第四章☆次元管理官とタイムパトロール
第四章☆次元管理官とタイムパトロール
「ちょっと、君たち」
数人の大人が直也たち3人を取り囲んだ。
「あちゃー。補導かな?」
平日の昼間の雑踏。普通に考えれば中学生が3人で私服で街をうろついているわけだ。どう切り抜けようか迷っていると、訳知り顔で年配の女性が梨華に手を差し出した。
「時空に干渉している装置をください」
「えっ!駄目だよこれはあたしの」
「次元的に巨大なひずみが発生しています。しかるべき処置を取らないと、ビッグバンクラスの爆発が起こる可能性が」
「………」
梨華は直也の陰に隠れようとした。
「あなた達は誰ですか?」
結子が尋ねた。
「タイムパトロール。服装はここの時空の標準仕様です」
「身分証明は?」
「これです」
ポケットから小さな水晶玉みたいなのを取り出して見せる。内部で色とりどりの砂やスパンコールのようなものが、絶えず対流している。
「本物?」
「本物よ」
直也の問いに結子は安心した表情で答えた。
「梨華」
直也が振り向いて声をかけると、梨華はしぶしぶ時空移動装置を相手に手渡した。
「結子さんが梨華さんに跳ね飛ばされて別の空間に移動した。そして結子さんの座標を装置で固定して迎えに行った」
「はい」
「おそらくそれで装置に負荷がかかり始めた。…その後、元の0時空に戻らずに未来へ跳ぶと、結子さんが二人いた」
「はい」
「それから0時空に戻れなくなってしまった」
「はい」
「この場合の0時空は直也くんが拠点になっているけど、そもそもの0時空は梨華さんのところに座標を置かなければ装置は狂いますよ」
「はい…」
次元管理官が出張ってきて、原因を究明した。
「それぞれをそれぞれの0時空に戻すことはできます。でもひずみが発生しているから、それを肥大化させないために、現状のままで3人一緒にここの時空にとどまることを命じます」
結子が直也の左腕にすがってきた。直也は結子の右手をぎゅっと握りしめた。
梨華は2人に後ろから抱きついてきた。
このまま何事もなくここの時空で過ごすことは可能なのだろうか?と直也は思った。