20年先ならばアルミの箱だっただろうか
(増えてる…)
戻りながら見える騎馬は数を増やし3騎になっていた。
援軍だろうか。
先頭の騎乗者がこちらの姿をみとめると、後方の2騎が道に立ち塞がるように歩みを止める。
その手前で俺が停車すると、リーダーと思われる者―――先頭だった騎乗者―――が馬を降り、運転席側の窓ガラスをノックしてきた。
「なんでしょうか?」
アニソンがかけっぱなしになっていたオーディオをOFFにし、手首まで入るか入らないか程度まで窓を開けて問いかける。
とりあえず日本語で話したが、通じるだろうか?
「失礼ながら、あなた様はコーゾー様の御令息でしょうか?」
「は?」
日本語が通じるという驚きよりも、いきなり出てきた全く知らない人物の名前に対する疑問の方が大きく、理解が追い付かない。
「コーゾー=オリハラ様の御令息かと思ったのですが、違いましたでしょうか?」
名前からして日本人ではあるのだろうが、生憎、俺にそのような親はいないし、親戚どころか知人にもいない。
「そうでしたか。それは失礼いたしました。」
聞けば、コーゾー=オリハラなる人物は、約40年前、突如として走る鉄の箱―――十中八九自動車のことだろう―――に乗って現れ、運送業で財を成して引退後は町を興し、3年ほど前に老衰で亡くなったのだという。
なんとも偉大な功績を残した人だが、こうして今、俺が再び走る鉄の箱に乗って現れたものだから、息子なのではないかと考えた。というものらしい。
最初に逃げたこともどうやらお咎めはないようで、むしろ友好的に町へ招待してくれるという。
何でも、この先の町が件のコーゾーさんが興した町で、そこに住む人は皆、コーゾーさんの元部下だったらしい。
この話が本当かはわからないが、そもそも食料などの供給もとが無い今、選択肢などなく、最低限の警戒はしつつも、俺はこの人たちに着いていくことにした。