第5章25 バルムンク6
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「何だよ……?今の声……?」
引き攣った顔でフリンが言う。しかしそれは他の者たちも同じだった。
「ネズミ……じゃ無いよね?もっとずっと大きそうな生き物の鳴き声……?」
「本体……かもな」
ユニの言葉にアクラが答える。フリンが言う。
「本体って?まさか!?あの通路の横穴の……」
「ああ、可能性はあるな」
五人の中に緊張が落ちる。フリンは階段室の隅でユニをかばい、ボウは拳銃を蛇腹状に登っていく階段に向かって構え、アクラとヤオフーも階段に向かって不意打ちに備え構えている。いつの間に取り出したのか、ヤオフーの右手には鉈ほどの大きさのあるダガーが逆手に握られていた。緊張の時間が続く。実際には一分にも満たないほどの時間であったのだろうが、フリンは喉が張り付くほどの渇きを感じていた。長い長い一瞬の後、ヤオフーが構えを解いて言った。
「大丈夫。離れていったよ」
一同の中に安堵の吐息が漏れる。フリンもはーっと溜息を漏らし、肩の力を抜いた。
ネズミたちに追い立てられ駆け込んだ階段室の中はエレベーター広場や他の通路などと同様に菌の侵食を受け、戦艦の元々の無機質なイメージを歪め、巨大な生物の内臓を、食物を刮ぎ栄誉を貪る腸壁を連想させるほどに不規則に膨らんでいる。
「いつまでもここにはいられないね。外にはネズミがいるし、上に行くしかないね」
「そうだな」
ヤオフーの言葉にアクラが短く答える。フリンの後ろに隠れていたユニの右手がフリンの右肩を掴む。その手は弱々しく震えていて、フリンは何も言わず自分の右肩を掴む手の上に自分の左手を置き優しく包み込んだ。
三人は既に階段に向かい歩き始めている。フリンもユニの手を取り階段に向かっていった。
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