第3章13 脱出計画
「俺はあの船長に、ミズガルズが発掘した遺跡を調べるように言われた。ミズガルズには何かあるのか?」
フリンがアクラに尋ねる。アクラは寝そべるのをやめ、胡座をかいてフリンの方をまっすぐ見据える。
「ミズガルズは巨大な都市遺跡を発掘したんだ」
アクラがそう答えた。
「そこに何かあるのか?」
「いや、その都市遺跡そのものが特別なんだ。昔、その遺跡は丸ごと空に浮かんでいたらしい。ミズガルズはそれを修復し、今度飛行試験をするらしいんだ。傭兵を集めてるのも、その試験の護衛のためだ」
「な…。そんなものがあれば、どこだって欲しがるな。それで調べろってことか?」
「…どうだかな」
最後のアクラの物言いには違和感があった。他にも何かを知っているような。しかしフリンは、前段のあまりの内容に驚愕し、その様子に気づかない。
フリンは、アクラの話を一通り飲み込み、自分なりに整理をつけた。まだ女船長から詳細は聞いていなかったが、それがどういう内容なのかを得心した。
そして、改めてアクラにこう聞いた。
「ミズガルズの件はわかった。それで、おまえの脱出計画はどんな話なんだ?」
アクラは、やれやれっといった風に肩を竦め、そして答える。
「別に計画って程じゃねえんだ。まず、俺たちのギアの位置だが、…お前はわからないんだったな。俺のギアと同じ場所にある前提で話すぞ。
俺たちのギアの位置は、今いるこの牢の真下6〜7メートル程度のところに反応がある。一階層程度跨いだところだな。だが、何度か動かそうとしてみたが、何かに押さえつけられてびくともしない。俺のギアのパワーなら大抵のものには負けないはずなんだがな。
だが、つい最近ギアを動かせた時があった。いつだかわかるか?」
アクラの不意の問いかけに、フリンは答えを持たない。口をつぐみ首を横に振る。
「お前がこの牢に入れられる少し前だ。正確にはこの艦が浮上していた間、になるか。その時、あの女はご丁寧にも俺の目の前に現れて、俺が妙な気を起こさないよう、ずっと鼻先を抑えてやがった。
だが、それで逆に確信したことでもある。
俺たちのギアは、おそらくこの艦のバラストタンク内に保管されている」
「バラストタンク…?」
フリンは、聞きなれない単語に疑問符を打った。アクラが簡単に説明してくれる。
「バラストタンクってのは、浮力を調整するための水槽だ。潜砂中は、その水槽に砂を満たすことによって艦重量の重くして砂に潜りやすくする。逆に浮上したいときは、水槽から砂を抜いて艦重量を軽くするってわけだ」
「つまり、今、お前がギアを動かせないのは、砂で満たされているバラストタンク内にギアが埋まって、砂の圧力に押さえ込まれてるからということか」
「物わかりがいいな。だから最初は協力して艦を浮上させ、ギアを起動しなきゃならないと思っていた。しかし、お前がスパイとして、この艦を出るタイミングがあるなら、それにあわせて事を進められるかもな。ギアも持って出るんだろ?」
「ああ、ミズガルズが求めているのは、ギアに乗る傭兵だからな」
「しかし、ワーカーにすら負けるようなやつに傭兵としての価値があるのか?」
最後の発言はアクラの冗談だと分かった。顔が笑いを堪えるのに必死そうだ。
「う、う、う、うるさいな!!まだ慣れてないだけだ!」
「ハッハッハッ!」
フリンの必死の言い訳に、アクラが悪びれなく豪快に笑う。フリンはバツの悪い顔で話を続ける。
——お前ら、うるさいぞっ!
通路の奥から怒声が響き、その日の俺たちの話合いは終了した。
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