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女勇者が可愛すぎて、それだけで世界を救える気がしてきた。  作者: 偽モスコ先生
伝説の武器編 後編 ドキッ! 男だらけの試練の迷宮
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さよならジョゼフィーヌ

「で、レイナルド。『試練の迷宮』についての説明を頼む」


 自己紹介を終えて数分後、俺たちは長老の用意してくれたお茶を前にして各自テーブルの席についていた。

 配置は俺とティナ、向かいに長老とレイナルドだ。


 早速話を進めようとそう聞くと、レイナルドは無駄に凛々しい声音でゆっくりと言葉を紡いだ。


「試練を課す迷宮です」

「だろうな」

「…………」

「…………え、終わり?」


 何その頭痛とは頭が痛いということですみたいな説明。と思っていると、長老がほっほっほと笑いながら喋り出す。


「『試練の迷宮』とは何かと聞けばそりゃそうなるじゃろうて。ぶっほっほ!」


 終いには腹を抱えてこちらを指差しながら笑いだす長老。

 天界なら間違いなく爆裂剣でもぶっ放しているところだけど、そういうわけにもいかない。

 そもそも派手に暴れるわけにはいかないし、そうでなくても俺が何か騒ぎを起こして迷惑を被るのはティナなのだ。

 

 それに伝説の武器の入手がグランドクエストになっているから無視するわけにもいかず、大人しく聞き方を変えることにした。


「あー悪い。それじゃあ『試練の迷宮』ってのはどういうところなんだ?」

「ダンジョンです」

「ぶっほっほ!」

「えっと。じゃあそこで何をするんだ?」

「試練です」

「ぶっほっほぶ……!?」


 立ち上がり一瞬で距離を詰めて持ち上げてから投げると、長老は真っすぐに飛んで壁に叩きつけられた。

 そのままその身体はずるずると床に滑り落ちて動かなくなる。


「ちょ、ちょっとだめだよジン君……!」


 それを見て慌てて俺に注意をするティナエル。こんなクソ老人にも優しい、愛と慈悲を司る俺の大天使だ。

 そんな大天使の声で我に返った俺は長老の元へ歩み寄り、身体を揺さぶりながら声をかけた。


「おい、おい長老。大丈夫か。くそっ、だめだ。誰がこんなひどいことを……」

「ジン君だよ……」


 ティナの悲しそうな声を聞きながら席に戻ると、長老を放置したままで話し合いが再開された。

 辛抱強く質問を続けに続けた結果、どうやら「試練の迷宮」を攻略していけば伝説の武器が手に入るらしいことがわかった。

 結局色んな部分が曖昧だけど、これだけわかれば何とかなる。


 恐らく「試練の迷宮」に出現するのは「守護者」と呼ばれる「イベントモンスター」の一種だ。

 各ダンジョン専用のモンスターで、つまりそのダンジョンにしか出現しない。外見は石でできた人間のような形をしている。

 どうやら今回はティナと一緒に堂々とダンジョンを攻略できるみたいだ。


 椅子から立ち上がり、親指で世界樹の方向を示しながら二人に言った。


「よし、それじゃさっさと行ってこようぜ」

「お待ちを」


 レイナルドが椅子から立ち上がってそんな風に言う。

 ティナは不思議なものを見る目でおっさんを見ながら首を傾げている。

 視線をやりながら問いかけてみた。


「どうした?」

「おやつを」

「おやつ?」


 するとレイナルドは、こちらへの返答はせずに無言で奥に行って何やらがさごそとやり始めた。何かを探しているらしい。

 何となく暇になってしまったので、もう一度席についた。

 

 やがてレイナルドは、クッキーみたいなものを持ってこちらへと戻ってくる。

 そして俺と同じようにもう一度席に着いてぼりぼりとやり始めた。


「ぼりっぼりっむしゃっむしゃっ」

「…………」

「…………」


 静かな家の中に、おっさんがクッキーを咀嚼する音だけが響き渡る。

 俺もティナも黙ってそれを見つめて時が経つのを待った。

 やがてクッキーを食べ終わると、おっさんがゆっくりと口を開く。


「えー失礼いたしました恥ずかしながらお腹が減ると口数も減る性分でしてこの度はミツメの王様より勇者様に技を伝授するようにと仰せつかっておりますので迷宮へ入る前にまずは我が家へとお越しくださいますようお願い申し上げます改めまして案内役はこの私不肖レイナルドが務めさせていただきますので重ねてよろしくお願い申し上げます」

「お、おお。何だこいつ」

「あ、でもちょっとわかるかも。お腹が減ると喋りたくなくなりますよね」


 いやそりゃティナならそれでも可愛いけどよ、と喉まで出かかったところで何とか我慢した。

 えーと? つまり今まで口数が異常に少なかったのは全部空腹のせいだったってことでいいんだよな。


「ていうかそれなら最初からそう教えてくれよ」

「無念」

「無念?」


 長老はわかっててわざと黙ってたんだろうな。まあ一発いい投げを入れさせてもらったし許してやるか。


 時間を無駄にするのもなんだということで、早速俺たちは長老の家を出てレイナルドの家へと向かう。

 さっき長老が行って帰ってきた時間で何となく予想はしてたけど、ここからそんなに遠くはないらしい。


 レイナルドが満腹の今は迂闊に喋りかけるとまたあの猛烈な語りが始まってしまうので、下手に手は出さずに後ろをついていく。

 だけど、不意におれたちの目の前をちびっこエルフが横切った時の出来事だ。


 ティナが通り過ぎていくちびっこの背中を指差しながら言った。


「あっ、ねえねえジン君今の子かわい……」

「むうあれはこの里に住む子供ですなしかし親はどうしたのでしょうかこんなところで一人で遊んでいるというのは別におかしいところがあるというわけではないのですがやはりあまりよろしくないので親を探して迎えに来てもらうのがいいかもしれませんなガッハッハ」

「ご、ごめん……」


 なぜかティナに謝られてしまったので、俺は尚も続くおっさんの喋りを遮るようにして言った。


「おいおっさん、いいから早く行こうぜ」

「かしこまりましたいやあ申し訳ありませんなこの歳になると口数も多くなるものでして女房にもよく怒られておりますとはいってもその女房も五年ほど前に他界してしまって娘も里から出て行きましたからこの里に一人暮らしをしておりますのでよろしくお願いいたしますうほほほ」

「何気に話の内容重いな」


 そんな感じでますます調子をあげていく喋りをどうにか聞き流しながら歩いていると、おっさんの家に着いた。


 長老の家みたいに特に装飾などもない、素材そのままの素朴な家屋だ。

 大きさ的には家屋というより小屋と言った方が近いかもしれない。ただ、里にある他の家とは違って少し広めの庭がある。

 そこには人形のようなものがいくつか立ててあって、テイマーズの宿舎にある訓練場を思わせるような光景だ。


 庭の真ん中辺りまで来ると、レイナルドが俺たちの方を振り向いて口を開く。


「少々ここでお待ちいただけますかな」

「おう」


 どうやら満腹状態から小腹が空いた状態になったらしい。ほどよい会話ができるので、できれば一生このままでいて欲しいところだ。

 

 家に入っていくおっさんの背中を見送ると、庭に立てられた人形に興味津々なティナはそちらにとてとてと走っていった。

 その姿にほっこりしながら後を追うと、ティナが人形を指で突きながら言う。


「ねえねえ、これ何かな? もしかして特殊なアイテムだったりするのかな」

「これはただ単に殴るためだけのものだと思うぜ。これを標的にして技とか魔法を練習するんだよ」

「へえ~」


 と、感心した様子で人形つんつんを続けるティナ。

 俺もティナのほっぺをつんつんしたい……別に変な意味じゃねえよばかやろぉ!

 とかやっていると、おっさんが槍を携えて戻ってきた。


 レイナルドが俺たちの近くまで来てから口を開く。


「勇者殿にはその訓練用人形を気に入っていただけたようですな。さて」


 おっさんはそう言って槍を構えると、その体勢のままで続けた。


「これから私の技をお見せしますので、ジョゼフィーヌから離れてご覧ください」

「ジョゼフィーヌ?」

「その訓練用人形の名前です」

「名前つけてんのかよ」


 聞くとレイナルドは沈痛な面持ちをして答えた。


「五年前に他界した妻の名前なのです……」

「妻の名前をつけた人形をボコスカ殴ってんだな」


 そして指示通りに俺とティナは人形から離れると、それを確認したレイナルドが声をあげる。


「それではいきます……はあああっ……」


 そう言って気合をいれると、レイナルドは槍を構えたまま地を蹴った。

 一瞬で人形との距離を詰めると、スキル名の宣言と共に槍を振りぬく。


「『八双突き』!!」


 おっさんの手によって高速の突きが繰り出される。

 それは槍が何本もあるのかと錯覚してしまうほどだった。


 衝撃音。


 見れば、無数に繰り出されたレイナルドの突きによって、ジョゼフィーヌが粉々に砕け散ってしまっている。


 気付けば俺は叫んでいた。


「ジョゼフィーヌゥゥゥゥ!!!!!」


 この日。世界から、ジョゼフィーヌが消えた。

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