第2章6 会敵
——なぜコカヴィエールがひとりでに動いている?
頭の片隅でそんな疑問が生まれるが、今はそれを考えている余裕はない。
フリンはコクピットに向かって渾身の力を振り絞って飛び移った。全身全霊の力を込められた右足が悲鳴をあげる。脳を突き刺す痛みに顔を歪めながら、今は痛みを忘れろと、必死に自分に言い聞かす。
フリンを収容し、コックピットが閉じる。
「うっっ!!??」
後頭部に衝撃が走った。フリンとコカヴィエールがケーブルで接続される。
モニターが外部の様子を映し始める。兵士たちがなおも銃を撃ち続けている。しかし、警備ギアの機銃でさえも傷つけることができないコカヴィエールの装甲には、そんなもの豆鉄砲でしかない。
フリンは兵士たちを無視しブーストをチャージする。村まで一気にジャンプするつもりだ。
その時、ふと思いだす。
(先程の騒ぎはなんだったんだ?)
フリンが兵士に捕まりかけ、もうだめだと思った時、ほかの誰かが兵士に見つかり銃が撃たれていた。
銃声がした方向に目を向ける。ヴィーがフリンの考えを察したかのように、モニター上にズーム画像を表示する。そこに見えたものは…。
木々の作る緑や茶色の自然の色のなかで地面に広がるそれは非常に異質な色をしていた。不自然な色に輝くその水溜りの中央には人の形をしたものが見える。
チャージが完了しコカヴィエールが飛び立つ。
「あれは…、まさか母さん…?」
(父さんに続いて母さんまでも…?)
しかし、姿が見えたのは一瞬のことだ。ただの見間違いだ。気のせいだ。他人のそら似だ。フリンは自分にそう言い聞かせる。
(母さんは大丈夫。ユニの両親が、村の人たちが守ってくれているはずだ。俺は俺の役目を果たす。ユニを必ず連れて帰るって、ユニの父親と約束したじゃないか…)
「アラート!アラート!衝撃に備えてください!」
ヴィーが突然騒ぎだす。次の瞬間、機体が大きく揺れ、当初のジャンプの軌道を大きく変えてコカヴィエールが森の中に墜落する。
その衝撃で軽い脳震盪が引き起こされた。混濁する意識の中でヴィーの声がフリンを正気に引き戻す。
「右肩部に被弾。損傷は軽微です。敵機からのロックは続いています。追撃に備えてください」
「……な、何が起きたっ!?」
「本機は、敵機の攻撃を受け当初着地予定点の手前、エミル山中の森林内に不時着しました。損傷は軽微です」
「敵っ!?」
「本機は上空四機の敵性ギアに捕捉されています。戦闘回避は困難と考えます」
村で見た上空を飛びまわっていた奴らだ。村に戻ることばかりが頭に浮かび、迂闊な行動をしてしまった。
「敵機から通信。回線を開きますか?」
「!?」
通信だと?どういうことだ?
「敵機から通信。か…」
「わかった!繋げてくれ!」
ヴィーが繰り返し伝えるのを遮って答える。
「聞こえるか?我らは、その機体の鹵獲若しくは破壊の任務を受けている。その機体を明け渡すなら命だけは助けてやろう」
敵からの通信が入る。
「お前たちはどこの部隊だ?なぜこの機体を欲しがる!?」
「答える義務はない。機体を渡すか死ぬか、どちらか選べ」
フリンの質問は一蹴される。
(機体を渡せば命は助ける?これだけのことをした奴らが本当に約束を守るのか?奴らの存在を村の誰も知らなかったんだぞ…。機体を明け渡せば無防備な俺は、村人たちは、全員口封じされてしまうんじゃないか?)
「ヴィー…。戦うぞ」
「承知しました。右腕ビーム砲を展開。エネルギー充填開始」
通信を再度開く。
「俺の答えは、これだぁぁぁああ!!」
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