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Skies fall down  作者: 伊佐谷 希
第5章 神か悪魔か
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第5章23 バルムンク4

 「こりゃ、凄いね」


 第二区画に踏み込んだヤオフーが思わず声を上げる。第一区画と第二区画を隔てる扉一枚超えただけでバルムンク内部は別の遺跡であるかのようにその様子を変化させる。


 「ここ、普通に息してて平気かな?」


 ユニが口を左手で塞ぎながら言った。扉の向こうは苔やシダ、キノコのような植物が生い茂り、霧がかかったように胞子で視界が霞んでいる。一向は一度第一区画側に退避する。隔壁に阻まれ充満していた胞子の靄が、開かれた扉側に霧散しフリンたちの足元を白い川のように流れていく。フリンは胞子の靄が薄くなった第二区画内に踏み込むと服の袖で口元を押さえながら、腰を落とし辺りの植物に目をやった。


 「エミル山の森に生えてる植物と同じだな。身体に害のあるものはなさそうだぞ」


 「わかるのかい?」


 ヤオフーが聞く。


 「伊達に山育ちじゃないからな」


 フリンが得意そうに鼻の下を掻いた。


 「フリン、山で木の実とかキノコとか手当たり次第に食べて、よくお腹壊してたもんね」


 ユニが意地悪そうな声音で言う。——それを言うなよ。とフリンは苦笑した。しかしすぐに神妙な顔に戻るとフリンは言った。


 「でも、なんで光も全く届かないところで植物がこんなに育ってるんだ?それに一体どこから生えて——。うっ……!」


 フリンは一際大きなシダの根本を見て何かに気づき顔を青くしながら後退りした。アクラがやってきてフリンが見たものを確認する。


 「ネズミ、か……?」


 シダは根はネズミの死骸にはっていた。それも一匹や二匹でない。十匹を超えるネズミが重なり合い一塊の土塊のようになっている。死んでから相当な時間が経っているのだろう。死臭はせず死骸は原型を保たず崩れ、ネズミの頭蓋骨を見つけなければ、実際の土と判別がつかないほどだった。フリンとアクラの二人は第二区画の内部の状況を確認するため、さらに一歩二歩と周りの植物たちに注意を払いながら進んでいく。約二十メートル。通路右側にある二つの扉、二つの居室分の距離を歩くと通路は十時に交わっている。そこへ行くまでに気がついたことは第二区画は相当に老朽化が進み、壁のそこかしこに穴が空いていた。植物たちはその壁の穴から覗く山肌の土や通路に落ちた土に根を張って成長しているようだった(しかし地面の土は完全に腐りきり、元からの土か何らかの生物の成れの果てかは区別がつかない)。そして十字路にたどり着いたアクラが一つの間違いに気がついた。


 「これはなんだ?一体、何が……?」


 フリンもアクラの元に辿り着いてすぐに気がつく。十字路だと思っていた通路の左側は一眼見て元々そこにあったものではないことがわかる。そこにはフリンよりも頭一つ高く、身長が二メートルに迫るアクラですら余裕で中を通れるほどの大穴が開いていた。穴の先は深くバルムンクの光は届かない。アクラは穴の手前まで近づくと言った。


 「——外側から何かが穴を開けたみたいだな」


 「——?なんで、そんなことがわかるんだ?」


 フリンは不思議そうに顔を歪める。


 「この穴を開けられた壁や土の様子をよく見ろ。壁は内側に裂けているし、穴は奥に行くに従って段々地面に土が積もって狭くなっているだろ?」


 「それで——?」


 「ふんっ。壁の裂けは言わなくてもわかるな。土の方は、地面を掘ったとき掘った土は別の場所に捨てないと先に掘り進めないだろ?この穴は何者かが、この艦に向かって掘り進み、自分の前面にある掘り崩した土を自分の背中側に捨てながら進んでいった跡だ。土がすっかり固くなってるようだし、この植物たちもやってきた何かの身体にくっついてきてここまで育ったんだろうから、何かが侵入したのはここ一ヶ月や二ヶ月の話ではなさそうだが……」


 もしアクラの話が本当なら、何かとは一体何なのか?ギア・ワーカーや道具を使って侵入した人間か、それとも——。

 アクラが穴を背にし、目を細めて、実際はT字路だった各通路の先へ睨むように目つきで注意を向ける。フリンはアクラの隣に並び同じように通路の先を警戒しながら、恐怖を隠しきれない上擦りそうな声音で言った。


 「何かってなんだよ?そんな時間が経ってるなら、もう死んでるよな?」


 「さあな。それよりお前に聞きたいことがある。あの草は本当に山のものと同じか?」


 「あ、ああ。間違い無いと思う……」


 「山の草木はあんな風にネズミを一箇所に集めて寄生するようなものだったのか」


 「はっっ?いや……。あれは死んで土のように崩れた死骸に根付いたんじゃ無いのか?」


 「ふんっ。俺にはそうは思えないがな」


 「——兄さんっ!そっちへ行って大丈夫かい!?」


 声が聞こえず何をしているかわからない二人のやりとりに痺れを切らしたヤオフーが大声でアクラに呼びかけながら、既に通路を二人の元へ進み始めていた。ヤオフーも大穴を見つけ、驚きの声をあげると、アクラからフリンとのやり取りをかいつまんで説明された。ヤオフーは話を聞き終わると、顎に手をやり少し考える素振りを見せたあとで——。


 「なるほど。長居は無用なようだね」


 三人は一度ユニ、ボウが待つ入り口まで戻る。改めてアクラが状況の説明をする。


 「——さっさと目的を済ませて帰るよ」


 アクラの説明の最後をヤオフーが結ぶ。ヤオフーが再び足を踏み入れようとしたその時——。


 「待ってください。これを——」


 「ん?——さすがうちの工場長は準備がいいね」


 「何があるかわからないので、一通りの準備はしてきました」


 ボウから五人にガスマスクが渡された。ガスマスクは顔前面をサイズで、鼻口の部分をフィルターが覆い、目の部分は継ぎ目のないアクリルの一枚板で作られ視界が広く確保されている。ガスマスクを顔に当て、後頭部にベルトを回して固定する。


 「みんな、マスクはつけたね。それじゃあ行こうか」


 五人はボウの案内に従って、大穴を左手に第二区画のさらに奥へ進んでいった。

ご高覧いただきありがとうございました。

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