第5章27 バルムンク8
「この扉の先の通路を抜けると階段があります」
ボウが言った。五人は第二階層を移動中ネズミの群れとの戦闘の後も数度快適していた。相手はやはりネズミや蝙蝠などの小動物や蛇などがいたが、そのどれもが菌に侵食され悍ましい変貌を遂げていた。その度に聖痕を持つ三人が前衛に立ち、主にアクラとヤオフーが襲いかかる敵を倒し、フリンは情けない声を上げながら敵の攻撃を避けていた。そうして幾度かの分かれ道をボウのナビに従って進みいよいよ階段へつながる最後の扉にたどり着いた。
ヤオフーが右手でノブを握りゆっくりと回す。カチャッと小さな音を立てて扉が開き始めた。ヤオフーがゆっくりと扉を押していく途中で——
「みんな、離れろっ!!」
開きかけた扉を勢いよく閉め、振り返って大声で叫んだ。その直後、金属でできた扉が、向こう側から大きな力を受け、激しい音と衝撃を伴い大きく変形し罅割れた。ヤオフーはその衝撃で扉の前に倒れ頭をおさえている。
「ヤオフーッ!!」
いち早くアクラが声を出す。迫力ある声が、朦朧としていたヤオフーに喝を入れた。扉に入った罅の向こうで何者かが腕を振り上げているのが見える。ヤオフーもその様子に気が付き、尻餅をついたまま素早く身を滑らせて扉から距離を取った。直後——
扉の向こうにいるナニカは扉に向かって腕を振り下ろした。金属でできた厚い扉の蝶番が千切れ、本来開くのとは逆側に落ちる。扉の向こうにいたものは——
全身爛れたように不気味に弛んだ皮膚をボロ布をローブのように纏って覆ったナニカが立っていた。目も鼻も無い顔には耳まで裂けた大きな口があり、収まり切らない大きな鋭い牙が不揃いに生えている。両手足は人間と同じ形だがその指には硬く尖った爪が生え、中でも右腕は前腕と同じ程の長さに伸びた太く大きな爪が刀のように生えている。ナニカの足元の鋼鉄の床には扉を打ち破った時に踏ん張って付いた十本の爪痕が深く残りナニカの強靭さを物語っていた。
——ナニカはフーッフーッと荒い呼吸をしている。不揃いの牙により口を閉じていても隙間があり、口の端からは呼吸をするたびに白い靄が漂っている。目の見えないナニカは音を探り扉の向こうに佇んでいる。
アクラはヤオフーの脇に手を入れ座った姿勢のままのヤオフーを立たせる。アクラは言った。
「————亜獣、か」
「——まさか、こんなやつが紛れ込んでるなんて」
ヤオフーも同意を示す。アジュウ……?言葉の意味がわからないフリンはすぐ背後にいるユニに振り向く。しかしユニもわからないと首を振る。ボウは銃を真っ直ぐナニカに向けている。しかし恐怖で震え照準は定まらなかった。
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