第1章4 邂逅
ズガガガッッ!!
轟音とともにフリンの身体に振動が伝わる。
「機体背面及び脚部に被弾。損傷無し」
AIが続ける。
「あなたのパイロット熟練度及び周辺状況を勘案し兵装は右腕ビーム砲を提案。暫定的に展開しました。ボタン配置及び兵装を変更しますか?」
(さっき、こいつが発射したのはビームだったのか)
フリンは、あまりの事態に何が起こったかわからず、一瞬ぼーっとしていた。被弾した衝撃で目が覚める。
「ト、トリガーは、このままでいい。だが、ビームが強すぎる!調整できないか!?」
「調整内容を掲示してください」
「えーと…。うわっ!」
モタモタしているうちにさらに被弾した。しかしAIによると損傷はないらしい。
「さすがに、このクラスのギアになると物凄いな。各国が欲しがるのも当然ってわけか」
機体の頑強さがわかり、焦っていた気持ちも落ち着いてくる。もう大丈夫だ。
「ビームの出力を絞れ。ブレード状にして使用する」
「調整内容確認。…調整完了」
ギアの状態を落ち着いて見てみると、人間で言う右前腕の手首から少し肘側に向かったところの装甲に付いているノズルから、右手の甲の上を通り前方へガスバーナーの炎のようにビームが断続的に放射されていた。先程大穴を開けたビームもここから発射されたようだ。
フリンはギアを立たせ反撃する。
足元で二機の警備ギアが、フリンの乗るギアに照準を定めている。そこに向かってビームブレードを突き立てるが、これは躱される。しかし、そのうちの一機の逃げた先は格納庫の隅で他に逃げ場がない。これを落ち着いて倒し、次の目標に向かう。
小さくて、すばしっこく動く警備ギアに狙いを定めるのに苦労したが、奴らの攻撃でダメージを喰らうことはない。格納庫内も、そこまで広いスペースではなかったので、時間はかかったがなんとか奴らを全滅させることができた。全部で七機が稼働していた。
「おまえ、名前はなんて言うんだ?」
AIに聞く。
「本機体名はコカヴィエールです」
「それはなんとなくわかってた。おまえの名前は?」
「おまえと言うのはオペレーティングシステムである私のことでしょうか?私自身には名称は設定されていません」
「そうか。こうして会話できるのに名前が無いんじゃ、やりづらいな。そうしたら…。ヴィーってのはどうだ?呼びやすいし、覚えやすくていいだろ?」
「設定完了しました。以降はヴィーの呼称による入力を受付けます」
「…味気ないやつ」
ともあれ、こいつのおかげでなんとか生き延びることができた。緊張が解けるとどっと疲れが押し寄せる。フリンは操縦席の上で手で目を覆い、力なく安堵の笑みを浮かべていた。
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