プロローグ☆小鳥遊結子、消失
プロローグ☆小鳥遊結子、消失
「なにやってるの?」
「一体いつ頃になったらこの通信装置、ものになるのかなぁ、って思って」
柄本直也はブローチ状の通信器をさっきからカチャカチャやっている。
結子はため息をついた。
時間軸を左右する装置がなければ、未来にいる梨華やJJたちとは連絡をとれないだろう。それをどう直也に説明しようかと考えながら、自分の髪を無意識にいじっていた。
「どうかした?結子」
「うん。説明がめんどくさい」
「面倒がらずに!頼むよ」
顔が近い。至近距離だ!結子は直也の顔を両手で押しやった。
「なんだよ?」
「わかっててやってるの?わかってないの?」
「何が?」
真顔の直也と赤面する結子。
「別に!いいけどさ。…時空を歪める装置でもない限り、あと二十年は使えないわよ」
「時空を歪めれば良いの?」
「「!?」」
ふいに部屋の何もない空間から手が伸びてきた。
「きゃあ!だめ!」
結子が叫ぶ。
手から現れてきた人物と対照的に、結子の姿が消え始めた。
「結子!」
直也がとっさに結子の手をつかもうとしたが、すうっと、彼女の姿がかき消えた。
「彼女、時空的に不安定だったみたいね」
現れたのは、どこかで見たことがある少女。…梨華の若い頃だ!
「梨華さん!どうしてこんなことするんですか?」
「ちょっと待った。ストップ。私は、あなたとは初対面よ。なんで名前知ってるの?」
「結子と一緒に未来からしばらくここへ来ていたんですよ!」
「ああ!多分別次元の私だわそれ。結子…?も知らないし」
「どうしよう?僕は結子を守るって決めてたのに!」
「じゃあ、しょうがないわね、彼女が跳ばされた次元まで助けに行かなくちゃ」
「それってどうやれば?」
「あたしと一緒に行動するしかないわね」
「…わかりました」
「ちなみに、結子ってあなたの彼女?」
「いいえ。僕の片想いで、なんていったらいいか、大切な存在なんです」
「妬けるわね」
梨華はふふん、と笑った。