第2章8 覚醒
————
「ったく…。軍曹。クーパーには困ったものですね」
「まったくだな。まあいい。あいつにはもう好きにやらせとけ。俺たちはいつでもカバーに入れるようにフォーメーションを維持しておくぞ」
————
「くそっ!なかなかチャンスがこないな」
フリンは右の小口径のビームを連射しているが、一向に敵のギアを仕留められない。しかし相手もこの奇声を上げている一機以外は上空に待機している。こいつが戦闘役ということだろうか。付かず離れずの距離で撃ち合っているがお互いに決め手にかけ牽制が続いている。もう少しもう少しなんだが…。
そのうちフリンの放ったビームが敵機の腹をかすめた。機体がバランスを崩し更に上空に待機しているギアと重なる。
「ここだぁっっ!!」
フリンは重なった二機に対してチャージしておいた左の大口径のビームを放った。
手前の被弾していたギアは、なんとかビームを交わしたが、大口径のビームが生んだ上昇気流に巻き込まれ更に態勢を崩し戦闘区域を離れ落下していく。その上空に待機していたギアは、不意をつかれ、ビームを交わしきれず、まともに被弾した。空中で爆発する。四機の陣形が大きく乱れ隙が生まれた。
「ヴィー!逃げるぞ!」
フリンはこの隙に木々の影に身を隠しながら、ブーストダッシュにより一気にこの場から離脱した。
「余計な時間を食った。急いで村に戻るぞ!」
村に着き、まっすぐ広場に向かう。モニターに望遠で広場の様子が映し出される。そこには十人の変わり果てた姿が映し出されていた。
「間に合わなかった…?そんな…」
コカヴィエールへ向かう道中。先程の戦闘。やはり時間をかけすぎてしまっていた。
「ユニ…。ユニは無事か…」
モニターには広場周辺の状況が映し出されている。そこに良く知る幼馴染みの姿が映しだされる。兵士たちに追われていた。
「ユニ!?どうして外にいるんだ!?いや、それよりも。おまえらぁぁぁあああ!!」
フリンはビームブレードを展開し、人間相手に飛びかかっていた。優しかった村のみんなの命を踏みにじられた怒りに、間に合わなかった悔しさ、自分の不甲斐なさに、ユニを失う恐怖に我を失っていた。
そこには燃える木々や家々があった。
先程までは動いていた兵士たちは、燃え尽き朽ち果てた人形のようにあたりに横たわっている。
周囲ではなおも人々の悲鳴や銃声が飛び交っていた。
フリンの目の前にはユニがいた。良かった。生きている…。
しかし、ユニは口に手を当て、恐怖に慄いた震えた瞳をフリンから、いや、コカヴィエールから一目もそらさない。更にその身体はゆっくりあとずさっていく。
(…俺は一体何をしたんだ?
わからない。わかりたくない。生身の人間をこの手にかけたのか?ユニの目の前で?それだけじゃない。
先の戦闘で撃墜したギアにも人は乗っていた筈だ。その人も死んだのか?俺がやった?
頭が、体が動かない。考えられない。考えたくない。)
フリンは目の前にいるユニを凝視していた。モニター越しに目が合っている。しかしユニからはフリンの姿が見えていない。助けられた自覚もなく、目の前で生身の人間を無残に燃やし尽くしたこのギアに怯えている。
腰を抜かし、身体を引き摺りあとずさっていたユニに力が戻る。ゆっくり立ち上がろうとしている。
「アラート!アラート!」
ヴィーが叫んだ。咄嗟にユニの身体をギアの腕で庇う。敵のギアから放たれた銃弾がユニごとコカヴィエールを襲う。その銃弾の巻き起こす衝撃でユニの身体が宙に舞う。直撃はしていない。しかし、戦車の砲撃に匹敵するギアの放つ銃弾だ。至近距離で受けて無事ではすまないであろう。
「ヒヒヒ。俺にこれだけのことをしておいて、逃すわけがないだろうが!」
上空を三機のギアが飛んでいる。そのうちの一機は左腕左足を失っている。左右のスラスターからの出力が合わないため、空中をふらつきながらなんとか飛んでいるといった感じであった。この状態で発砲したのだからパイロットの腕は相当いいのであろう。しかし、そんなことは今はどうでもよかった。
「ユニ…?ユニ…?死ぬな…。死なないで…」
ギアの腕にユニを抱き抱える。ユニは目を閉じ横たわっている。コックピットからは生死が判断できない。
——フリンの心の奥深くで張り詰めた糸が切れるような音が聞こえた。
「う、うわああぁぁぁあああ!!!」
ボロボロと涙を流し大声で叫んでいた。
それに呼応するようにコカヴィエールに変化が現れる。背面スラスターから大出力のビームが放出される。そのビームは大きな翅のように広がり触れた家々や木々、村をも飲み込みながら上空の三機を包みこみ消滅させた。程なくして翅は消える。フリンは力尽き、コックピット内で意識を失った。
ご高覧いただきありがとうございました。
ブックマーク、評価よろしくお願いします。




