第3章2 フリンの身体
ヴィーグリーズ村を出発して一日目。
フリンとユニは、村東の森を抜け、森と砂漠の境にあった水場で野宿をする事にした。
森の木々に阻まれ、予定していた地点まではたどり着けなかったが、砂漠では一気にスピードだして進めると予想できたので、少しぐらい遅れは明日以降で取り戻せそうだった。そもそも二人には時間的な制約もないので、中央都市ミズガルズへの到着に何日かかっても問題はない。
森で調達してくれば食糧や水の消費も抑えられる。
当初の予定通り行けば砂漠で一夜を過ごす事になっていたので、結果的にはここで野宿をすることになって良かったのかもしれないとフリンは思っていた。
コックピットから降りると、ユニはフリンの首筋を確認してみた。
フリンの操縦中、ずっと後ろからケーブルの刺さっている姿を見ていて、本当に大丈夫なのか、ケーブルが刺さっていたところがどうなっているのか心配だった。
「え…?何これ?」
「俺の首、何かおかしいか?」
ユニの反応を見て、フリンは自分の首がどうかなっているのか心配になる。昨日の昼過ぎ、自宅に帰ってきた時から気にはなっていたが、その後の村への襲撃などですっかり忘れてしまっていた。
フリンの返事を受けて、ユニがフリンの首の状態を答える。
「刺青じゃないよね…?何か変な形にアザみたいになってるけど…」
フリンの首筋、ケーブルとの接続箇所には、コカヴィエールと同じような緑味がかった黒に近い濃いグレーで、菩提樹の花のような五つの花弁とその周りを覆う翼状の包葉に似た形のアザが、刺青のように綺麗な模様として浮かび上がっていた。それは単なるケーブルの刺さった傷跡ではなく、明らかな意図を持って浮かび上がった紋様であった。
フリンはこれまで自分の首の後ろを確かめてこなかったのでその事実に気づく事がなかった。言われて、ユニから鏡を借り、コカヴィエールの装甲の反射も使ってあわせ鏡にしてその状態を確かめた。
「なっ…?なんだこれ?」
フリンは驚き、自分の後頭部をあわせ鏡の角度を変えて何度も確かめる。そこにユニが尋ねる。
「前からこんなのあったっけ?」
「いや、そんなはずない。」
——コカヴィエールに乗ったからか…?
フリンは、首に限らず、全身のどこへも刺青を入れたことなんてなかった。
「さっき、このギアに乗ったとき、ケーブルが刺さってたよね?そのせいなのかな…?」
ユニもフリンと同じことを考えていたようだ。
「そうなのかもしれない…。このギアの事は俺にも全然わからないんだ…」
「身体におかしなところはないの?」
「おかしなところ…?」
ユニから聞かれてフリンは考える。
おかしなところはある。首もそうだが、昨日、銃で撃たれた右足の傷もいつのまにか消えてしまっている。
痛みも昨日の戦闘中には気にならなくなっていたような気がしていた。脳内麻薬だというアドレナリンにどれほどの麻酔効果があるのか知らないが、操縦席の一端を真っ赤に染めていたあの傷の痛みを消したり、ましてや一日足らずであの傷を治してしまったのであれば、身体はおかしいと言わざるを得ないだろう。
しかし、うまく言葉にする事はできないし、それ以外にはおかしな部分には自覚がない。
それよりもこれ以上ユニに心配をかけたくない気持ちが強かったフリンは、ユニに刺青がある事以外はおかしな事は思いつかないと答えていた。
「少し森に入って食べれそうなもの探してくるよ。疲れてるだろうから、ユニはここで待ってて」
フリンは誤魔化すようにユニにそう告げ、足早に森に食糧を探しに行った。
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