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Skies fall down  作者: 伊佐谷 希
第4章 海賊フリン!
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第4章2 砂漠の戦い、その後

 「ここが中央都市ミズガルズ…。なんて素敵なの…!」


 ユニの興奮っぷりがひどい。

 ずっと山間の田舎町であるヴィーグリーズを出たことがなかったユニにとって、ヴィーグリーズの何十倍もの面積があり石造りで綺麗に整えられた建物や道路といった街並み。住人や観光客、行商人等で常に人が入り乱れ、世界各地の見たこともない食べ物や調度品などが展示された魅力的な店々と活発に人々の声が飛び交うミズガルズ正門からまっすぐ続く市場通り。その目に飛び込むすべてのものが輝いているのだろう。

 フリンにとっても初めてヴィーグリーズを離れて訪れた大都市なのでユニの興奮は分からなくはないが…。


 「まだ正門をくぐってもないのに…。テンションについていけねぇ…」


 声には出さず、口の中で呟いた。

 そんなフリンの呆れた表情にも気づかず、フリンの十数歩前にいるユニが声をかける。


 「フリンー!何してるの?早くしないと置いてっちゃうよ?迷子になっても知らないんだから!」


 「いやいや、どう考えても迷子になるのはお前だろ…」


 フリンはユニには聞こえない程度の音量で静かに突っ込みを入れる。


 「じゃあ、フリン。嬢ちゃんは任せたぞ。ここからは俺らも別行動だ」


 「え!?ちょっと待てよ!?リー達は俺たちのお目付役じゃないのか!?勝手なことして良いのかよ!?」


 「おまえら今さら逃げたりしないだろ?俺らもたまには羽を伸ばさないとな」


 「ちょっと待てって…」


 そう言うなりリー達は正門を潜ってさっさと行ってしまった。


 「フリンー!私たちも早く行こうよー!」


 ユニの催促にフリンは頭を掻きながら応じる——。


 今、フリンはユニとフォックスハウンドのギアパイロットでネズミと一緒にいた男二人と一緒に中央都市ミズガルズの正門前に立っている。

 ひとりはリーという名で薄紫のストレートの髪の毛を肩まで伸ばし、前髪をヘアバンドで留めている。

 もうひとりはハクという名で、短くした白い髪の毛の毛先を無造作に流し、ゴーグルのような眼鏡をかけている。

 身長は二人ともフリンと同程度だ。

 どちらもチャラチャラとした印象ではあるが、その身体は服を着ていてもわかるほど鍛え抜かれている。

 アクラへの態度からも察するに、おそらく二人とも元騎士か兵士なのだろうとフリンは思っている。


 なぜこの四人でミズガルズにいるかというと話は十日ほど前に遡る。

 フリンとアクラとヤオフーとの激突のあと、スティンガーが暴れて大破した潜砂艦は沈没の危機に瀕していた。動けるものは整備士だろうがギアパイロットだろうが関係なく駆り出され、フリンも戦闘の疲れも癒えぬうちからギアワーカーに乗せられ潜砂艦の修理を手伝わされていた。

 そして半日かけとりあえず外壁に開いた穴を塞ぎ、沈没の危機が去ったところでようやく解放され、フリンにとって長い一日が終わり、その日はほとんどまともな食事も取らないまま布団の中で泥のように眠り込んでいた。


 次の日、村を出てからずっと張り続けていた気が抜けてしまったのかフリンを高熱が襲いそのまま二日間寝込むことになった。

 その間も潜砂艦の修理は進み、フリンが回復した三日目にはいよいよフリン達のギアの修理も始まった。

 修理に取り掛かる際、整備班からの呼び出しを受け、フリンはコカヴィエールのもとにやってくるが、コカヴィエールの機体についてはフリンにもなにも理解の及ばないところだった。

 なので、フリンは整備の者にヴィーと直接話をさせると、その者はコックピットから足を滑らせ、危うく十メートルを超える高さから落ちそうになる程驚いていた。

 その整備の者が言うには、そもそも前の戦闘の際に全身からビームを噴出しているのを見ていた時からかなり高性能な機体だと思っていたが、こんなAIが搭載されている機体も他に見たことがないと言う。

 もちろんスティンガーにもパードレにもヴィーのようなAIは搭載されておらず、普通は、通常のギアの何倍もの出力を持つギアスティグマータをパイロットの力量だけでコントロールしなければならない事から、その操縦には相当の熟練度が必要となるため、アクラとヤオフーの故郷グリトニル王国最高峰の近衛騎士団、その騎士団の中でもトップの二人しか扱えないような代物であった。

 フリンにしても、ヴィーがいなければコカヴィエールをまともに動かせていないことは自覚していたが、古代ギアとはこういうものだと思い込んでいたため、整備班の物言いにはただただ困惑するのみだった。

 とはいえ、これで修理の目処が立ちフリンはお役御免となったところである。


 その後は特にやる事もなく、割り当てられた部屋で時間を潰したり、ユニと艦内の雑用をこなしたりして過ごしているときに、ヤオフーからミズガルズに行ってくるように勧められたのが、ここへやってきたきっかけだった。


 もちろんただ遊んでこいというわけではない。ミズガルズで先日発掘された古代遺跡。近日、その遺跡の観覧式が予定されており、その警備ためにミズガルズでは今傭兵を集めている。もともとフリンはその傭兵に志願し、ミズガルズ内部に潜入するようヤオフーに指示されていた。これはそのための敵情視察も兼ねてギアや潜砂艦の修理が終わるまでの滞在である。


 リーとハクについては、あの戦闘のあと、フリンやユニの顔を見るたびに気さくに話しかけてくれた。アクラに対してもよく話しかけている姿を見かける。二人の態度はよく言えば柔軟。悪く言えば軽いもの(軽いの方がしっくりくる)だったが、始めなかなか砂漠の狐の雰囲気に馴染めずにいたフリンやユニにとっては救いとなり、この二人のお陰で砂漠の狐のメンバーとも打ち解けていくことができた。

 アクラにしても、これまでの事から腫れ物に触るように扱う者もおり組織からは浮いていたが、この二人が気さくに話しかけてくれるおかげで救われる部分も確かにあるように思えた。


 そして、フリンがミズガルズに行くと決まった時に、お目付役として誰がついていくかという話になった時に二人が志願したのである。

 ミズガルズは亜人に差別がなく、住人にも亜人はたくさんいたが、今後スパイとして潜入する事を考慮するとできるだけ目立たないようにするべきとのヤオフーの考えもあり、この二人がそのままついてくることになった。(どうやら二人の目的は別のところにあるようだが…)

 ユニは、フリンがミズガルズに行くと知り、自分も絶対に行くとヤオフーにお願いしに行き、あっさり了解を得て、今に至っている。


 「ちょっと、フリン!リーさん達ももう行っちゃったじゃない!!早くしてよ」


 ユニが急かす。


 「ったく、みんな勝手だな」


 と、フリンはまた声にはせず、口の中で呟いた。しかし、その心は都会の魅力に興奮しながら、中央都市ミズガルズの正門をくぐっていくのだった。

ご高覧いただきありがとうございました。

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