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女勇者が可愛すぎて、それだけで世界を救える気がしてきた。  作者: 偽モスコ先生
伝説の武器編 前編 トチュウノ町であれこれと
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そしてあの二人は

 アクセサリー屋を出た俺たちは適当な場所を散歩していた。気まずいというのと似てはいるけれど違うような雰囲気が流れる。

 やがて道の脇に長椅子を発見した。

 歩き疲れたわけではなかったけど、このまま歩き続けるよりは座った方がいいかもと思ったので、長椅子を親指で示しながらティナに声をかける。


「とりあえずそこに椅子があるから座ろうぜ」


 二人で長椅子に座ってのんびりと会話をしながら過ごす。

 ある程度時間が経った頃、そろそろ夕食でも食べて帰ろうかという話になったので椅子を立って歩き出した。


 そしてある建物の脇を通り過ぎようとした時のこと。

 少し開けた場所に出たところで、何やら聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「今頃あの二人は仲良くやっているはずさ。そう、まるで僕たちのようにね」

「ええ。さすがはラッド様ですわ」

「何を言ってるんだい。君の頑張りがあってこそじゃないか」

「そんな、もったいないお言葉ですわ」


 俺とティナは思わず建物の陰に隠れてしまった。

 隠れてすぐに少し驚いたような表情でティナが話しかけて来る。


「何だか声かけづらくて思わず隠れちゃったけど、すごい偶然だね」

「いや偶然じゃないと思うぞ」


 多分だけどあいつら俺たちを近くで見てたんじゃないだろうか。

 

 そして俺たちがうまくいったのを見て自分たちも盛り上がるという算段か。

 自分たちも同じようにデートが出来るし、俺たちを話題にして盛り上がることも出来るしでお得感がすごい。

 ラッドのやつうまく考えやがったな、ロザリアもかもしれんけど。


「このままここで見てみようぜ、どうなるか」

「ええっ、そんなの悪いよ。そ、それに、二人がここでその……いい雰囲気になっちゃったらまずいっていうか……」


 恥ずかしそうに想像を膨らませるティナ……いいな。

 でもあいつらは俺らを見てやがったんだ。ここであの二人がどうなるかを観察するのは当然の権利のはず。


「そん時はそん時だ。帰ってラッドのやつをからかってやる」

「だめだよジン君……で、でも、本当のことを言うと私もちょっとだけ見てみたいかも」


 恥ずかしそうに本音をさらけ出すティナ……いいな。


「じゃ、決まりだな」


 二人の意見が一致したところで建物の陰から顔を出して様子を窺う。

 向こうはこっちに気付いていないし、幸いにも俺たちの位置は二人からは気付きにくい角度に当たる。


 これならじっくりとあいつらを……ちょいちょぉい!

 ティナも建物の陰から顔を出したので、二人の身体がめちゃめちゃ近くなる。

 やばいあいつらの会話の内容が頭に入ってこない。


 ティナの「誘惑」スキルはかなり強力で、いつぞやのサキュバスのものとは比べ物にならなかった。

 ていうかティナはあいつらの会話って聞こえてるんだろうか。人間は精霊ほど五感が発達してないってよく聞くけど。


 まあ二人がイヤ~ンなことをしないか見たいだけなのかもな。

 何事にも興味深々な少女、それが大天使ティナエルの下界での姿なのだ。

 それでも一つ深呼吸をして何とか意識をラッドたちへと向ける。


 二人は会話も落ち着いてきたところのようだった。


「そうして僕の名言集が今回功を奏したってわけさ」

「さすがですわラッド様」


 そう言ってロザリアは両手でラッドの片方の手を包み込んだ。

 一応訂正しておくと、ラッドの名言集はよくわからない空気を生み出しただけで何ら功を奏してはいない。


 手を優しく握られたラッドの頬が朱に染まる。


「だ、だめだロザリア! そんなことをされたら僕も我慢できなくなってしまうじゃないか!」

「普段色んなお言葉をかけてくださるのに、いざとなったらあと一歩が踏み出せない、そんな可愛らしいところも大好きですわ」


 ロザリアは手を握ったまま、うっとりとした顔でラッドを見つめている。

 薄々そうだろうとは思っていたけど、こういうことになるとロザリアがリードしてんだな。ラッドのやつ、後でめちゃめちゃいじってやろう。


 と考えていると、ティナが俺の肩をバシバシと叩き出した。


「ちょっとちょっと、これ以上見てたらまずくない? このままいくとこまでいっちゃうんじゃ……」


 何がどこにいくのか知らんけど、とにかくティナがめっちゃ興奮している。

 興奮するティナもいいなと思いながらラッドたちの方に意識を戻した。

 するとラッドは握られていた手を柔らかくほどいて、そのままロザリアの両肩を横からそっとつかむ。


 そして互いに真正面から瞳を捉え合ったままで、ラッドが口を開いた。


「ロ、ロロロザリアッ!」

「はい」


 ロザリアは腕を胸の前で組み、うっとりとした表情で微笑んだままラッドの視線を受け止めている。

 返事も最小限にとどめ、ただ静かに次の言葉を待っていた。


「も、もしっ! 世界中が君の敵に回ったとしてもっ! その時は僕が! 君を守ってみせるっ!」


 えっ……ロザリアって何かそんなにやばいことしたの?


「わあ、ちょっとだけ言われてみたいかも」


 ティナがぽつりとそう呟い……えっまじ? 思わず聞いてしまった。


「ティナってそんなにやばいことしたのか?」

「違うよ、も~。なんだかこう、どんな時でも君を守る! みたいなのが素敵なんじゃない? ああいうのって」

「素敵なのか……」


 正直全然理解できないけど、ティナがそう言うのならそうなんだろう。

 もう一度二人の方に意識を戻すと少しの間を置いて、ロザリアが口に手を当ててくすくすと笑いだすところだった。


「ど、どうしたんだいロザリア。僕は真剣なんだ。笑わないでおくれ」

「ふふっ、大丈夫ですよラッド様。ちゃんとした言葉で伝えてくださるのを、私はいつまでもお待ちしておりますから」

「ロザリア……」

「それに、お気持ちはすでにいただいてますわ」


 そこで言葉が途切れると二人はその場で見つめ合った。

 固唾を飲んで見守っていると、やがてロザリアが目を閉じ、ラッドが顔をゆっくりと近付け……っ?


「だめっ!」


 いいところで俺の視界が突然暗くなった。

 目には何だか温かいものが当てられていて、後ろからはいい匂いがしている。


「それ以上は見ちゃだめ!」

「ティナ? いきなりどうした」


 どうやらティナが俺の後ろに回って目を塞いだらしい。

 いやでもこれはこれでなかなか……。


「こ、こんなのジン君にはまだはや……きゃーっ」

「お~い、いいから落ち着けって」


 俺にはまだ早いとはどういうことなのだろうか。

 ティナにはそ、そういう経験があ、あるってことか。


「だめだめこんなののぞき見するなんてよくないよ。もう宿に戻ろっ」


 そう言って俺を解放するとティナは茜色に染まった空の下、宿に向かって走っていく。

 すぐバテそうだし転んだりしないかも心配だったので、ラッドたちの様子を確かめることはせずに後を追った。




 宿に戻ると、俺たちはそれぞれの部屋へ荷物を置きに行った。

 そして楽な服装に着替えた後で一階の酒場にて合流。

 ここまで来てようやく外食のプランが自然消滅していることに気付く。


 俺もティナも色々と慌ててたからすっかり忘れてたな。

 あいつらが外食するか、そしていつ帰ってくるかもわからないのですぐに料理を注文した。

 客がそこまで多くないこともあってすぐにテーブルに届く。


 今日のことを振り返りながら楽しく食べていると、ラッドとロザリアが宿に入って来るのを発見。向こうもすぐにこちらに気が付いたみたいだ。


 しまったもうちょっと入り口から遠い席に座ればよかったか。

 別に何があったわけでもないけど、あれを見た後だと何となく顔を合わせづらいんだよな。


 そう考えていると、いつの間にかラッドがこちらに歩み寄って来ていた。


「やあ、もう戻っていたんだね。てっきり外食してくるものと思っていたのに」

「えええっ!? べべべ別に何もないから、ぜっ全然大丈夫だよ!? あはは」


 謎のテンションで割って入って来たティナに俺もラッドも驚く。

 見てみると、ティナは肉を使ってフォークを食べようとしていた。

 嘘を全然つけないティナ……いいな。


「あらあらティナちゃん、楽しいお肉と食器の使い方ですわね」


 ロザリアに優しく指摘されてティナは自分が何をしているかに気付いた。

 肉と食器の位置関係を通常のそれに戻してからティナが口を開く。


「そ、そうなの~あはは、何だか流行ってるらしくて。ね、ジン君」

「お、おう」


 突如話を振られたことに驚いたものの、何とかそう返した。

 するとロザリアがティナの元まで歩み寄って何やら耳打ちをした。ラッドも俺の近くにきて口を開く。


「後で今日のデートについて詳しく聞かせておくれよ」

「お前もな」


 そう言ってやると、ラッドは一瞬だけ目を見開いたもののあまり気にしていないようだった。

 まあいい、後でめちゃくちゃいじってやろう。


 どうやらラッドとロザリアは外食はしなかったらしく、結局四人揃ってわいわいといつも通りに楽しく飯を食う。

 客の入りが微妙でところどころに空席が見られる酒場は、空気まで閑散としているわけではなかった。

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