフーは続ける。
「私は見たとおり獣型の亜人だ。力はそこそこかもしれないけど、スピードに関しては絶対の自信があったんだ。それなのにあんな…」
「あいつも聖痕持ちか?」
アクラが問いかける
「恐らく違う…。一瞬のことで、しっかりと確認できたわけじゃないんだけど、二度目のアタックの時、奴がこっちを振り向いたときに髪の隙間から首が見えたんだけど、何もなかった」
「——」
「亜人ならともかく、ただの人間が私よりも早いなんて…」
「首以外のところに聖痕があったりするんじゃないのか?」
フリンが二人に対して聞いてみる。
「なかにはそういう奴もいるのかもしれないが、聞いたことはないねぇ。私や兄さんの聖痕も首にあるし…。もしかしたら見落としただけかもしれないけどねぇ」
「仮に聖痕持ちでもヤオフーのスピードを超える奴はなかなかいないだろう。とにかくあいつは要注意だ」
アクラがアリーナから退場しようとしているコールの背中を見ながら言った。その声が聞こえたのかどうかはわからないが、退場口に差し掛かったところでコールは三人に振り返りにこやかに微笑んだ。
「ともかく先ほどの戦闘の結果にかかわらず全員ギア戦には挑めるようだな。フリンもヤオフーも銃は必要だろう。行くぞ」
「——」
ヤオフーは何か思い詰めたような顔をしたままそのまま無言になってしまった。
ひとまずフリンたちは武器の申請を行なうとギアの前で待っているように指示される。三人が待っていると武器はすぐに届けられた。フリンは銃と剣を、ヤオフーは銃を、アクラはペイント弾のみを受け取る。
「俺、こんなの使ったことないぞ」
「ふんっ、まだ時間はある。あのAIに言って調整しておくんだな。ヤオフー、切り替えろ」
アクラは最後にヤオフーに声をかけると、受け取ったペイント弾をスティンガーの両腕に内蔵された機関銃に装填し始める。フリンもヤオフーのことは気がかりではあったが、かけるべき言葉も見つからず、コカヴィエールに乗り込み、ヴィーと装備の調整を開始する。
薄い青髪を肩まで伸ばした痩身の優男、コールは一体何者なのか…。次の対戦相手はまだ決まっていない。志願者たちは一時間後の模擬戦に備え調整を進める。
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