第3章24 和解
「アクラさん、あなたが辛い思いをしてるのはわかるよ。でも、全部一人で背負ってるようなその態度は自惚れてるんじゃないの?」
「……」
「ユ、ユニ…?」
ユニがアクラに暴言とも取れる言葉を言い放つ。それに対しアクラからは何も反応が返ってこないが、フリンにとってはそれが嵐の前の静けではないかと不安で堪らなかった。
ユニが云う。
「みんな必死で戦ってたんでしょ?アクラさんだって、ヤオフーさんだって、ダキニさんも…。
みんな、大切な人たちを守るために必死で戦ったんじゃないの?
確かにダキニさんは亡くなってしまったけど、最後まで国民たちを守るために必死だった。自分の身も顧みないで…。
そうして繋いできた生命でしょう!?
みんながお互いに救いあった生命でしょう?
なのに、なんで生きてるあなたが死んだみたいにしてるのよ!」
ユニが嗚咽を漏らしている。とめどなく溢れてくる涙も気にせずアクラに呼びかける。
フリンはその様子を黙って見つめていた。
「ヤオフーさんは…盗賊行為自体は良くないことだけど、お姉さんの意思を継いで、騎士として王女として、これ以上悲しみを広げないように奴らと戦うことを選んだわ。
アクラさんはどうなの?
なんでまだそのギアに乗っているの!?」
「……」
「何とか言ってよ!」
「うぅ…」
「えっ?」
突然通信に割込み呻き声が聞こえた。全員の意識が傍らに倒れるギアに注がれる。声の主はヤオフーだった。パードレは先程の姿勢のまま動いてはいないが、ヤオフーは意識を取り戻したようだ。
「ヤオフーさん!無事なの!?」
「お嬢ちゃんがあんまり叫ぶからね。ゆっくり寝てもいられないよ。それよりアクラ、あんた随分な事してくれたね。こっちの武装を全部潰してくれて」
ヤオフーのギアスティグマータ・パードレは先の戦いでビームを撃っていた腕を潰されている。また先程は気づかなかったが、もう片方の腕やその特徴的な翼も破壊されているようだった。
「どうしても奴らと戦いたいのか?せっかく助かった生命なのに無駄にするつもりなのか?」
アクラの重い口が開かれる。
「お前たちが俺の力を当てにしてる事はわかってた。だから俺が戦わなければ、復讐だっていずれ諦めると思ってた。あいつが、ダキニが生かしたお前たちを死なせたくなかった」
アクラが続ける。
「しかしお前たちは新たなパイロットを捕らえ、人質を使って従わせようとした。もうあいつが愛したお前たちはいなくなってしまったと思ったよ。
どうしても奴らを討つのをやめないって言うなら、お前らを腕付くでも止めて俺一人でやろうと思ってた。
でも、それも自惚れなんだよな?そうだろ?嬢ちゃん」
「そ、それは…」
アクラの本意を聞きユニは狼狽えてしまう。
「どちらにしろ、ギアがこうなったら俺だけじゃもうどうにもできないがな」
「お前が私たちにした事を忘れる事はできないが、これから手を貸すつもりがあるならギアは修理してやってもいいぞ」
一番損傷が激しく身動き一つ取れないパードレから、ヤオフーがアクラに云った。
その場にいる全員がアクラの返答に注目する。一瞬、ほんの一瞬の間ではあったが、スティンガーを分厚い装甲から溢れ出るアクラの覚悟の強さとも取れる濃厚なオーラは周囲の者たちの身を引き締めさせた。
そして長い長い一瞬が過ぎ——
「ふん。勝手にしろ…」
そう云ってアクラは投降した。
三機はフォックスハウンドに収容され修理を受ける。
気高く意志の強さに溢れた狐の亜人ヤオフー。
気難しく口数が少ないが騎士の誇りを持った鬼のようなアクラ。
フリンは彼らに流される形で砂漠の狐に同行することとなる。
二人の騎士と共に世界の果てに待ち受けるものに辿り付く事はできるのだろうか。
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