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intermission〜花〜
intermission〜花〜
「家が…ない」
直也が愕然として言った。
一面、どこまでも続く水耕栽培前の田んぼの土地が広がっている。
「わあ!レンゲ草にタンポポ、イヌフグリ、シロツメクサ…」
結子が思わず駆け出した。
高い空にヒバリが飛んでいる。
「あれ、あげひばりって言って…」
「うんうん」
「からっと揚げてある」
「何が!?」
梨華の話に直也は吹き出した。
「花冠作ろ」
梨華が結子の方へ歩いて行った。
「タンポポかぁ。レイ・ブラッドベリが『たんぽぽのお酒』って本出してたな」
それからそれから、宮沢賢治が『ポランの広場』でシロツメクサの中の数字を読みながら広場を捜す話とか。
直也はふんわりした太陽光を浴びて、のんびり考えていた。
「直也ー!こっちおいで!」
梨華が呼んでいる。
花冠を乗せた結子が可愛らしい。
このひととき、ここの世界も悪くないな、と3人は思っていた。