第3章17 脱出の朝
「あいつはただの腰抜けだ」
ヤオフーにアクラのことを尋ねたときのヤオフーの言葉だ。あれは一体どういう意味なんだ?
今日は牢には入れられず、フリンにはユニとは違う個室が用意された。アクラにも確かめたかったが、もうそれは叶わない。
ヤオフーの最後の言葉、フリンはその示すところを考える。
——翌日
与えられた個室にはベッドがあり、フリンは久しぶりにゆっくり休めた気がした。時計は六時を指している。潜砂艦はずっと砂の中にいるため外の様子はわからないが、恐らく朝になった頃だろう。
結局、アクラとは何も話せなかった。
あいつは今日、行動を起こすのだろうか。
ヤオフーがフリンの部屋にやってきた。
「今この艦はミズガルズの西南、距離にして数十キロメートル程離れた位置に停泊してる。これ以上近づいたら怪しまれかねないからね。協力するにしても、しないにしても、ここで降ろしてやるよ。
で、どうするか決まったかい?」
————
「ヤオフーさんたちも、やつらに襲われたの。それにこの艦にはアクラさんって人がいるらしいんだけど…」
————
昨日のユニとの会話を思い出す。
「アクラはどうなるんだ?」
「あいつはもともと私たちの仲間だ。それに私たちには、あいつの力が必要だ。悪いようにはしないよ」
「悪いけど、協力はできない。ユニと一緒にここで降りるよ」
ヤオフーとフリン、そして兵士二人を連れユニを迎えに行く。
「フリン…」
「ユニ、行こう」
二人の間で短い会話が交わされる。ユニはフリンの決定を尊重してくれるようだ。
—次はコカヴィエールか…。
ユニを加えた五人は潜砂艦フォックスハウンドを下へ下へ移動する。
その移動とほぼ同じ頃、フォックスハウンドも唸りを上げ移動を開始した。どうやら浮上しているようだ。
嫌でもアクラとの会話が思い出される。あいつは動くのだろうか?
——と、その時!
ズドンッ!メリメリッ!
フリンたちのいる通路の前方十数メートル程のところにある隔壁の先から艦内に破壊音が響き渡った。それと同時に立っていられないほどの衝撃が五人を襲う。
艦内の通路や至る所に設置された赤色灯が灯り、警報が鳴り響く。
「バラストタンク内で爆発のような痕跡あり!付近の乗員は退避!繰り返す!」
艦内放送が被害を告げる。その場のユニ以外の四人が事情を悟る。
「あいつ、やりやがったな!ここは任せる!私はギアへ!」
そう言って、ヤオフーが走り去る。恐らくアクラを抑えるため、自身のギアに向かったのだろう。
ズドンッ!
今度の轟音は頭上から鳴り響く。牢を破って外に出たのか…?
残った兵士がフリンに言う。
「おまえのギアも、すぐそこのバラストタンク内に保管してある。が、今は危険だ。引き返すぞ」
それに対するフリンの答えは違った。
「いや、俺もギアで出る。そこにあるんだな」
兵士が答える前にフリンは走り出す。
そのフリンに数歩遅れてユニが続く。
「バカ!おまえ、なにやって!」
「離ればなれは嫌!私も連れてって」
またユニの強情っぱりが始まった。しかし、今は説得している時間がない。
—くそっ
フリンは心の中でそう呟き、ユニとコカヴィエールに乗り込むのだった。
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