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車内が一番快適だ  作者: クレヨン
プロローグ
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プロローグ

宝くじが当たった。

5000万円だ。

一生働かずに食っていける額ではないが大金であることは確かである。

まして、大学3年生の中島隆行()には、その価値は計り知れない。

手に入れた大金の1割を使って、(かね)てより欲しかったマイカーを、それも国産の高級セダンを購入した俺は、今日、大学生のクソ長い夏休みを使ってドライブ旅行に出かける。




出発を9月まで遅らせたのは正解だった。

社会人はお盆だけ、高校生以下は8月末までの夏休み。

何故だか大学生には9月中旬まであるが、そのおかげで世間様が働いている今、大学生の俺はガラガラの高速を休日ドライブできるのである。





「さて、そろそろ行くか。」


関越自動車道下り線、谷川岳PAでトイレ休憩を済ませた俺は、輝くホワイトパールの愛車に乗り込み、関越トンネルに差し掛かる。




お気に入りのアニソンをBGMに、ひたすら長いトンネルを走行中だった俺は、突然大きくハンドルを取られた。

緊急地震速報のアラームが、遅れて騒ぎ出す。

一定距離ごとに設置されているトンネル内信号も赤に変わり、電光掲示板が端に寄って停車するよう呼び掛ける。

ハンドルを取られ、壁にぶつからないようにするのが精一杯の状況で、急なブレーキは制御を失いかねない。

幸いなのは、世間は夏休み明けで車が少なかったことだろう。

俺はゆっくりと減速を開始した。




「おわっ!?」

遥か前方で天井の案内板が落下し、次いで天井が崩落した。

速度は未だ60km/hを切ったばかり、更に悪いことに、崩落範囲は勢いよく拡がり、こちらへ近づいてくる。

急ブレーキに急ハンドルで案の定制御を失った。

ABSも横滑り防止装置も焼石に水。

高級セダンの十全な安全装備と言えど、これほどまでに大きな負荷には耐えられなかった。


景色がスローモーションになる。

スピンする車内からは、運転席が前を向く度、近づいてくる崩落した瓦礫が見える。


(死ぬのか…もうちょっとゆっくり休憩してれば良かったな。)


そして瓦礫が目前に迫り、次の瞬間にはぶつかるというところで、車は瓦礫をすり抜けた。

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