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Skies fall down  作者: 伊佐谷 希
第5章 神か悪魔か
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第5章28 バルムンク9

 ナニカが扉の向こうで身をかがめた。前に出した右足の太ももが膨らみ、脚の爪が鋼鉄の床に突き立てられる。

 ——金属が引きちぎられる鈍い音を立てナニカが飛び出した。それはカタパルトから射出された戦闘機のように鋭く、走るというよりも発射されたといった方が近い。ナニカが発射された先にはフリンがいた——


 ——パンッ、パンッ。


 火薬の乾いた音が響く。ナニカに向けてボウが引き金を引いた。しかし発射された弾丸はナニカを捉えることなく、既にナニカが通りすぎた空間を虚しく通りすぎていった。


 ——ナニカがどんどん近づいてくる。フリンは、俺かよっ!?と心の中で叫ぶ。不運を嘆き泣きたくなる気分だった。しかし、フリンのすぐ背後にはユニがいるので避けることはできない。鉄パイプを正眼に構える、しかし——


 「ぐわっ!!」


 フリンは、発射された勢いをそのまま乗せたナニカの右腕の一撃を堪えきれずユニごと後ろに吹き飛ばされた。鉄パイプはナニカの爪で五つに切り裂かれ乾いた音を立てて床に落ちた——


 「————ッハア!!」


 ナニカがフリンに攻撃を喰らわせた直後、動きを止めた一瞬の隙を見逃さずアクラが拳を叩き込む。アクラの拳を左脇腹に喰らったナニカが身体をくの字に曲げて吹っ飛んでいく。通路の脇に積まれた段ボールの山に突っ込み上から崩れてきた段ボールや資材に埋もれていく——


 ——チュー、チューとその段ボールの山に潜んでいた普通のネズミが逃げ出してきた。段ボールを吹き飛ばして現れた大きな爪がネズミを貫通してそのまま床に突き刺さった。崩れた段ボールを掻き分けてナニカが再び姿を現す。


 「兄さん、あれ——」


 ヤオフーが爪に貫かれたネズミを指差す。ヤオフーとアクラの二人は襲われたフリンたちを庇うようにナニカとフリンたちの間に立っている。ヤオフーが指さした先にいるネズミは——


 「ヂュッ…!?ヂュ、ヂュゥゥゥゥウウウゥゥ…………。ギャァァァアアアッ!!◎#※○◇@&⇔∞ッッ!!!!」


 貫かれていたネズミが苦しみの叫びをあげる。その声音はだんだん変質していき金属の歪むような耳障りな無機質なものに変わっていく——

 ネズミは貫通した爪のところから菌に侵食され、肉が爛れていき、キノコのようなものに身体が覆われていく。それの変化にあわせてグッタリしていたネズミが再び元気に動き出す。さらに爪が突き立っている床も隆起し菌糸が芽吹いている。


 ——ナニカが床から爪を抜き、勢いよく腕を振ってネズミを爪から払い落とした。自由になったネズミは真っ直ぐにヤオフーに向かっていき容赦なくヤオフーに踏み潰されて絶命する。ふと見るとナニカに破壊された扉からも菌糸が生え胞子が飛び始めていた。


 「フ、フリンさんっ!!」


 ボウが慌ててフリンに駆け寄る。フリン、ユニは床に倒れたまま痛む身体を手で押さえていた。


 「よかった。怪我はないですね!」


 倒れたフリンに駆け寄ったボウが言った。フリンは、身体中が痛ぇよとボウに言ったが、ボウに変化していくネズミの姿を見せられて慌てて自身の身体を手で触って調べた。爪痕も出血も無かったことを確認し、ほぅっと息を吐く。アクラに早く立てと言われて、二人は急いで立ち上がり体制を整えた。


 「————バルムンクのこの状態は、あいつの仕業だったのか。アジュウって何だよ?」


 「——その話は後だよ。まずはこの場を切り抜けるんだ」


 フリンの言葉にヤオフーが答えた。ナニカはグルルと喉を鳴らして立ち上がった。身の丈は二メートル強といったところ。真っ直ぐに立ち上がったナニカの身長はアクラと同じ程度だった。アクラがフリンが持っていた鉄パイプの破片を二つ拾い上げ両手に構える。手で握った部分を覗くと十センチメートル程の長さしかないが、ナニカの爪に素手で対峙するよりはマシだとの判断だった。ヤオフーもダガーをしっかり握りなおした——


 ナニカが顔を上に向け大きな口を開けて雄叫びをあげた。それが第二ラウンド開始の合図だった——

ご高覧いただきありがとうございました。

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