第3章14 家族の写真
次の日、フリンはスパイの話を進めるため、また女船長ヤオフーの元へ連れて行かれた。
その数時間前にした、牢でのアクラとのやり取りを思い出す。
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「人質がいるんだ。俺だけでは逃げられない」
「それは俺のほうでなんとかしよう。俺も、おまえに探して欲しいものがある」
「なんだ?」
「ペンダントだ。首から下げられるようになってる」
「大切なものなのか?」
「…家族の写真だ」
「わかった。探してみるよ」
————
フリンは昨日と同じ部屋に案内された。
今回は護衛の兵たちは部屋に入らずヤオフーとフリンの二人だけになった。ヤオフーは席についたまま、自分の正面にフリンを立たせる。
「それでミズガルズの件だが…」
そう始まったヤオフーの説明は、前日にアクラから聞いた内容とほぼ同じだった。
説明が終わり、次にミズガルズへ行く段取りなどの説明があるのかとフリンは待っているが、ヤオフーは何やら考え込んでいるように、下を向き押し黙っている。
座り俯いているヤオフーの正面に立っているフリンの位置関係により、フリンからヤオフーの服の開いた胸元が覗けた。思わず、フリンが目を奪われていると、そこには何やら金色に光る物体が見える。
その金色の物体は、楕円形でその表面には植物をモチーフにした装飾が施されている。アクラが探していると言っていたペンダントに似ている。
「何、見てんだ?」
ヤオフーに言われ、フリンはハッとする。
まずい。ペンダントを見ていたのが、バレてしまったか?
警戒されると取り返せなくなる…。ところが。
「そんなに溜まってんのかい?なんなら私が相手してやろうか?」
ヤオフーは襟元を手で広げて、自身の胸元をフリンに見せつける。
「なっ?えっ!?」
「ハハハッ!かわいいねぇ、耳まで真っ赤にしちゃって。あの子とは、そういう関係じゃないのかい?」
「いや、ユニとはそんな…」
「もしかして童貞かい?なんなら本当に相手してやるよ」
ヤオフーはまっすぐフリンを見つめ、ゆっくり瞬きをする。その妖艶な仕草にフリンは息を呑んだ。
「ふふっ、冗談だよ。かわいい坊やだこと」
ひとしきり、フリンをからかうと、冗談はここまでというようにヤオフーは顔を引き締めた。その直後、ヤオフーからはこれまでとは違う空気がながれた。それは、今まで人質を使い、フリンにスパイを強要していたものとも、先の冗談との雰囲気とも違う。どこか哀れみを含んだものだった。
そしてヤオフーは、悲しみを帯びた口調でこうフリンに尋ねるのだった。
「あの子に聞いたけど、あんたらの村、見たことない兵士に襲われたんだって?」
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