第3章10 女船長ヤオフー
目の前の扉が開き四人は中に入る。
フリンの後ろにいた二人は銃を携えたまま扉の両脇に待機し、ネズミは奥の机の椅子に座る人物に近づいていく。椅子は向こうを向いており、フリンからは後頭部しか見えない。
その人物がネズミの何言かかわし席を立ってフリンの前に姿を現した。
「女…?——っぐぅ…」
フリンはその人物を見て、思わず女と呟いた。
ずっと船長は男と思い込んでいたので、予想と違う結果に思わず口をついた言葉だった。しかし、その女船長はその言葉に憤慨し、フリンの腹を蹴り上げた。呼吸がとまり、身体がくの字に崩れ落ちる。
「盗賊団のボスが女じゃ問題あるのか?」
ボスは切れ長の目を細め、ナイフのような鋭い殺気を込めて、フリンを睨みつけた。
フリンはその顔を床に跪いた姿勢のまま見上げた。そしてあることに気づく。その頭には犬…いや狐のような三角形のピンとした耳がついている。髪の毛などは人間と同じような生え方をしており体毛は少ない。そして腰の後ろには太く毛に覆われた尻尾が見える。狐型の亜人だった。
「なんだ?まだ私の顔がおかしいか?」
この世界に亜人は、フリンたち人間と同じようにたくさん溢れている。亜人たちの国もあれば中央都市ミズガルズなどの都会であれば、当然のように両人種が互いに交流し暮らしている。
しかしフリンたちの暮らしていたヴィーグリーズ村には亜人はおらず、村から出たことのないフリンにとっては亜人たちに出会うことは新鮮な驚きだった。
それがこの場で出会う人たちに必要のないストレスを与え、憤慨したその者たちの怒りをフリンのその身に刻まれる。気をつけなければ、とフリンは思った。
フリンのようやく呼吸がようやく落ち着いてきたところで、ボスが話し始める。
「私は、ヤオフー。砂漠の狐の団長だ」
そこで一度言葉を区切ると、机に戻り、机の上に腰を下ろした。
「あの女なら無事だよ。何もしちゃあいない。今も別の部屋でゆっくり休んでるさ。姿を見たいかい?」
そう言うとヤオフーは、机上のモニターをフリンの方に向けた。そこには、どこかの部屋で隅の壁に背をつけ膝を抱えるユニの姿が映し出されていた。
「ユニ!?」
フリンは思わずモニターに駆けつきそうになったところをネズミに足を蹴られて転ばされる。その背中に扉の脇に待機していた男の一人が銃を突きつける。ヤオフーはその様子を見て、ニヤリと一笑したあとフリンにこう告げるのだった。
「私たちに協力するなら、二人とも見逃してやるよ」
ご高覧いただきありがとうございました。
ブックマーク、評価よろしくお願いします。




