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女勇者が可愛すぎて、それだけで世界を救える気がしてきた。  作者: 偽モスコ先生
王都ミツメ編 前編 新たな出会いたち
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みんなでクエスト 後編

 鼻歌交じりに草原地帯を横切って行く。

 

 この辺りは人に踏み荒らされる事が少ないので、草花の背が街道沿いのものよりも高い。

 時折吹く少し強めの風に心地よさそうに揺れるそれらを眺めながら歩いた。


 そうしていると葉擦れの音に混じって聞き覚えのある声が耳に届いて来る。


「まあいけませんわラッド様! そんな格好がいいだけの魔法を無闇に使ってはMPがすぐに尽きてしまいます!」

「君の前だから格好をつけているんだ。わかっておくれ」

「そ、そんな。周りに誰もいないからって、いけませんわ……」


 うぜえ、誰かなんて確認するまでもない。

 少し離れたところにいるあいつらを無視して通り過ぎようとしたその時だった。


「あっ、ジンじゃないか。おーい!」


 ラッドが俺を見付けて手を振って来た。

 見付けんなっていうかその状況で話しかけてくんな。

 とはいえバレてしまったものはしょうがない。


 ため息をつきながら二人の下へ歩み寄っていく。

 案の定ロザリアは赤く染まった頬に両手をあて、やだわ今の見られてなかったかしらみたいな表情をしている。


 会話が出来る距離になると俺の方から口を開いた。


「ばらばらにやるんじゃなかったのかよ」

「いやそのつもりだったんだがね」

「ごめんなさい、わたくしのせいなのです」


 意外なタイミングで会話に割り込まれて少しだけ驚いた。

 見ればロザリアは先程とは一転して申し訳なさそうな表情をしている。


「ラッド様はいつも回復アイテムを持たないので、そろそろHPが尽きてしまわないかと心配だったのです。それで思わず様子を見に来てしまって……」


 真剣に弁解をするロザリアを見て逆にこっちが申し訳なくなって来た。

 ラッドも同様らしく、すぐさま追いかけるように口を開く。


「いや元はと言えば僕が悪い。だからロザリア、そんな顔をしないでおくれ」

「会話の一環で言っただけだからそんな気にすんなよ。それよりさっさとティナを探しに行こうぜ」


 そうしてどこか辛気臭い空気を振り払うように歩き出した。

 するとラッドが俺の横に並んで肩を組んだ。


「君はやはりいいやつだな! 仲良くなれてよかったよ」


 湿っぽい空気が嫌だっただけだよ。

 と、そんな事は口に出さずに草原を街道のある方向へと歩いて行った。


 クエスト開始地点では既にティナが待ち受けていた。

 合流するなりドヤ顔で俺たちに収穫物を見せてくれる。


「じゃーん! 見て、私一人でこれだけ集めたんだよっ」

「おお、すごいな。でもな俺も今日はこれだけ……」

「ふっ、僕たちだってこれぐらい……」

「「「「えっ」」」」


 全員の声が被った。一人一人が集め過ぎてしまったからだ。

 大量のアルミラージの角を見ながらティナが呟いた。


「これじゃクエストを二回くらい達成出来ちゃうね」

「違いない! でも無事にクリア出来たんだから良しとしようじゃないか」

「ふふっ、そうですわね」

「だな……」


 俺だけ同意の声が尻すぼみになってしまった。

 くそっ、ティナとの結婚計画が……。

 泣きたい気持ちを抑えつつおやつタイムに突入する事になった。


 おやつなんて歩きながらでも食べられるだろと言ったら全員から猛反発を受けてしまう。

 人があまり来ないような草原の片隅の木陰を選んで適当に布を敷いて座る。


 いつものように俺とティナ、向かいにラッドとロザリアのダブルカップル的な感じの席順。なんだけどぉ!?

 何だかティナの距離が近い。近いよな? これ。

 どうしたんだ急に、緊張するじゃねえか。


「あらあら」

「ほほう」


 ロザリアとラッドがニコニコしながら俺たちを見つめている。

 あらあらほほう? 何なのそのリアクション!

 ティナは少し赤くなりながら急いでおやつを取り出していく。


「ほ、ほらっ! 早く食べよっ」


 どうしていいかわからないのでなるべく考えないようにしたけど無理。

 まさかこんなに落ち着かないおやつタイムになるとは。


 二人共そこそこの量を持って来ているらしく、俺たちにも分けてくれた。

 ティナとロザリアはお互いにおやつを交換し合って盛り上がっているみたいだ。


「このアップルパイおいしい~どこで買ったの?」

「以前一緒にご飯を食べたお店のすぐ近くにありますのよ」

「へえ~じゃあまた今度一緒に行こっ」


 俺もティナとアップルパイを食べに行きてえな。

 そう思いながらおやつを味わっていく。

 しばらくして女の子二人組が落ち着くと、気になっていた事を尋ねてみた。


「そういやさ、ラッドとロザリアの職業ってなんなんだ?」

「よくぞ聞いてくれた!」


 聞かれるのを待っていたのか何なのか、ラッドが勢いよく立ち上がる。

 それから右手を前に出して芝居がかった仕草で言った。


「僕の名はラッド=クリスティン! 愛と勇気の魔法戦士さ!」

「なるほど魔法戦士な。ロザリアは?」


 俺の返しが早かったせいで何か言うタイミングを逃したのかもしれない。

 ロザリアはドヤ顔で固まっているラッドをちらちらと見ながら教えてくれた。


「私は僧侶ですわ」


 簡単に言えばラッドが火力、ロザリアが回復・支援と言うイメージか。

 狙ってもないのにすげーバランスのいいパーティーになってんな、俺たち。

 二人の職業を聞いて、ティナがぼそりと呟く。


「みんなすごいなあ。私なんてまだ冒険者なのに」

「そういえばそうだったな。勇者選定が終わった後にでも変えればいいだろ」

「職業ってどうやって変えるの?」


 あっ、しまった知らねえや。

 そう思ったけど返事をラッドがしてくれたので助かった。


「いくつかの街にある神殿で出来る。なんならみんなで一緒に行こうじゃないか、また僕が色々と教えてあげるよ」

「じゃあお願いしようかな」


 ティナに色々教えるポジションは俺がやりたかったんだけどな。

 これは天界の連中から知識を仕入れ忘れた俺のミスだ。

 またあいつらから職業についても聞いとかねえとな……。

 そう思いながら残りのおやつを平らげていった。


 その後はギルドに戻りアルミラージの角を渡してクエスト達成。

 打ち上げがてら四人で飯を食いに行く事になった。

 ギルドの出口へと向かう途中、冒険者らしきやつらの会話が耳に入って来る。


「金は出すって言ってんだろ! 本当に何もねえのか!」

「勘弁してくださいよ、あっしらだって必死に探りも入れてますが本当に何も掴めないんでやすよ」


 何の話だろうと思いながら扉を開けて外へ。

 通りを少し歩いてギルドから離れるとラッドが話しかけて来た。


「みんな勇者選定の情報をどうにかして集めようと躍起になっているみたいだね」「ああ、さっきの会話はそういう事だったのか」

「そうですわね。恐らくは冒険者と情報屋の会話かと」


 ロザリアの説明にティナが首を傾げる。


「情報屋?」

「情報を売ってお金を稼いでいる人たちの事ですわ」

「へえ、そんな人もいるんだね」

「大体は冒険者や商人が副業としてやっている事が多いみたいですわね。実際情報がないとどうにもならないクエストと言うのは早々ありませんし」


 そこで会話は一旦途切れた。

 少し時間が経ってからもしかして、とラッドが口を開く。


「課題の内容そのものもあるけど、みんなが躍起になっているのはパーティーで協力してやれるものかどうかという不安があるからなのかもしれないね」

「あっ……」


 思わず声が漏れてしまった。言われてみればそうだ。

 協力出来なくてこいつらと別行動となるとティナは寂しがるだろうな。

 それに、とラッドは続ける。


「むしろその可能性の方が高いと思わないかい? そもそも勇者と認められるのは一人だろうし。まあ、パーティーごと対象って事も無くはないだろうけれどね」

「そうなると私とジン君だって……」


 悲しそうな目でこちらを見るティナ。

 なーにを心配してんだか、この子は。

 右腕だけで軽くガッツポーズを作って言ってやった。


「ティナが勇者に選ばれたいってんなら、俺は全力でサポートするぜ?」

「本当に?」


 ティナが潤んだ目でこちらを見つめて来る。

 うっ、やばい。正気を保てなくなりそうだ。

 俺が視線をティナから外すと同時にロザリアが口を開いた。


「わたくしも、何があっても全力でラッド様をサポート致しますわ!」

「ありがとうロザリア。君にサポートをしてもらえるなら、僕は月でも手に入れる事が出来そうだよ」

「そんな、いけませんわ……みんなの前で……」

「別に月は要らねえだろ。どこに置いとくんだよ」


 素の可能性もあるけど、ラッドは動揺してるんだと思う。

 ラッドというやつはいつでも自信過剰で見栄っ張りに見えて、実は照れ屋で結構間抜けだってのがわかってきた。


 まあそんな事は正直どうでもいい。

 いつものやり取りを繰り広げる二人を置いて歩き出した。

 するとティナも慌ててついてくる。

 ふと見ると、その頬が赤く染まっていた。


 照れるティナもいいけど、あいつらのやり取りくらいには早く慣れた方がいいと思う。

 その後は特段変わったこともなく、いつものようにわいわいと飯を食って解散するとそれぞれの宿への帰路についた。

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