第1章2 遺跡探索
「ここは一体どの辺りなんだ?」
フリンはバルムンクの船首から探索を始め、艦橋に入ろうとしたところで瓦礫で隠れていた大穴にはまり戦艦内部に転がり落ちてしまった。
まだ誰の目にも触れてない遺跡だ。どんな危険があるかわからない。表層から少しずつ調査を進めていこうと思っていたところだったが、思いがけず遺跡内部に落下したため、自分の位置さえ見失ってしまっていた。
「いきなりこんなことになるなんて。中には入れたけど、このまま出られないってのは勘弁してくれよ…」
落ちてきた場所は、どうやら居住ブロックのようだ。細い通路にいくつも同じような扉が並んでいる。そのうちのいくつかは扉が歪み中が見られるがベッドやロッカーなどが置かれているなど、どれも同じような作りだ。
フリンは通路にそって歩き出した。途中何度か分かれ道があったが、行き止まりにぶつかることもなく、しばらく進んでいると天井が吹き抜けとなった広いスペースに出た。
「ここは格納庫か?ん?あれってまさかギアじゃないのか!?」
フリンの目の前には、戦争の跡なのか大きく歪んだハンガーがあり、その柱の麓には十五メートル級のギアが横たわっていた。四肢も揃っていて見た目には綺麗な状態で残っている。
期待してなかったわけではないが、本当にギアを見つけられるなんて信じられなかった。喜びに思わず口元が緩む。興奮して叫び出しそうになっていた。
「誰かに見つかる前に、一刻も早くここから脱出して、ギアを運び出さなきゃな」
興奮した気持ちを落ちつかせ、自身のワーカーのコンピュータに位置をマーキングしていると…。
——突然。
ズガンッ!!
フリンの左耳のすぐそばで鈍い音が響き、右側に吹っ飛ばされて崩れ落ちる。何が起きたのかわからない…。
周囲で赤いパトランプがいくつも灯りだす。
あちこちで響きわたる機械音。
「防御システムが生きていたのか!?」
油断していた。侵入者と判断され攻撃されたようだ。
「このまま死んでたまるか」
フリンは格納庫の壁面に巡らされた階段通路の階段と作業車の陰に身を隠した。
急いで機体のチェックをする。ワーカーの左腕が肩の付け根、コックピット付近まで吹き飛んでいた。弾があと少しずれてコックピットに直撃していたら、おそらく即死だっただろう。他にもどこにガタがきてるかわからない。
周囲の様子を探ってみる。どうやらここは無人の警備ギアによって守られているらしい。少なくとも三機は確認できた。
警備ギアは高さ三メートルほどあり、ボディの中央には機銃、足は四脚ありその先にはタイヤがついてた。平地も瓦礫の上も御構い無しに動き回っている。
「とてもじゃないが振り切れそうにないぞ。武器だってないのに、この状況で何ができる?」
フリンはワーカーを自動操縦に切り替えて適当に走らせ、警備ギアが気を取られている隙に別方向に逃げることにした。が、ワーカーは物陰から出た瞬間捕捉され、あっけなく破壊されてしまった。
他に残った手段は…。
「いちかばちか、あのギアに賭けるしかない…!」
フリンは目の前のギアに向かって、決死の思いで駆け出した。
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