第1章3 ギア機動
フリンは隙をみて隠れていた物陰から飛び出し、一直線にギアを目指して走った。
警備ギアが一機、フリンを捕捉する。フリンは走る軌道を変えないまま、ギアの胴と腕の間にスライディングの要領で滑り込む。
響き渡る銃声!
間一髪銃撃を躱すことに成功した。しかしぐずぐずしてはいられない。狭い隙間だ。警備ギアはすぐに入ってはこられないだろうが、この攻撃で他の機体も集まってくるだろう。
幸いにも、すぐに胸部外装にコックピット開閉の為のコントロールパネルを見つけることができた。
「動いてくれ。動いてくれ。動いてくれ。動いてくれ」
焦りと恐怖で指が震える。頭も思うように働かないが、コントロールパネルを必死に操作する。
—ガシャッ!
コックピットが開いた。フリンはすぐさま胸部に登り、頭から落ちるようにコックピット内に滑り込む。直後頭上に響きわたる銃声の数々。
「やはり集まってきている?!」
操縦席につくと正面中央に設置されているモニターに何やら文字が浮かびあがる。
「コカヴィエール…?」
「声紋確認。起動シーケンスを実行してもよろしいですか?」
AIの音声とともに文字が浮かびあがる。
「き、、起動シーケンス実行!!」
—ッ!!??
フリンの後頭部に激痛が走る!
(…なんだよ、これ?)
後頭部を手で探ってみると首と頭の付け根付近に太いケーブルのようなものが接続されていた。頭との接続面はカバーのようなもので覆われていて、どうなっているのかわからない。もう痛みはなかった。
「生態解析完了。パイロット登録開始…終了。起動シーケンス展開。周囲の状況確認。戦闘モードでの起動を提案します。実行しますか?」
「じ…じじじ、じっ実行!!」
(周りの状況がわからない。こんなにもたもたしてて大丈夫なのか?早く動け!!)
球状になっているコックピット内部装甲に明かりが灯り始める。どうやら内部装甲全体が全天周型のモニターになっている様だ…。
周囲が見えたと思うと、格納庫の壁に這わされた数階層に渡る通路の中程から、今まさに警備ギアがこちらに向かって飛びかかってきていた!
ほとんど反射的に攻撃する。
バシュゥゥゥッッ…
轟音と眩いほどの閃光が走り、一瞬、フリンは視界を奪われた。
次にフリンが外部を捉えたときには、警備ギアは影も形もなくなっていて、目の前の射線上には、遺跡を突き破り、エミル山を抉って、外まで続く大穴があいていた。
「本ボタンを兵装使用ボタンに割り当てますか?」
遠くのほうでAIの声が聞こえた気がした。
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