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極東のメイガス  作者:
序章 『芦屋楓』
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序章 『芦屋楓 ②』

 授業の終わり。それは一日の始まりでもある。放課後はアルバイトに精を出す者もあれば、部活動に勤しむ者もある。自分はそのどちらにも当て嵌まらない────芦屋楓にとっては、ある意味ここからが一日の始まりである。帰宅するやいなや、早速『芦屋』としての仕事の準備にかかる。


 ────『芦屋』の家は現代社会から淘汰されたはずの存在、現代科学の基礎とも言える錬金術からさらに一歩、奇跡や呪いの側に傾倒した異端者たち。すなわち『魔術』を扱うメイガスの家系だ。

 メイガスとしての芦屋は特に高速もしくは圧縮詠唱技術に優れた実戦派の家系であり、非常に火力の高い、ゴリゴリの武闘派魔術家系である。圧倒的な速さで展開される超火力の魔術弾幕による制圧戦はもちろん、肉弾戦もバリバリこなせる家系なのだ。そんな現代のメイガス芦屋家の仕事は何かというと。


「楓ちゃん、いつもありがとうねぇ。毎日毎日お社のお掃除、ほんとにありがたいわぁ」


 ────神社の掃除である。


「良いんですよおばあちゃん。毎回いろいろご馳走になっちゃってるし、なんでも言ってください」


 無論、メイガス的に意味が無い訳ではない。神社のお社、祠といった『悪いモノが吹き溜まりやすい場所』というのは現代においてもそう珍しくはない。定期的にメイガスが手を加える事で、そうした悪いモノを『掃除』する。それこそが芦屋楓の、現在の芦屋家の仕事である。

 生前、母はよく「土地や部屋、建物の乱れは人心の乱れでもあり、僅かだからと見逃せば、やがて大きな乱れになる」と言っていた。一人の母親として、同時に一人のメイガスとして、母は常に心のあり方を教えてくれていた。

 その結果、放課後はこうしてボランティア活動に精を出す事になっているというわけである。芦屋を継いだ日からの、変わることの無い習慣、変わることの無い生活。それが芦屋楓の生き方。友人を作らず、遊ばず、メイガスとしての仕事を続け、一日を使い切る。それが全て。それで全て。

 ……だからだろうか。時々、同級生が楽しそうに笑っている姿を見ると、寂しさを感じるのは。

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