第三章☆[X1,Y0,Z0]二人の結子
第三章☆[X1,Y0,Z0]二人の結子
「結子、元の時空だよ」
「ええ…」
気が重く感じながら結子は直也を見た。
転移装置を持っている方の梨華がコンパクトを見ながらルージュを塗っている。
ここの時空には結子を置き去りにしたちょっと大人の梨華がいるはずだ。結子は置き去りにされたことについて文句もあったが、感謝の気持ちもある。
「通信装置でお姉さまを捜すわ」
「わかった」
直也が通信装置のブローチをポケットから取り出して、途端に妙な感じを受けた。
「これ…」
「どうしたの?」
「もともとこんな形だった?」
「あれっ?!」
ブローチの造りが変化していた。
「とりあえず、通信は可能なはずよ」
カチャカチャ。
ピーピーピー。
『はい。どなた?』
「お姉さま!私よ!結子」
『えっ?…結子は私だけど』
「えええっ?」
直也たちは思わず聞き返した。
この時空の結子と梨華と会った。
彼女らは過去へ行ったことはないと言い、直也のことも知らなかった。
「時空…を移動してるの?」
大人の梨華が眉をひそめながらきいた。
「もしかして、次元も移動してない?」
「そんな!じゃあ、元の時空に戻ることはできないの?」
結子が若い梨華に尋ねた。
「あたしもよくわかんないんだけど、そういうことらしいわね」
「いい加減だなぁ」
直也は呆れて梨華を見た。
結局、どこへ行けばいいのだろう?結子は不安になりながら、直也の左腕にすがった。
「とりあえず、過去へ戻ろう。僕のいたところに」
「OK。[X0,Y0,Z0]に座標を戻すわ」
そこでも違う直也がいたらどうすればいいの?と、結子は思った。
多次元の旅になるかもしれなかった。