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女勇者が可愛すぎて、それだけで世界を救える気がしてきた。  作者: 偽モスコ先生
ツギノ町編 第二章 色んなやつら、襲来
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よーそろー!

「ジン君、おはよう」

「おう。ティナおはよう」


 未だに慣れない、朝から突然のエンジェル。

 寝起きとエンジェル効果で二重にぼーっとした頭で洗面所に入る。

 ティナの後に顔を洗って部屋に戻った。


 早い時間という事もあり、酒場兼食堂にいる客はまばらだ。

 宿泊客以外の利用者はいないんだから当然と言えば当然か。


 いつも通りに料理を注文してテーブルにつく。

 程なくしてティナがやって来た。

 

 料理を注文するティナは、どこか力が入ってる様に見える。

 こちらに歩いて来る時も勇み足だ。

 そんなティナがテーブルに座りながら口を開いた。


「いよいよ今日はゴブリン討伐だねっ!」

「おう。張り切ってるな」


 まあゴブリン討伐と決まったわけじゃないんだけどな。

 もちろんそんな無粋な事は言わない。

 やる気をみなぎらせたティナの瞳は輝いている。


 そんな様子を見ると何だか心配になってくるので、軽く釘を刺しておく。


「一対一なら勝てると思うから、囲まれたりしない様に気を付けろよ。油断だけは絶対にしちゃだめだからな」

「はいっ! 師匠!」


 どこで覚えたのか、びしっと敬礼のポーズで返事をするティナ。

 可愛いのでここはノッておこう。

 腕を組んで頷きながらそれに返答をした。


「うむ、いい返事だ。これからも頑張りなさい」

「はいっ! ありがとうございますっ!」


 そんな茶番をしていると飯が運ばれて来た。

 何だかティナの飯の量が妙に多い。


「ティナ、今日は気合入ってんな」

「はいっ! 大きな戦いの前にたくさん食べておこうと思いましたっ!」


 まだ茶番は続いていたらしい。

 大きな戦いってのはもしかしなくてもゴブリンとの戦いの事か。

 今日はクエストを受けずにただのゴブリン狩りに変更しようかな。


 討伐対象にゴブリンがいないクエストを受けた時にティナががっかりしない様、茶番にノッたまま釘を刺しておく。


「いいかティナ。討伐クエストの対象になるのはゴブリンだけとは限らない。その事を忘れるな」

「はいっ! スライムもいますっ!」


 アルミラージというモンスターの事は知らないらしい。

 ティナは飯が到着してからもずっと敬礼のポーズになっている。


 今なら告白しても「わかりました!」ってオッケーしてくれるかな。

 まあしないってか出来ないんだけどな。


 気付けばティナは敬礼のポーズのまま、じ~っと飯を見つめている。

 まさか俺の号令待ち……?


「よし! それでは食事始めっ!」

「よーそろー!」


 そのまさかだったらしい。

 ティナはどこで覚えたのかよくわからない言葉を発しながら飯を食べ始めた。

 勢いのある返事とは対照的に、ティナの食べるペースはゆっくりだ。

 

 ゆっくりというか、急いで食べてるんだけど一回一回の量が少ない。

 だから小動物が頑張って餌をちびちび食べてるみたいになってて非常にいい。

 そんなティナに癒されながら、俺も飯にありついた。




「う~、ちょっと食べすぎちゃったかも……」

「ティナにしちゃちょっと多かったな」


 お腹をさすりながら歩くティナ。

 俺はそれを横目に見ながら苦笑した。

 飯を食べ終えた俺たちは、大通りをギルドに向かって歩いている。


 ティナは、お腹をさすったままで続けた。


「こんなのでゴブリン、倒せるかなぁ」

「無理する必要はないだろ。なんならまた薬草採取とかでもいいし」

「うん……」


 本当にそう思う。

 とはいえ、ゴブリンを倒したいというのがティナの本心だろう。

 ティナはまたソフィア様こんぼうを取り出して眺めている。

 

 俺は二人でのんびりと過ごせればそれでいい。

 でも、ティナがやりたい事をサポートしたいというのもまた本心。

 ちょうどいいクエがあればいいけどな……。


 そう思いながら歩いていると、ソフィア様の看板が見えて来た。

 ギルドに到着。扉を開けて中に入る。


 営業が始まって間もないこの時間はクエストの受諾ラッシュ。

 今日も人でごった返していた。


 ティナと二人でクエストが張り出されているスペースに向かう。

 人混みをかき分けて進みながらも時折後ろを振り返り、ティナと離れていないかを確認する。

 やがて人混みが晴れ、一面にクエストが張られた壁の前に到着した。


「さて、今日はどんなクエストがあるかなっと」

 

 横にいるティナに話しかけながらクエストを目で一つずつ追っていく。

 ティナも熱心に探している様で、返事は来ない。


 それにしても、こうして見ると色んなクエストがあるんだな……。

 首都ミツメや近隣の村へ行く商人の護衛。

 どくけしそうや回復系アイテムを調合する為の材料の採取。

 モンスターの牙や爪を収集するなんてものもあった。


 モンスターを倒すと、一定の確率で何かをドロップする事がある。

 それは牙や爪、角やらの身体の一部だったり、ぬののふくなどの身に着けている装備やアイテムだったり。

 

 ただドロップはあくまで確率だから、収集クエストは討伐や採取よりも効率の悪いクエストって事になるだろうな。

 ティナにはしばらくおすすめの出来ない系統だ。


 そんな事を考えていると、横から声をかけられる。


「あっ。ねえねえジン君、このクエストはどうかな?」


 壁の一点をティナが指差した。

 視線だけでそれを追ってクエストを確認する。


 近隣の村でスライムが大量に発生したらしい。

 スライムに紛れてゴブリンもそこそこの量がいるみたいだ。

 ゴブリンも多いというのがちょっと危険だけど、それさえ気を付けていれば今のティナには最適のクエストかもしれない。


 軽く頷いてから返事をした。


「うん。いいんじゃないか?」

「決まりだね。じゃあ受けて来るから待っててっ」


 クエストの書かれた紙を勢いよく壁から剥がすと、ティナはぎりぎりスキップにならないような足取りで受付に向かった。

 そんな様子にほっこりしながら、ゆっくりとティナの後を追いかける。


 受付を済ませたティナは、笑顔でこちらに駆け寄って来た。


「受けて来たよ!」

「おう、気合い入ってるな」

「早くゴブリンを倒せるようになりたいからね!」


 何でそんなにゴブリンにこだわるんだろう。

 ハジメ村で生まれ育ったティナにとっては、大きな一つの目標的なモンスターになっているのだろうか。

 このクエストをこなせば少しは自信をつけてくれるかもしれないな。


 とにかくクエストの受諾は完了した。

 次にパーティー結成用の台座でパーティーを結成。

 もちろんリーダーはティナだ。


 ここまでの作業が完了すると、ティナはこちらを向いて腰を折る。


「今日もよろしくお願いしますっ」

「ああ。こちらこそよろしくな」


 俺も同じく腰を折って返した。

 ティナ相手なら毎回こんなくだらない儀式をやるのも悪くないな。

 そう思いながら、俺たちはギルドを後にした。


 大通りに出ると地図を広げて、ティナがクエストの目的地を確認する。

 ティナの持っている地図は二種類あって、一つは昨日買い物の時に使ったツギノ町の全体を簡単に描いたもの。

 もう一つは、ツギノ町の周辺一帯を描いたフィールド用のものだ。


 ティナ曰く、ツギノ町やその周辺の村々では、フィールド用の地図はどこもツギノ町を中心にしたものしか置いていないらしい。

 まあそれぞれの村を中心にした地図なんてあまり需要はないだろうし、当然と言えば当然なのかもしれない。


「え~っと……あっ、ここだね」


 ティナが地図の一点を指差して言った。

 それを横から覗き込む。


「おう、そうだな。それじゃ行くか」


 ティナが地図をしまうのを待って、二人並んで歩き出す。

 途中、やくそうの絵が描かれた看板が目に入る。

 それを指差してティナに声をかけた。


「ちょっと寄って行こうぜ」

「そう言えばやくそうの手持ちが少なかったかも……さすがジン君」


 万が一ティナが危険になった時のためにやくそうを買っておこうと思い立っただけなんだけど、褒められてしまった。

 他にどくけしそうとかも買っておいた方がいいかな。


「いらっしゃいませ~」


 扉を開けて中に入ると、気の抜けた声が俺たちを出迎えてくれた。

 カウンターには黒いローブのフードから緑色のふわふわな髪の毛が覗くおっとりした感じの女性店員がいる。


 店内を見渡すとたくさんの回復アイテムが目に飛び込んで来る。

 どうやらやくそう、どくけしそう、まんげつそう辺りがラインナップの中心になっているみたいだ。


「う~ん、予算的にこれくらいかなあ」


 ティナは数本のやくそうを手に取ってそれを見つめている。

 毒や麻痺の状態異常にかけて来るモンスターとは遭遇した事がないのか、他のアイテムには目もくれていない。

 

 一方で俺は特に悩む必要もない。

 片手一杯にやくそうを持ち、もう片方の手にその半分ずつの量のどくけしそうとを持ってさっさとカウンターへ。

 本当はまだ全然買えるんだけど、あまり金を使いすぎると不自然だ。

 ティナにとっての俺は「少しだけ自分よりもレベルの高い冒険者」なんだから、あまりお金は持っていない設定にしておかないと。


 会計を済ませると、ティナも入れ違いでカウンターへ。

 そのまま俺のところに寄って来て言った。


「お待たせ」


 この台詞いいよな。

 思わず「今来たところだから大丈夫」とか言ってしまいそうだ。

 そんな事を考えながら店を後にした。

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