第1章1 俺の名前はフリン
「うわっ!やばいっ!!」
暗闇に金属の落下音がこだました。不意の出来事に受け身も取れず無様に崩れ落ちる。
「痛っ…。なんとか生きてるな。大きな怪我もなさそうだ。しかし随分落ちてきたな。上までざっと二十メートルはあるぞ…」
俺の名前はフリン。二十一歳独身だ。西のアストラン地方にある人口百人程度の小村ヴィーグリーズで家業を手伝いながら、その日暮らし気ままに過ごしている。今日は偶然見つけた遺跡に調査に来ていたところだ。
アストランに関わらず、この世界の各地にはこのような遺跡が存在している。これらの遺跡は、「大昔、他所の星から宇宙人が移住し高度な文明を築いて繁栄していったが、大戦争が起きて世界は滅亡し文明も潰えてしまった」というどこの世界にもよくあるような神話の遺物として語られている。
そんな文明や戦争が本当にあったのかは知らないが、実際世界中に戦艦や戦車、人型の巨大兵器のようなものや機動要塞、都市遺跡が残っている。その遺跡から発掘される高度な機械や文献に残された科学技術の多くのものは未だに再現できないものがほとんどだ。
現在の世界はこのような遺跡を発掘して研究し発展してきたが、まだまだその一部の技術しか解明できていない。
軍隊は未だに発掘した機体をそのまま実戦配備しているし、国家もどれだけプラント設備を発掘できたかによって、その生活水準は大きく異なっている。どこの国も遺跡の取り合いで大忙しだ。
フリンが今日調査に来ているのは、巨大な戦艦の遺跡だ。
この遺跡は、ヴィーグリーズの北に位置するエミル山が、先日崖崩れを起こした結果、顔を現した遺跡だった。
「エミル山は自然にできた山じゃない」なんて噂があったが皆本気で信じてはいなかった。
実際フリンもそんな噂があること自体覚えてなかったから、見つけた時には夢でも見てるのかと思ったくらいだった。この遺跡は、まだフリンしか見つけていないだろう。
まだ誰にも発見されてない遺跡だ。
戦艦だから様々な武器や医療機器、過去の文献などが見つかれば政府に売りつけても良いだろう。
十五メートル級の人型兵器でも見つけようものなら、傭兵としてどこの国でも高給で雇ってもらうことができる。うまくすれば一攫千金の大チャンスだ。
その戦艦は船首から艦橋部分が船首を頂上として斜めに地上に露出し、戦艦の大部分が地底に埋まっている。フリンは船首部分からギア・ワーカーと呼ばれる二本腕二足歩行の乗用人型作業機械に乗って探索を開始した。
ワーカーも元はと言えば遺跡から発掘されたギアを元にして研究開発されたものである。
小型量産化できたことは大変な成果であるが、こと戦争になれば、ワーカーの小隊などギア一機で壊滅的な被害を受けてしまう。
あくまで人間の補助的な役割を担える代物だ。
ワーカーの姿としては、高さが百五十センチメートル程度で、人の頭にあたる部分に透明で半球状の外装に覆われた操縦席が付いたものが一般的だ。
用途によって様々な装備が施されるが、フリンのワーカーには調査発掘用にレンチやドライバー、ノコギリやバーナーなどが仕込まれている。少しずつ調査の幅を広げながら必要な装備を選んでいこうと思っていたんだが…。
瓦礫に隠れていた大穴に落っこちて、その穴は今は遥か頭上にある。
残念ながらあそこまで登る手段がない…。
「どこか別の出口を探さなきゃな」
フリンは落ちてきた場所に登ることを諦め、別の出口を探すことにした。
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