第3章11 ジャガイモのスープ
「協力…?」
「ミズガルズが、今傭兵を集めてるってのは知ってるかい?」
「それは聞いたことがある」
フリンはもともとその噂を頼りに中央都市ミズガルズへ向かっていた。
「あんたに傭兵としてミズガルズに潜入して、スパイしてきて欲しいんだよ。ギアも必要になるから、そのときにちゃんと返すよ。断ったら、あの女がどうなるかわかるよね?」
「スパイ…?なんでそんなこと」
「協力してくれるなら、もう少し詳しく話すさ。さあ、どうするんだい?」
「さっきの映像は?ユニは本当に無事なのか!?」
「…お前次第だね」
「ユニに会わせてくれっ!」
「できないね。さっさとどうするか決めなっ!」
それからヤオフーは、何も答えなくなり、この場で答えを出さない限り、ここを解放されることも、新しい情報を得ることもできなそうだった。
牢でのアクラとの会話と今のヤオフーの話、一体どちらの話のほうが信憑性があるのか…。
アクラからは肝心の脱出方法は聞けなかった。しかし、同じ捕まった者同士、途中までとはいえ脱出の話まで聞いていたのに、一緒に逃げないのは裏切ったようで後ろめたい気持ちもある。
それでも、ユニを人質にとられていては、フリンに選択の余地は無かった。
「わかった。協力するよ。話を聞かせてくれ」
————
「随分かかったな」
それからしばらく経って、フリンはアクラのいる牢に戻された。帰りの経路は行きとは異なっていた。やはり内部構造を覚えさせないためだろう。
「どうした?何かあったのか?」
牢に戻ってから、アクラの顔も見られず俯いているフリンに、アクラがそう尋ねた。
「いや、別に何も…」
「ふん。さっきの話の続きをしようと思ったが、今はやめておくか」
アクラはそう言うとフリンに背を向け、壁と向かい合う形で寝そべってしまった。フリンの煮え切らない態度に呆れているのか、それともボスに何を吹き込まれたかと警戒しているのか。恐らくその両方であろう。フリンもそれに対して何も言えなかった。
しばらくの間、二人の間には沈黙が続いた。牢には時計もなく窓もない。
(窓があっても、ずっと砂の中で何も見えないだろうが)
フリンとユニは昼前に出発し、砂漠へと踏み込んだが、あれからどれだけの時間が経ったのだろうか。
その時、二人の間の沈黙を破るものがあった。
「飯だぞ」
それはジャガイモと何かの葉っぱだけの簡素なスープだった。格子の一部に設けられた受け渡し用の小窓から牢の中に入れられる。
フリンは緊張続きで気づかなかったが、今更ながら空腹を感じた。飯が出たということは、外は夜になったのだろうか。
二人は食事が終わると、受け渡し用の小窓に食器を戻した。しばらくして番人が様子を見にきた時に食器を持っていく。
食器が片づけられ、また重い沈黙が舞い降りかける。
「アクラは、なんで捕まったんだ?」
フリンは、その気まずい空気を押しのけ、そう尋ねるのだった。
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