幼なじみの好きな人
帰り道、早速スーパーに寄ってチョコレートと生クリームを購入。
ちょっと悩んで、いちごも買ってみました。溶かして、つけたら美味しいと思うの。
チョコレートフォンデュってやつ?流行りのアレです。自分のおやつにやってみます!
買い物を終えて、家に向かいます。おやつ、おやつっ♪
「よぉ、まなじゃん」
うわぁ。タイミングの悪い。こんなとこで!
「しょーた!もう部活終わったの?」
「もうって・・・5時だけど。今日は昼からだったからさ」
「そっかー」
翔太は陸上部です。焼けてて背が高くて、走るのが凄く速い。
幼なじみながら、凄いヤツなのです。ちょっと尊敬。
「まなこそ何してんの、こんな時間に」
聞くな!
内心苦笑い。ここはなんとか回避せねば。
「か、買い物だよっ!!」
「チョコ?何か作るの?」
気が付くなばかぁぁあ!
翔太は袋を覗くようにしてニヤリと笑っています。白い歯が眩しい・・・って、いけない、いけない。なんとかごまかさなくちゃっ。
「あたしのおやつだもん。お腹すいちゃって」
「ふーん。バレンタインになんか作るのかと思った」
「あたしが料理能力皆無なの知ってるクセにぃ」
ぷくりと頬を膨らませてやります。
小学校の時に遠足で作った卵焼きをまずいと言われたこと、忘れてないんだぞぉ。
「そうだったなあ」
翔太はけらけらと笑いました。爽やかなのには救われます。ここで意地悪だったら泣いてたかも。
「そういえば、しょーたは毎年沢山もらってるよねぇ」
「運動部なんてみんなそんなものだって」
なんだと、このモテ男め~・・・。でも、翔太に彼女がいたことはないんです。告白されてるの何回かみたことあるんだけど、部活に集中したいからって全部断ってるみたい。
「好きなコからも貰えるんじゃないの?好きな人、いる?」
ちょっと探ってみよっと。一応、幼なじみだもん。気になるし。
「好きなコはいるよ。けど貰えたことないんだよね」
いるんだ、好きな人。
聞いておいて、わたしはすこし恥ずかしくなってしまいました。
翔太が好きな人。誰だろう?
「その人付き合ってる人でもいるの?」
「いないと思う。見たことないから、そういうとこ。バレンタインも女子以外に渡してるの見たことないからな」
そうなんだ?知ってるってことは・・・
「ずっと見張ってるの?ストーカー?」
翔太は苦笑いして頭をかいている。これは彼が恥ずかしがっているときにする仕種。
長年一緒にいると、そういうことがわかってくるんだなあ。えへん。
「だって気になるじゃん?好きなコが好きな人。いるのに告白したら恥ずかしいヤツだしさぁ」
まぁ、そうだよね。
「しないの?告白」
「しないつもり。今したら遠距離になるからな」
「そっか」
翔太は春に引っ越してしまう。もし想いが叶ったとしても、会えなくなっちゃうもんね。
それはきっと辛いはず。
「だから今年はチョコ欲しいな~」
「いっぱいもらえるんだからいいじゃない」
「沢山あっても、好きなコじゃなきゃ嬉しくないし。好きなコからならなんでもいい。一口でも嬉しいって」
好きな人からじゃなきゃ嬉しくない、か。そっか。
じゃあ、わたしの『お礼』は迷惑なのかな。
「作るのも大変だけど、貰う方もいろいろあるんだねぇ」
「まぁな。まなも今年こそは頑張れよー」
「う、うるさいなあっ?今年こそちゃんと・・・」
「去年、友達にソフトボールチョコ渡してたろ」
きゃー?!
「なんで知ってるのよっ!」
「幼なじみだもんよー」
翔太、にやにや笑いです。うぅ・・・。
チョコレート作るのやっぱりやめようかなぁ。
最後に笑われるのは嫌だよ・・・。
「じゃ、またなー」
いつの間にか家に着いて、翔太は向かいのドアへ消えてしまいました。




