新たな仲間との出会い
ちょこちょこタイトルいじってて申し訳ないですm(__)m
ラッドとの戦いを終えた男はゆっくりとこちらを振り向いた。
その顔には不敵な笑みが浮かんでいる。
「さぁて待たせたな駆け出し冒険者君よ。逃げずに待ってたとは感心じゃねえか」
言われてみれば逃げればよかったんじゃね?
まあ今言っても仕方のない事だ。さて、どうするか。
勝つにしても自然に勝つのはかなり大変だ。
どちらかと言えばうまく負ける方法を考えた方が早いと思う。
ティナの前で負けるってのはちょっと嫌だけどこの際しょうがない。
ちらっと首だけで後ろを見た。
ティナはあわわ……とか言い出しそうな感じでおろおろとしている。
俺の視線に気づくと、申し訳なさそうに口を開いた。
「あの、ジン君……ごめんね、私のせいで。無理はしないでね」
「任せとけって」
そう言って親指を立てながら前に向き直った。
無理はしないで、か。
これ来た。ピーンと来たわ。
逆にド派手に負ければ好感度アップなんじゃないか?
私のために無理をしてくれたジン君、好き。みたいな。
気絶したら膝枕なんてしてもらえちゃったりして。
よしこれに決定だ。普通なら気絶するぜってくらいのド派手な負け方をする。
ちょうど後ろには建物があって、その周辺に人はいない。
殴られ吹き飛ばされた感じであの建物にぶつかって倒れればかなりそれっぽくなるはず。
俺はこんぼうで男を指しながら口を開いた。
「さあどこからでもいいぜ。かかってこいよ」
空いた左手で手招きなんかもしてみた。
効果は抜群で、男は怒りの形相でこちらに歩み寄って来る。
そして走り出しながら叫ぶように言った。
「本当に威勢だけはいいやつだなぁ! くらいやがれぇ!」
俺との距離がなくなった瞬間、男は拳を一気に振りぬく。
拳が腹に触れるか触れないかのところで足の裏に力を込めて後ろに跳んだ。
……つもりだったんだけど加減を間違えたらしい。
俺の身体はまるで矢の様にほぼ水平で後ろに飛んでいく。
轟音。
勢いもすごく、突撃した建物が跡形もなく崩壊してしまった。
この場にいる全ての人間から声があがる。
「「「「ええええっっっっ!!??」」」」
崩壊の派手な音と共に周囲には土煙が舞い上がり、俺は建物の残骸の中に仰向けで埋もれる形になった。
群衆からは歓声と悲鳴が乱れ飛んでいる。
その合間を縫って天使の声が聞こえて来た。
「ジン君!!!!」
一つの足音がテンポよくこちらに近付いて来る。
ティナが俺の元に駆け寄ってくれているのだろう。
予定よりも随分と派手になり過ぎたけど、まあいい。
このままじっとしていれば膝枕コースまっしぐらだ。
いつも似た様な失敗をしている気もするけど今回は大丈夫なはず。
足音が俺の前まで来て止まった。
身体の上にある瓦礫が取り除かれると、柔らかくて華奢な腕が俺の肩を掴んだ。
そして……。
「ジン君! ジン君! しっかりして!」
地震が来たかと思うくらいに俺の身体が揺れ始めた。
ちょちょっ……ティナちゃん待っ……うおお……。
膝枕ゲット作戦を急遽中止した俺はゆっくりと目を開けてみた。
今気が付きましたよ~的なそんな感じだ。
目を開けるとそこには目尻に涙をためたティナの顔があった。
「気がついたんだね……良かった」
言葉と共に涙が目から溢れてティナの頬をつたう。
いやいや俺泣かしちゃってるやん。最低やん。
罪悪感半端ねえ……すいませんもう二度とやりません。
身体を起こして荒くれ者を見るとめちゃくちゃ動揺している。
「どっ、どうだ参ったかこらぁ! 俺の拳はすげーだろぉ!?」
あたふたと群衆に向かって力量自慢をしているものの、見た感じあまり好意的な視線はもらえていない。
どうやら「やり過ぎ」と思われているみたいだ。
「こらぁ! 何をやっとるか!」
「げえ、やべっ!」
騒ぎを聞きつけて衛兵までやって来てしまった。
音も見た目もド派手だったからそうなるわな。
その後荒くれ者冒険者二人は逃走を図るも衛兵に捕まった。
俺とティナ、ラッドとロザリアもその場で事情を聞かれる事に。
衛兵は崩壊した建物の再建費用は男たちに出させると言っていた。
何にせようまく収まってラッキーだ。一件落着。
ティナと二人でその場を後にしようとすると、ラッドが声をかけて来た。
もちろん横にはロザリアもいる。
「やあ君たち、災難だったね」
「いやあんたの方が災難だっただろ」
「どう見てもジン君の方が災難だったよ?」
苦笑しながらのツッコミがティナから入った。
そうか、みんなから見れば俺もワンパンKOって事になるもんな。
ティナが申し訳なさそうにラッドたちに向かって腰を折った。
「あの、私のせいなのに出て来て下さってありがとうございました」
「なに、気にする事はないさ」
「そうですわ。ラッド様は見栄を張りたかっただけなんですから」
「ロザリア、今回くらいは格好をつけさせてくれてもいいんじゃないのかい?」
そこでみんなで顔を見合わせて笑った。
まあ正直めっちゃださかったけど悪いやつじゃないのは確かだな。
観衆には冒険者もたくさんいたけど全員見て見ぬフリしてたし。
どんな理由や姿勢であれ、自分より強いやつに立ち向かうってのは勇気のいる事だと思う。
今度からは俺ももっと果敢にゼウスのじいさんをぶっ飛ばして行こう。
ラッドとロザリアは俺たちと同じくこの街を拠点にしている冒険者らしい。
自己紹介を含めて少し雑談をした後、ラッドがある提案をして来た。
「これからみんなで食事でもどうだい? 僕におごらせてくれよ」
「お食事は嬉しいけど……おごってもらうなんて」
ラッドとロザリアの要望でティナは既にため口だ。
ロザリアが会話に割り込んで来た。
「大丈夫ですよ。素直に見栄を張らせてあげてください」
「そういう事ならよ、せっかくだしお言葉に甘えようぜ」
ティナが悩んでる様子なので背中を押してみる。
実際これは俺にとってもかなり有難い申し入れだ。
俺は自分の金をあまり自由に使えない。
金を大量に持っていると「偽装」しているレベル的に不自然だからな。
これでティナに自然に美味いものを食わせてやれる。
ティナはしばらく悩んでいたけど心を決めたらしい。
「う~ん、じゃあそうしよっかな」
「よし決まりだね。近くに美味しいお店があるんだ」
こうして一緒に飯を食う事になり、ラッドの案内で歩き出した。
俺とラッドが前、ティナとロザリアが後ろという布陣だ。
「あちらにも美味しいお店があるんですのよ」
「へえ~! 今度行ってみたいなぁ」
キャッキャ、と黄色い声が俺の後ろを飛び交っている。
思わずちらと振り返ってみると、ティナはとても楽しそうだった。
一羽のヒナが親元を巣立っていく……。
これは多分そういう寂しさなんだと思う。
友達が出来ても俺の事は忘れないで欲しいな。
と、そんな感傷的な気分に浸っている時だった。
後ろを気にする俺を見逃す事なくラッドが絡んで来た。
慣れ慣れしく肩に腕を回して声を潜めている。
「ところで君、ティナとはどこまでいってるんだい?」
「なっ……どっ、どこまでって」
動揺してしまった。本当にみんな好きっていうか。
同性同士で集まると大体こういう話になるよな。
「付き合ってるのかい?」
「つ、つ、付き合っては、ないけど」
「という事は片思い、といったところかな?」
こいつ弱いくせに妙に鋭いのはなんでなんだ。
俺が分かりやすかったりするのか?
とにかくこの場で嘘をついてもしょうがない。本当の事を言おう。
「まあそんな感じだ」
「ふふふ、いいねえ。それじゃ僕が今後君に協力してあげよう」
「本当か?」
「ああ。どうやったらティナと付き合えるのか色々と教えてあげるよ」
何だこいつめっちゃいいやつじゃん。飯もおごってくれるし。
ただキザなだけの痛々しいやつかと思ってたぜ。
ラッドは気を良くした感じでどんどん言葉を重ねる。
「困ったことがあったら何でも僕を頼ってくれたまえ」
「そうさせてもらうぜ。お前いいやつだな!」
ラッドの鼻がめっちゃ高くなる幻覚を見た気がした。
見栄っ張りなところといい、おだててやると喜ぶタイプなのかも。
まあいずれにせよ悪いやつじゃない。
キザで見栄っ張りで弱っちいけどどこか憎めない。
下界で初めて出来た友達は、俺の中ではそういう印象だった。




