小説家になれない俺は竜に乗る〜〜サボタージュ〜〜
ぜーったい、成れない職業ランキングの上の方に『モノカキ』はある。
たとえば、俺には既に文学賞の公募に落ちた落選作があるのだ。
それが『モノカキ』に成れない証だ。
創作方法論の先生(現役作家)のとある御方がそれを俺に大学の授業で教えてくれた。
☆
「次の質問、は……、あぁ、またですね、私が小説家になろうと思ったきっかけ、ですよね……? えっと、前にも話しましたが、きっかけは無くてですね、なんとなく賞に応募したら1回で取れたので、これはいけるな、と思ったらするすると進んで今もこうして書いている次第です……えっと次の質問……」
……せんせーさま。
参考になり過ぎました。
え、もう既に落選作がある俺じゃダメって事じゃん。
成れねぇんじゃん、俺。
小説家に。
「はぁ、プロットをですね、ですから、教えた通りに立てまして」
まってくれよ、センセイさま。
プロットなし、即興! の俺じゃ無理じゃね?!
うわぁ、どうしよう、高校の文芸部より何も身につかない感じだぞこの授業……。
「で、謎を残すんですね、えーと、大体9割の読者がこう読みまして、10%がここにいきます、で、その上で1%の読者が……」
おいおいおいおい、数学じゃん!!
すうがくがでてきたぞ、やべぇ、俺、感覚でしかわかんねぇのに。理論とか出してきてるぞこのセンセイさまは。
俺、簡単な『さんすう』もできないのにさ。
あれぇ??!!
やばくね? 無理じゃね?
「えーと、質問は以上で、私の本を開いてください、3章から……」
そして俺の書いた質問、読んでも貰えなかったぞ……!!!
……これは流石に授業取ってる意味と時間が勿体無いんじゃないか?!
先生の執筆なさった高額なご本は、何も間違ったところが見当たらなかった。そして、けっこう、売れていた。
「……うっわ、どうしよ、つまんねー……」
まぁ、全部正しかった。
理論として、成功例として、この先生はなんの問題点もなく、傷もなく、何より事実、ウレテイル。
「やーっぱ、俺なんかが書いたものは、少なくともコレが売れるてるような世の中じゃあ誰もよまないよなぁ」
俺は席を立った。
先生は自身の背面にある白のボードに何かデータを書き付けていて、俺の方へは振り向かなかった。
「……じゃーな、モノカキ」
バイバイ、純文学。ショーセツカ。
俺は俺で行くわ。
……ウレテル先生の本より、俺には俺の落選作の方が、楽しく面白く読めた。
でも、それじゃ『独りよがり』らしい。
フツーにウレル作を量産すんのが、ちゃんとした職業としてのモノカキなんだ、と改めて俺はこの授業で思い知らされた。
つまんねーのが、ウレルんだよな?
俺は下手くそでツマンネーやつ、って事になる訳だ。
かなしいけど俺って使えないのね。
……俺に才能がまるで無いことを、俺と俺の書いたものが、ケラケラと笑い出し、手を叩いて囃し立て、俺を現代小説・創作方法論の授業の教室から連れ出そうとしていた。
俺は、そうだよな……
ノるぜ、俺の好きなモノの方に乗っかっていく。
俺は何処か遠くで、龍鱗が水を集めて閃くのを感じていた。
「これ、こら、そこのきみ、まだ授業中ですよ!」
やっと振り向いた先生様が何か仰有っておられる。
「せんせー、俺、数字より竜に乗りてーから、もうこの授業いいわ」
俺、落ちこぼれの竜のが良いわ。
『……君が受けたくて選んだ授業でしょう』
先生様では無い声が、一瞬あたまに振ってきた。
俺はにぃっかし、と笑う。
「いーんだ、単位なら足りてるし! つまんねー算数より、遊びにいこーぜ、一発賞を当てるより、楽しい遊びの方にいきてーもん、オレ」
……俺は国語学者になるね。
フィールドワークが面白そーだったし。方言分布、実際のとこ、聴いてまわりてーし。
文学科じゃねぇ、俺は向いてねぇ。
国語学へすすもう。
生徒たちが俺をぽかーんと見てくる。
「俺についてきて後悔しねーやつは一緒に遊びにいこーぜ、書きてーやつは、ちゃんと学んどけ。偉い先生なんだし授業料もキョーカショも安くねぇんだから」
俺の背中に追い風が来るのを感じた。
俺は自由だ。
他のやつらも自由にしたらいい。
「うーし、行くわ」
名前も知らない、年もバラバラなもの好きが数人、俺の背中に駆け寄ってくる気配がした。
「じゃあな! ぶんがく! ショーセツカ!!」
俺は走り出す。
いろんなものを、追い抜きながら。
沢山学んだものを置き去りにして。
☆
なぁ、オマエはどっちにいたいんだ?
キメなよ!!
そんじゃ、な!!!
私は教室に残った人です。




