第4章11 第四試合、幕間
模擬戦を終え、フリンが控え席へ戻ってきた。入れ替わりにヤオフーがアリーナに呼ばれ、模擬戦第五試合、六番の志願者との生身での模擬戦最終試合に挑む。ヤオフーはフリンとのすれ違いざま、フリンの肩を叩き勝利を讃えた。
「すごかったじゃないか。いつのまにあんなにできるようになってたんだい?」
「それが自分でも不思議なんだ。今までまともに殴り合いの喧嘩だってしたことなかったのに…」
「ま、あんたも聖痕持ちだからね。これからも頼りにしてるよ」
「聖痕持ち…。そういえば前にアクラも言ってたな。一体なんなんだ?」
「兄さんにでも聞いてみるんだな」
「そうだな…。俺のことばっかり話して悪い!ヤオフーも試合頑張れよ」
「ありがとう。私の対戦相手もあんたのような優男みたいだね。ま、見ててくれよ」
二人は別れ、それぞれ控え席とアリーナに向かう。フリンは席へ着くとアクラに聖痕のことについて訊ねてみた。
「アクラ、おまえ前に聖痕のことを話してたよな?その時は俺にはよくわからなかったんだけど、さっきの試合で自分の身体に何か起こってるような気がしたんだ。おまえ、何か知らないか?」
「ふんっ——」
そしてアクラは先ほどヤオフーに話した内容と同じ話をフリンにする。
「あの時でも、傷の治りが以上に早いことは気になってたんだ。俺の身体そんなことになってたのか…」
言いながらフリンは神妙な面持ちになっていく。自分の身体が他の何かに支配されているような恐怖に指先から震えがやってくる。
「心配することはない。俺もヤオフーも聖痕持ちだ。おまえがおまえ以外になることはない」
恐らくアクラも体験したのであろう。フリンの感じている恐怖を察しアクラが穏やかな声音で語りかける。フリンは曖昧な表情で頷いたが、その後は何も言えなくなってしまった。アクラも無理に話を続けようとはせず二人の間に沈黙が落ちる。
——そうだ、ヤオフーの試合は?
聖痕の現実を知り、一時、フリンは自分のことで頭がいっぱいになってしまっていたが、ヤオフーが試合中であることを思い出し頭を切り替える。試合開始からどのくらい時間が経ったのだろうか?もう終わってしまっているのではないだろうか?そんな不安も感じつつ顔を上げてみた
すると——。
「うぐっ…。はぁはぁ」
そこには信じられない光景が広がっていた。ヤオフーが地面を舐めさせられ、ひどく汗をかき、肩で息をしている傍らで、対戦相手の男は肩まで伸ばした薄い青色の髪の毛を手櫛で整えながら、汗の一筋もかかず、爽やかな微笑みを浮かべている。身長は180センチメートルほどであろうか。ヤオフーと同じぐらいだった。腕や足は細く長い。傭兵というよりはモデルのような体型をしており、フリンと並んでこの選考会には不似合いな男であった。そのはずなのに…。
「一体何があったんだ…」
フリンの口から漏れたその言葉を受け、喋りながらもしっかり試合を観ていたアクラがここまでの経緯について話してくれた。
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