第3章3 ウサギのスープ
フリンは森で食べられそうな植物や木の実を集めて、ユニの待つ森と砂漠の境にある水場へと戻ってきた。今日はここでキャンプだ。
「ただいまー。見ろよ、ユニ!ウサギまでとれたぜ!今日はご馳走だな!」
そう言うフリンの手には様々な木の実などの植物、そして野生を体現している身の引き締まったウサギが一羽が両手一杯に溢れていた。
「凄い!よくこんだけ集められたね!じゃー料理するから、今度はフリンが休んでてね」
ユニはフリンから食材を受け取ると持ってきた包丁で手際良くウサギを捌き、フリンが森に入っている間に起こしておいた火にかけ、そのほかの食材も食べやすいサイズに切り分けていく。
フリンもユニも子供の頃からエミル山の森を遊び場としていたので、二人ともその作業は慣れたものだった。
ユニは下ごしらえの終わったこれらの食材を鍋に入れ水と持ってきていたいくつかの調味料をあわせてスープを完成させた。フリンを呼ぶ。
「フリーン!ご飯できたよ!」
「今行くー」
戻ってきたフリンの髪の毛が濡れている。おそらく食材集めでかいた汗を流すため水浴びでもしていたのだろう。
「おお!やっぱりユニは凄いな。すげえうまそうだ」
「はいはい」
「いやいや本当だって。さっき水浴びしてて思い出したんだけど、今日朝から何にも食べてないんだよ。早く食おうぜ」
ユニはお椀にスープを注ぎ、フリンに手渡した。自分の分も取り分け、いただきますをする。
「うめー!あの食材で良く作れるな!正直俺一人じゃ、折角とったウサギだって丸焼きで台無しにしてたところだよ」
フリンが手放しで感嘆の声を上げる。
「ありがとう。いっぱいあるから遠慮なく食べてね」
「はい、おかわり」
「はやっ!って、もっと味わって食べなさい!」
フリンは最初にユニから渡されたスープをほんの数十秒で食べ尽くしていた。そんなフリンをユニは嗜めたが、その顔は嬉しそうな笑顔で満ちていた。
「こういうの、久しぶりだね」
スープを食べ終わり、片付けもあらかた終了して、二人で火を囲んでいた頃、ユニがそう言って話し始めた。
「子どもの頃は二人でよくエミル山に入ってこういうのやってたじゃない?なんだか懐かしいなって思って」
フリンは答える。
「そういえばそうだな。最近じゃ、家の手伝いとかで忙しくなって、すっかり忘れてたよ」
「フリンは何でもかんでも食べちゃうから、しょっちゅうお腹壊してたよね」
「うるさいなー。その過去があったから、今だって食糧集めてこれたんだろ。もっと感謝しろよ」
「はいはい。そういえば、さくらんぼ事件なんてのもあったよね。フリンが珍しく食べられるもの見つけてきて、なにかと思ったらさくらんぼがいっぱい生えててね。野生のものだと思ってとっちゃってたら、実はマキさんの畑だったんだよね」
「ああ、俺ら山にあるのは全部自然のものだと思ってたけど、そうじゃなかったんだよなー。マキさんには売り物を台無しにしてって凄い怒られて、収穫を手伝わされたっけ」
「本当、フリンに付き合わされて、私まで大変な思いさせられて…」
「いや、ユニのほうがたくさん食べてたからな。俺は正直お前の食いっぷりに引いてたぞ」
「そんなわけないでしょ!まあ、さくらんぼ大好きだったから、多少食べたかもしれないけど…」
フリンとユニの二人は、その後も昔話を続けた。村であった悲劇を思い出さないように、これからどうするのか、その不安を掻き消すように、たくさん、たくさんの思い出話で盛り上がった。そうして二人の旅立って最初の夜が更けていった。
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