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その年の冬は、とても暖かでした。
おばあさんはフジと一緒に、いろんな場所へ出かけました。
フジは寒い場所が苦手なので、おばあさんのマフラーの中にすっぽりと収まり、きょろきょろとあちこちを見回しています。
おばあさんはいろんな所で、いろんな人とおしゃべりしました。
フジも、よく話しました。
おばあさんもフジも、他の人と楽しくおしゃべりするのは初めてでした。
「ハルチャン、ハルチャン」
「なあに、フジ」
マフラーの中で、フジが言います。
「タノシイ。ダイスキ」
「……そうだねえ。ありがとう、フジ」
おばあさんはマフラーの中のフジに、そっと笑いました。
春は一緒に、ピンク色の桜を見に行きました。
夏は一緒に、青色の空と海を見に行きました。
秋は一緒に、赤色のもみじを見に行きました。
冬は一緒に、白色の雪景色を見に行きました。
ずっとずっと、一緒です。
ひとりぼっちでは、ありませんでした。




