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Skies fall down  作者: 伊佐谷 希
第4章 海賊フリン!
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第4章7 ブリーフィング

 三日後——。

 フリンたち四人はフォックスハウンドに戻ってきていた。あの夜以後、フリンはユニを妙に意識するようになってしまい、なんだか気不味い心地でいる。それに引き換えユニは、村にいた頃からお姉さん気取りのお節介焼きで何かにつけてフリンの世話を焼きたがったが、あの夜から目に見えて接し方が変わったわけではないが、よそよそしくなったようにフリンには感じられ、その事が一層ユニを意識させ、フリンの心はヤキモキしていた。

 リーとハクの馬鹿二人は結局楽しめたのは初日だけで、羽目を外しすぎて定時連絡を忘れてしまい、ヤオフーから無線でこっ酷く叱られたあとは大人しく偵察業務を続けていた。

 観覧式が近づき賑わいを見せつつあるミズガルズには観光客も多く流入していたため、結局初日に宿を取らなかった事が災いし、二人は残り二日間を、昼は偵察、夜は遅くまで開いている酒場で閉店まで時間を潰し、そこから明るくなるまで路地裏で身を寄せ合って過ごしていた。三日前にフォックスハウンドを出発した時から比べると、二人は相当にやつれ、一気に十歳ぐらい老け込んだような顔をしている。自業自得とはいえ、少しは同情の念が湧いた。


 「さて、いよいよギアの修理も終わったから、これからミッションを開始するよ」


 ハンガーに乗組員を集め、ヤオフーが全員に向かって話す。


 「まずはおさらいをしておこう。中央都市ミズガルズでは、今日から約二週間後に新たに発掘し、起動に成功した大型遺跡の観覧式が執り行われる。どんな遺跡かって情報は出回っていないが、これまでに一度も例のない代物らしい。一部では飛行要塞だなんて噂もある。これまで空を飛ぶ機械の存在なんて誰も実現する訳ないって鼻で笑っていたし、この噂だって誰も頭から信じちゃいない。でも私たちは皆、その噂を笑えない事情を抱えてる。噂が本当なら、また奴らが現れる可能性もある」


 ヤオフーの言葉をハンガーに集まった乗組員全員が真剣な眼差しで聞いている。フリンの脳裏にも村での一件が蘇る。


 「ミズガルズは二週間後の観覧式に向けて傭兵を集めてる。私と兄さん、フリンは傭兵に志願し噂の真相を確かめ、結果を報告する。工作班は街内に待機。もし噂が本当なら遺跡も私たちが戴く。準備して報告を待ってな。そしてリー、ハク、スープー(リーとハクと三人チームでワーカーを操縦し、牢屋に囚われたフリンにスタンガンを浴びせてくれたネズミの名前だ)は艦に待機。奴らが現れたらフォックスハウンドも戦域に介入する。艦の護衛はあんたらに任せたよ」


 「はい!」「了解!」


 皆がそれぞれの役割を確認していく。士気は十分。フリンもヤオフーの言葉に鼓舞される。そして、作戦会議がおわり、皆がそれぞれの持ち場に戻っていく。その時——。


 「フリン、ちょっと待ってろ」


 ヤオフーがフリンを呼び止める。そこには見知った整備班の者も残っていた。胸上まで伸ばした健康的な黒髪を三つ編みにして左肩から前に垂らし、大きめな眼鏡をかけ、その向こうに大きな黒瞳が輝く整備班の女性班長だ。以前、コカヴィエールを修理するためと言ってフリンを呼び出し、ヴィーに驚き、危うく十メートル以上の高さのあるコックピットから落ちそうになった彼女だ。


 「ボウ、頼む」


 ヤオフーに言われ、ボウが口を開く。


 「改めまして、整備班班長のボウです。フリンさんのギアの整備状況についてお伝えします」


 そう言ってボウは持っていたタブレットに目を落とす。そしてフリンに伝えるべき内容を確認し言葉を続ける。


 「フリンさんのギアはほぼ完璧に仕上がっています」


 「ほぼ…?何か不具合の残った場所でもあるのか…?」


 「いえ。ヴィーさんの協力のもと、ヴィーさんから頂いた図面や不具合箇所、整備方法の指示を受け、指摘のあった箇所やその他のメンテナンスは完璧に仕上がっています」


 「————」


 「ですが、それはあくまで図面に載っている範囲での話です。この事は機体の整備を担当した私とボスの二人しか知りませんが、あの機体には図面にない回路が…。ブラックボックスとでも言うべきものが取り付けられています。このブラックボックスについては、ヴィーさんも何も言わず、ヴィーさんが意図的に隠しているのか、システムに登録されておらずヴィーさんすら知らない機構なのか判断がつきません。これまであの機体に乗ってきて、何か気づいたことなどはありますか?」


 「いや…俺には何も…」


 「そうですか…。前にも言いましたが、あの機体は特殊です。何があるかわかりません。あの機体は今後も私が整備を担当します。気づいた事があったら何でも教えてください」


 「は、はぁ」


 「ったく、気のない返事だねぇ。とにかくうちの一番凄腕をあんたにつけてやったんだ。あんたには期待してるんだから、しっかりしてもらわないと困るよ」


 「え?」


 「仮にも元騎士団長の私と兄さんの戦いに介入し、相討ちとはいえあの兄さんを止めたんだ。あんたがうちに残ってくれるってんなら頼りにさせてもらうからね」


 そう言って、いまいち反応の薄いフリンのお尻をヤオフーが引っ叩いた。コカヴィエールにしか搭載されていないヴィーというオペレーションシステム、そのヴィーすらも知らない機体に取り付けられているブラックボックス。口で言われてもフリンには理解が追いつかない。


 「ま、いきなりこんな事聞かされちゃ混乱するのも無理ないか。でも、フリン。機体はお前の命を預けるパートナーだからね。自分の機体としっかり向き合いな。それと…」


 ヤオフーがボウに視線を向ける。ボウがヤオフーの言葉を引き継いで話す。


 「これ、パイロットスーツです。やはり普通の服ではギア同士の戦いで生まれる衝撃に耐えるには限界がありますし、対ショック機能だけでなく、対G機能も備えていますのでコカヴィエールの性能をフルに活かす事ができるようになると思いますよ!」


 そう言ってボウはフリンにスーツを手渡した。スーツは上半身と下半身が一体になったいわゆる『つなぎ』の形状であるが、手袋や靴も一体となり、特に靴の部分はふくらはぎの部分にかなりの厚みがある。ボウの話ではポンプが内蔵されており、スーツがGを感知するとその強さに応じてポンプが作動してスーツを収縮し、Gによって下半身に集まった血液を強制的に循環させ、脳へ酸素を送り込み、パイロットの失神を防いでくれるらしい。対ショック機能の名の通りスーツ外装もしっかりしている。


 「私からはこれをやるよ」


 そう言ってヤオフーはフリンに拳銃を手渡そうとする。フリンが受け取るのを躊躇していると、フリンの手を取って無理やり受け取らせ——。


 「いつもギアがあるとは限らないだろ。自分の身は自分で守らなくちゃいけない。私たちは傭兵になるんだしな」


 『使いたくなければ使わなくてもいい。しかし万が一のためにも持っていろ』そう言葉を付け加えてヤオフーは手を離した。フリンは一度顔の前まで腕を上げ、渡された拳銃のその冷たさを、その重さをしっかりと頭に刻み込んだ。


 「それじゃあ出発しようか」


 ヤオフーがそう告げ、ヤオフー、アクラ、フリンの三人は自身のギアのもとへ向かう。そのヤオフーの元にユニが駆けつけ——。


 「ヤオフーさん、私はどうしたら?」


 「お嬢ちゃんは、ここに残ってな」


 「で、でも…」


 「でもじゃないよ。兄さんと戦った時だって酷い目にあっただろ?」


 「わ、私は平気!フリンのそばにいるって決めたの!」


 「お嬢ちゃん、覚えときな。そばにいるだけが優しさじゃない。フリンのことを想ってるなら、あいつを信じて待つことも大切だ。そばにいなくても、あいつのためにできることはある。そうだよね?」

ご高覧いただきありがとうございました。

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