第3章22 迷走する心
「うっ、うぁぁぁあああ!!!」
ヤオフーの悲鳴が響く。
相当な力が込められているのだろう。パードレの外装が指の形に凹んでいくのが、フリンの位置からでもわかる。
「こ、このっ!」
パードレは、そこから逃れるためビームを放とうと腕を前に出すが、それを余っていたアクラのギアの右手で腕ごと潰される。
今度は翼を何度も打ち付けるが、スティンガーは構わずコックピットを掴んだままヤオフーのギアを持ち上げる。
パードレの脚が完全に地を離れる。掴まれている胴体や潰された左腕から、時折火花が散っている。
「目が覚めたか?その程度で復讐だなんて…。何もできず嬲り殺されるだけだ」
「うぅ…。あぅ…」
ヤオフーの声には、もはや力はなかった。機体もすでに抵抗をやめてしまっている。
「ねえ、フリン…」
ユニが心配そうにフリンに声をかける。
昨日、アクラのペンダントらしきものをヤオフーが身につけていたのをフリンは見ている。アクラはそのペンダントには家族の写真が入っていると言っていた。それは、あの二人にとって大切な絆なのだろう。その二人が争うなんて間違ってる…!!
「もう、やめろぉぉおっ!!」
気がついたら、フリンの操るコカヴィエールは二人に向かって飛び出していった。
その勢いのままアクラの駆るスティンガーの左腕に体当たりする。フリンの突然の行動にアクラは反応できずまともに喰らった。そのまま三機とも倒れ込む。
たまらずスティンガーはパードレを離した。ヤオフーが解放される。
すかさずコカヴィエールとスティンガーが体勢を立て直した。しかしヤオフーのパードレだけは反応がない。
…果たして無事なのか。
「なんのつもりだ?」
アクラが問いかける。その声は低く、冷たく、対峙する相手を圧倒する凄みを持っている。しかし、フリンも負けずに答える。
「こんなの間違ってる!おまえたちが争う理由なんてないじゃないか!」
「アクラさん!私たちヤオフーさんから、二人の事について教えてもらったの…。義妹なんでしょ!?もうやめて!」
ユニも堪えられず声を上げる。アクラは何も言わず黙って聞いている。フリンが続ける。
「…俺たちの村も襲われた。俺はこのギアを持ってたのに無力でなにもできなかった。村の人たちからも疎まれて、心が潰れそうになったときにユニがいてくれた。一緒にいてくれるだけで心が救われたんだ!
おまえ、本当は俺なんかいなくても、あの艦から出ようと思えばいつでも出れたんだろ!?
でも、それをしなかったのはヤオフーの事を思ったからじゃないのか!?
なのに、なんでこんな酷いことができるんだよ!?」
「言いたいことは、それだけか?」
アクラが静かに口を開いた。フリンはその響きの放つ鋭い迫力に一瞬気圧されそうになる。
「ヤオフーは、おまえのペンダントを大切に持ってるんだぞ!おまえとの絆を信じてるんじゃないのか!?」
「ふん、まだヤオフーが持ってたか。フリン、そこを退け。俺はペンダントが取り戻せれば、それで良いんだ。邪魔するなら容赦はしない」
「フリン…」
目の前の赤いギアが身を縮め戦闘体勢を取る。ユニが心配そうにフリンの肩に触れる。フリンは一瞬振り返り、ユニと瞳をあわせる。その瞳には不安の色が映っているが…。
「ごめん。俺、やるよ」
「うん」
短い会話を交わすと、フリンも赤いギアに対し、左半身を前に斜に構え、戦闘体勢を取るのだった。
ご高覧いただきありがとうございました。
ブックマーク、評価よろしくお願いします。




