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Skies fall down  作者: 伊佐谷 希
第5章 神か悪魔か
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第5章21 バルムンク2

 フリンの落ちた大穴のある箇所は複数の通路が交わる場所で、これまで歩いてきた通路と比べて少し広くなっていた。居住区を進む通路を背中にし、大穴から刺す光に向かって左側にライトを当てるとそこには階段があった。階段のある場所の壁には何かの文字が記されていた。


 「フリン、これなんて書いてあるの?」


 ユニがフリンに聞いた。しかし、そこに記されていた文字はフリンも見たことがないものだった。


 「え、えっとー……。なんて書いてあるんだ?」


 誤魔化すように苦笑しながら頭を掻くフリンの後ろからアクラがそれを見て言う。


 「これは神聖文字だな。艦内の階数と階ごとに何があるかが書かれているようだが」


 「アクラ、読めるのか?」


 「ふん。神聖文字はいわゆる古代文字だ。スティグマータや遺跡を扱うものは大概読めるもんだが……」


 「ま、まあ俺にはヴィーがいたからな……」


 フリンが震える声で言い訳をする。


 「でも、コカヴィエールに表示される文字は今の文字だったような……。ユニは覚えてるか?」


 「私……?ごめん、わからないや」


 「ふん。まあ、俺もヤオフーもギアの操縦に必要な程度しかわからんがな。ボウ、読めるか」


 アクラに指名され、それまでヤオフーと俯瞰していたボウがフリンの前まできて案内表示を読み始める。一人になったヤオフーも案内表示の方に近寄ってきて一緒に眺め始めた。


 「はい。これによるとバルムンクは四階層に分かれていて、今私たちがいるのは上から二階層目のようです。ハンガーは上から三階層ぶち抜きで、私たちが居住区への通路に入るときに階段を登ったからこの階層にいるんでしょうね。案内はブロックごとに書かれているようでブリッジの場所は書いてませんが、動力室は一番下の四階層にあります」


 「そうかい。じゃ、まずは下だね」


 ボウの言葉を受けヤオフーが方針を決定した。再びフリンを先頭に、フリンとヤオフーが手持ちのライトであたりを照らしながら階段を降りていく。大穴から刺す光も遠ざかり、あたりは余計に暗く感じる。階段を踏み外さないようにフリン達は壁に手をつきながら慎重に二階層分の階段を降りていった。最下層に着くと階段と通路の交わる壁のあたりをヤオフーがライトで照らした。そこには先ほど見たのと同じような文字が書かれていた。


 「ボウ!」


 ヤオフーがボウを呼んだ。——はい。と返事をしてボウがヤオフーからライトを受け取り、自分で表示を照らしながら読んだ。


 「動力室の場所がわかりました。ついてきてください」


 そう言うとボウはライトをかざし、通路を進み始めた。他の者たちもボウを追っていく。二階層にあった居住区の方とは逆側に向いた通路に入り、しばらく行くと目の前に観音開きの金属で丈夫に作られた扉が現れた。ボウが扉横の壁に記された文字を読み動力室についた事を確認する。ボウが扉を開けようとノブに手をかけたが、鍵がかかっているのか、扉が変形しているのか押しても引いてもびくともしなかった。——ちょっと貸してごらん。とヤオフーがボウに変わって扉に挑んだが結果は変わらない。


 「兄さん」


 「ああ」


 ヤオフーはアクラに開扉を任せた。アクラは一度普通にノブを掴み手前に引いてみたが扉はびくともしなかった。アクラは扉の重さを確認すると一度手を離し、ふんっと体全体に力を込めた。するとアクラの筋骨隆々の赤肌は、その皮膚の下に別の生き物がいるかのようにグルンと筋肉が疼いたかと思うと一回り大きく膨らみ、その筋肉は限界を超え破裂しそうになっている風船のようにパンパンに膨らんでいた。そして——。


 「……ぅぅるあぁぁああああっっ!!!」


 右手で右側の扉のノブを掴むと雄叫びとともに右腕を思い切り後ろに振り抜いた。一瞬の出来事、雄叫びの大きさに慣れていないフリンとユニはびっくりして飛び上がる。右側の扉は蝶番が引きちぎられ、アクラの右腕の先で無理矢理解体された扉は静かにぶら下がっていた。


 「行くぞ」


 何事もなかったかのようにアクラが呟く。ヤオフーはアクラに礼を告げると動力室の中に入っていった。それを追うようにボウが中に入り、残りの三人が後に続いた。


 「これは……?」


 最初に中に入ったヤオフーが驚愕の声音で呟いた。遅れてフリンも内部の様子を知り同じように驚愕し恐怖を覚えた。そこには——。


 動力室には大型の機械がいくつも並んでいたが、ほとんどの機械に明らかに人為的な破壊が加えられていた。電気が通っていないため火花が散っていることはないが、弾丸や斧のような刃物の切り口のついた機械は、もう二度とその機能を果たすことができないのが、素人のフリンにもわかるほどに徹底的に破壊され尽くしている。その中をただ一人ボウだけが少しでも無事な機械がないか走り回っていた。ボウ以外の四人に諦めムードが漂い始めた頃——。フリンの耳にウィーンと機械の駆動音が聞こえてくる。その音がだんだん大きくなるにつれ、少しずつ室内が明るくなっていく。フリンが上を見上げると艦内の照明が灯っていた。


 「ボウ!」


 ヤオフーが歓喜の声音でボウの名を呼んだ。ボウも嬉しそうな笑顔でヤオフーに振り返ると言った。


 「エンジンなどほとんどの機械が壊れている中で、ジェネレーターだけは生きてたんです。この艦はもう動かすことはできないでしょうけど、この電源を頼りに艦内のデータを調べることはできるかもしれません!」


 ——じゃあ、次はブリッジだね。ボウとひとしきり喜びを共有した後ヤオフーはそう言った。

ご高覧いただきありがとうございました。

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