第3章8 聖痕
「ここを脱出するぞ」
周囲を警戒しつつ、アクラが声を潜めて言った。さらにアクラの話は続く。
「やつらは、西のアストラン地方と南のナーストレンド地方に跨る砂漠カルガ・オアシスを活動拠点としている。
俺もそうだが、やつらのボスも聖痕持ちだ」
そう言いながら、何かを思い出しているように、アクラは遠くの風景を見るように目を細める。
フリンはその様子を黙って見ている。アクラが話を続ける。
「おまえは知らないようだから教えてやる。スティグマータってのは、特別なギアのことだ。このギアは通常のギアに比べて、パワーも耐久力も格段に高い。他とはまるで別次元の機体だ。
おまえのギアも起動の時、おまえとケーブルで繋がれるよな?最初に乗った時に、パイロットの情報が登録されたはずだ。そうやってスティグマータはパイロットを選び、そいつ以外では操縦できなくなる。
聖痕っていうのは、ケーブルの接続箇所を中心に現れるスティグマータのパイロット特有のアザだ。これを持ったパイロットを俗に聖痕持ちと呼んでいる。
聖痕持ちは聖痕を通じて、自分のギアの位置がわかったり、ある程度遠隔操作ができるもんだが…」
アクラがフリンの様子を伺う。フリンのピンときていない表情を見て、溜息をつき、話を続ける。
「聖痕の力はそれだけじゃない。パイロットの身体機能も強化されて、運動能力や自己治癒力も強くなる」
「あっ」
「ふん。こっちは思い当たることがあったか?」
確かにフリンには思い当たることがあった。エミル山で撃たれた右足が翌日には治っていた。
「やつら、俺たちをこうして生かしているだろう。何故だかわかるか?」
「……」
フリンはその答えを持たない。
「これが並のギアなら、奪った時点で必要のないパイロットは殺すなり、砂漠に置き去りにするさ。
だがスティグマータはそうはいかない。一度パイロット登録されると、そいつが死ぬか自分の意思で登録解除しない限り、他のやつには操縦できない。なおさらパイロットは邪魔な存在だ。
だが、さっきも言ったがスティグマータは遠隔操作できる。パイロットの生命の危機に自動操縦された例も確認されている。
パイロットを殺そうとしたり、置き去りにして、スティグマータに暴れられたら困るだろ?だから、俺たちは生かされてるのさ」
フリンはアクラの話で、これまで不思議に思っていたいくつかの謎が解けた。エミル山で兵士に襲われた時、コカヴィエールが勝手に動いたこと、撃たれた傷がすぐに治ったことは聖痕の影響だったんだ。もしかしたら村長が言っていたビームの翅も…。
「でも、やつらは一般的なギアが欲しいんじゃないのか?だとしたら、なんでわざわざ俺たちを捕まえてるんだ?」
「ふんっ。何か考えがあるんだろ」
アクラが急に不機嫌そうにする。フリンにはその理由がわからない。その様子を不審に思いながらも。
「それで?何か策があるのか?」
そう言って、フリンはアクラに話の先を促すのであった。
ご高覧いただきありがとうございました。
ブックマーク、評価よろしくお願いします。




