消えるまで
二人はいつも喧嘩をしているようだ。
鉛筆が線を書けばそれを消しゴムが消してしまう。
鉛筆は不満そうにもう一度線を引き、消しゴムがまたそれを消す。
どうしてあの二人はあんなに仲が悪いのかと私はボールペンに尋ねた。
ボールペンは、別に彼らは仲が悪くなんてないと言った。
なんでも、次々と線を引いていく鉛筆の間違いを消しゴムが消し、間違えに気づいた鉛筆がムッとしながら書き直しているだけらしい。
私の目から見れば不仲な二人だが、実際は仲が良いようだった。
ボールペンが二人の残した線に赤い丸をつけているとき、たしかに二人は機嫌が良さそうだった。
しかし、ある時から消しゴムは筆箱の外に出ることがほとんどなくなってしまった。
鉛筆が線を間違えることが少なくなったのだ。
私は消しゴムはきっと寂しいのだろうと思った。
鉛筆はなぜ間違えてあげないのだろうとも思った。
定規にそれを尋ねようとして私は気がついた。
定規の裏にひっそりと隠れる擦り減って小さくなった消しゴムの姿に気がついたのだ。
これ以上少しでも線を消したら消しゴムはなくなってしまうだろう。
おそらく鉛筆はなるべく長く消しゴムと一緒にいたかったのだと思った。
やがて鉛筆は最後まで線を間違えることなく短くなって、消しゴムと一緒にどこかへ行ってしまった。
その翌日、私達の下には新たにシャーペンが加わった。