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Skies fall down  作者: 伊佐谷 希
第2章 旅立ち
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第2章5 続 エミル山、再び

 コカヴィエールまで目と鼻の先ほどのところで、またしても兵士の姿を見つけた。フリンは慌てて草木の影に身を隠す。どうやらあたりには、あの兵士一人だけのようだ。銃を携え周囲を窺いながら歩いている。


 (あとほんのちょっとだったのに…)


 いくら隠してあるとはいえ、このままではコカヴィエールが見つかるのも時間の問題だろう。


 兵士は顔にガスマスクのような仮面をつけ、宇宙服のような防護服を身に纏っている。顔や体型は判断できない。胸に国章が窺えるが、やはりあんなものは見たことがない。


 フリンは、いちかばちかコカヴィエールまで一気に走り抜けることも考えてみるがなかなか決心がつかない。草木の影であの兵士の隙を窺う。

 どうする。どうする。


 「動くな。ここで何をしている?」


 不意に後ろから声をかけられた。反射的に振り返りそうになるのを更に制止される。


 「立て。俺の指示に従うんだ。余計なことは考えるなよ」


 前の兵士に気を取られて、後ろから近づいてくる兵士に気付かなかった。フリンは大人しく両手を上げて立ち上がる。前にいる兵士もこの様子に気づき、こちらに近づいてくる。


 「ここで何をしていた?」


 後ろの兵士が尋ねる。どうする。なんて答える…。


 「どうした?言えないのか?」


 兵士の声が一トーン下がる。場の空気が一触即発の雰囲気に変わっていく。


 「貴様っ!ここで何をしているっ!?」


 突然、別の場所で声が響く。続け様に銃声が鳴り響く。


 フリンを取り囲んでいる二人の兵士が一瞬これに気を取られた。フリンは反射的に走り出す。


 「止まれ!」


 制止の言葉と同時に銃弾が放たれた!その弾丸の一発がフリンの右の太腿をかすめる。肉が裂かれ血が噴き出した。

 フリンは堪らずその場に倒れる。右足を撃たれた痛みが頭の芯まで響く。フリンは声にならない呻き声を上げ、必死に撃たれた箇所を抑えている。

 もうコカヴィエールまで手が届く距離なのに…。


 フリンの倒れているところからほんの二メートル程先が、斜面が崩れ、高さにして十数メートル程の崖になっている。フリンはその崖に寄りかからせるようにして、コカヴィエールを隠していた。兵士たちの位置からはまだ機体は確認できないはずだ。


 しばらくして頭の芯まで響いていた痛みが落ち着いてくる。思考が遠い。まるで第三者が斜め上からフリンを操っているように思考が俯瞰している。

 景色が霞んでいる。朧げな思考に引っ張られるように周囲の景色が暗く霞み、目の前の一点しか見られない。

 すべての音が遠い。外を歩いている時にふと聞こえてくるおばさん達の井戸端会議の声のように、頭の中を通り抜けていく。

 先程までの動けないほどの痛みは引いたものの、フリンは未だ痛みに意識が朦朧としていた。コカヴィエールに辿り着く。それだけしか考えられなかった。痛みを堪えて立ち上がる。そこに兵士たちから更なる銃弾を浴びせられる。


 「やられたっ!?俺は何をぼーっとしていたんだ!!」


 近距離で響いた銃声に混濁していた意識が復活する。


 「どこを撃たれた!?」


 しかし兵士たちの銃弾はフリンを捉えてはいなかった。右足以外には異常はない。この距離でまともに動けないフリンを外すことなんてありえるのだろうか?フリンはこれ以上の負傷がないことに安心しつつも、疑問で頭が支配される。


 兵士たちが声を荒げている。フリンが恐る恐る振り返ってみると、フリンと兵士たちとの間にコカヴィエールの手があった。フリンは操縦していない。機体の腕がひとりでに動き、フリンを守ってくれていた。フリンが視線を崖のほうに戻すと、目の前には崖から上半身だけを出したコカヴィエールのコックピットが開いていた。

ご高覧いただきありがとうございました。

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