第2章7 エミル山の攻防
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「軍曹、破壊命令が出てるんでしょ?どうせ、やつらなんの価値もないグランじゃないですか。さっさとコックピットでも撃ち抜いて終わりにしましょうよ」
「間違えるなよ、クーパー。破壊命令ではない。あくまで第一目標は鹵獲だ。それに貴様は暴れたいだけだろうが」
「おっと。それは誤解ですよ。勘弁してください」
「(ったく、この戦闘狂が…。)全機、俺が指示するまで待機だ」
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「標的からの通信です」
AIが告げる。
「回線繋げ」
軍曹が応じる。
「さあ、どうする?」
「俺の答えは、これだぁぁぁああ!!」
バシュゥゥゥッッ
コカヴィエールからビームが放たれる。しかし、そのビームは虚しく空に消えていく。
続けざまに二発、三発とコカヴィエールからビームが射出される。
「全機散開!」
ダイヤモンド状にフォーメーションを組んでいた四機小隊が隊列を崩しビームを回避する。
コカヴィエールのビームはただの一機も捉えることなく空を切り裂いていった。散開し、敵同士の距離が離れたため、狙う相手に迷い、わずかに射撃が遅れる。
「撃ってきた!軍曹!やっていいでしょ!?」
「(くそ!クーパーのやつ…。)しかたない、応戦するぞ!」
「そうこなくっちゃ!ハッハーッッ!!」
上空から一機が一直線に向かってくる。オープン回線で聞こえてくる雄叫びが耳につく。
「このっ!」
フリンは向かってきた機体に向けてビームを発射するが、バレルロールの要領で同心円状に回転する機体を捉えることができない。進路を変えないまま回避され、距離を縮められる。
「遅いんだよ!地べたを這ってるお前らグランが、空の俺たちに勝てると思うなぁ!!」
ガガガガッッッ!!
撃たれた!!
かろうじてビームを撃ってはいるが、フリンは今日初めてギアに乗った身だ。兵士としての訓練を受けたこともないし、ましてやこれまで命のやり取りとも無縁のところで生活していた。戦闘の恐怖や焦りから、まともに機体を操作することもできない。固定砲台のように、足を止めて撃ち続けるのみだ。一歩も動けないまま銃弾に晒される。しかし。
「なんだぁ?ありゃあ?」
コカヴィエールの周囲を覆うように白く丸い靄がかかっている。銃弾はすべてこの靄に触れ蒸発し、コカヴィエールには届かなかった。
「どうやらビームシールドのようだ。それも機体の全周囲を覆うほどのな。他にも何か飛び出してくるかもしれない。クーパー、警戒を怠るなよ」
「了解です。軍曹」
(いちいちうるせぇんだよ。)
通信を切ったあとで愚痴がこぼれる。
「どうみたって素人じゃねぇか。あんなにびびっちまって。何もできやしねぇよ。」
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「ヴィー、な、何がどうなったんだ?」
「背面スラスターからビーム粒子を機体周囲に放出しシールドを展開しました」
「そ、そんなこともできたのか…。っていうか、そんなのがあるならさっさと教えてくれよ!」
「パニックになり私の声も届いていないようでしたので、私の独断でシールドを展開しました」
「あ、ああ。そっか。でもこれで敵の攻撃を気にせず反撃できるな?」
「いいえ、そうもいきません。現在、シールドは機体の全周囲を覆っているためこちらの攻撃も遮断してしまいます。攻撃時にはシールドを解除しなければなりません。また、背面スラスターからシールドを展開しているため、ブーストの使用も制限されています」
村が襲われてる。時間がないんだ。奴らを撒くにはどうすればいい?どうすれば…。
「ヴィー。左腕ビーム砲をスタンバイだ。エミル山を抉った大口径のやつな。チャンスがくるまでは右の小口径のビームを使う。シールド展開のタイミングは任せたぞ」
「了解しました」
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