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その日からおばあさんは、自分の健康に気をつけるようになりました。自分が体調を崩すと、フジにも影響が出てしまうからです。
おばあさんは本屋へ行くと、『長生きするためのお食事』という本を買い、その料理を作って食べました。料理をするのが楽しい、食べ物がおいしいと感じたのは、久しぶりでした。
フジは、いつもよりおいしいそうに、えさを食べるようになりました。小食だったはずが、いつの間にか食欲旺盛になっていました。
おばあさんは、自分もフジも、大切にするようになりました。
おばあさんは、おひさまの光を浴びたお布団で、よく眠るようになりました。
フジも、ぐっすりと眠るようになりました。小さかった体は、少しだけ大きくなりました。
おばあさんは、フジに笑いかけるようになりました。笑うのは久しぶりで、最初は頬がひきつったような笑みしか浮かべることができませんでした。
それでも、その笑顔を見たフジは、「ぴいぴい」と鳴きました。それからというもの、フジはよく鳴くようになりました。
おばあさんは、フジの体をなでるようになりました。フジの体はとても柔らかく、ふわふわとしています。
なでられている間、フジはうっとりと目を閉じていました。そうして、おばあさんの手や肩に乗るようになりました。
おばあさんは、フジに話しかけるようになりました。
「フジ」
フジは首をかしげ、くちばしを開きました。
「ハルチャン」
フジは何故か、おばあさんの名前を知っていました。
おばあさんは楽しくて、嬉しくて、笑いました。