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家族と共に殺されかけた少女、妖魔と契約して祓い師として立つ  作者: あるる


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8/12

第8話

 クロ兄と2人でざっとこの離れにある蔵書を、妖魔の能力も使って調べるとこの地域の伝説、昔話だけでなく古い手記などまであった。また、この地域以外の神話や土地神などの話も多いが、贄と神との関係などに特化しているのが見えた。この土地、伊津那いづなの神は贄、人柱を望む神なのだろうと推測できる。

 それ以外は広く浅く様々な分野の蔵書も多々あったが、それぞれの地域にまつわる話に興味があるのは明確だった。


「やっぱりこの手記が一番手がかりになりそうかな。嘉永3年って事は江戸時代よね? その時代でこの綺麗な状態の手記が残ってるなんて凄いわね」

「ああ、紙も上等だ。やはり長くこの家は栄えているんだろうぜ」


 改めて古い紐でとじられた本に触れると、しっかりとした和紙の厚みと多少色あせても美しい染めが時代を感じさせつつも、ちゃんと管理され、状態も非常に良い。虫食いもない。

 洋書タイプの書籍もしっかりとした装丁がしてあり、資料としても貴重なもののようなので、丁寧に扱わないとまずそうだ。と言うのに、クロ兄は割とぽんぽん置くし!弁償できんぞ!!と内心ちょっと冷や汗。

 

「これとこの地域の風土記を借りて帰りましょう」

「そうだな、二冊くらいがいいだろう」


 内容を精査したいけど、ここにずっと居るのはセキュリティ的に、敵に居場所を知られる可能性が上がるため、八重子夫人にも迷惑かけるのでよろしくない。何よりもう日も落ちかけて暗くなって来ていたので、クロ兄とお借りする本を確認してお暇することにした。


「長時間お邪魔してしまい、すみませんでした。貴重な数々の本を拝見させていただいてとても勉強になりました!」

「どういたしまして。私もお若い方々とお話しできてとても楽しかったわ。……ねえ、1つお願いしてもいいかしら?」

「はい、私たちにできることでしたら!」

「ふふ、難しいことではないわ。週に1度くらい遊びに来てくださらないかしら?今この家に一人でしょう、たまに人恋しくなってしまうのよ」

「っ!! ご迷惑でなければ、ぜひ! あ、あの、まだ読ませていただきたい本もいっぱいありまして」


 下心満載だった私に優しい提案を下さる八重子夫人に申し訳ないやら嬉しいやらで照れてしまうと、夫人は優しく手に触れてくださった。


「ええ、その本も持って行ってくれていいわ。その代わり来週はお茶もしましょうね」

「はい!」

「お兄様には軽食かしら?」

「いえ、そこまでお気遣いいただくのは申し訳ない」

「ふふ、年寄りの道楽だと付き合ってちょうだいな」

「……でしたら、お言葉に甘えます」


 そのまま、八重子夫人に乞われて夕食をいただいてから帰宅した。八重子夫人は徹頭徹尾お優しくて、上品な方だった。また、現状特に警戒は必要なさそうだ。三塚に嫁いで来たと仰っていたから、昭和の方で地域性も考えると本当に旦那さん、そしてお家の秘密などは共有されていなかった可能性は低くない。


 夜になり、妖魔の数も増えて来ていた事からクロの警戒度も上がっているため、タクシーで街中にでてから場所を変えて別のタクシーで帰宅した。念には念を入れての行動で、クロが本気で心配しているのが分かるから口は出さない。ここに来た当初よりも大分規模の大きな話になって来ているから、警戒はして損はない。


 ようやく帰宅したころには完全に日も暮れて、私は入浴してから組み紐を仕上げるためにリビングにクロと居た。クロは猫の姿のまま器用に本のページをめくって読んでいた。お互いに無言で作業する時間が続くが、これはこれで落ち着く時間で割と好きだったりするのよね。


 紙をめくる音と、シュッシュッと紐を結う音だけがBGMとなっていた所に、インターホンの音が鳴り響いた。既に時間は夜中の23時、来客には中々非常識な時間だ。クロと視線を交わし、私がインターホンに出ると同じ年くらいの女性だった。


「はーい、どちら様でしょう?」

「どもー! 瀬名せなでーす。ちょっと今日の内にご挨拶をと思って?」

「はーい、今玄関行きますね~」


 そう私が答えているとクロがクロ兄の姿で玄関に向かい、少しして「うぎゃあ」と言う女性の声が聞こえた後、彼女を拘束して担いでリビングに戻ってきた。俵かなんかかな……可哀そうに。


「ちょっとぉ~! これは酷いと思うんですー! 可愛い葵ちゃんが怪我したらどうしてくれるんですか!!」

「煩い」


 クロは無言で瀬名葵と名乗った少女の口も塞ぎ彼女の持っていたポーチを睨んでいたが、ふっと息を吐いた。


蜃気楼しんきろうか、ユウ本物っぽい」

「良かった」

「んー!! んんーーー!!!」

「クロ、離してあげて?」


 嫌そうにチラッと瀬名さんを横目で見ると一瞬で解放して床に放り出し、ゴンと頭を打って痛そうに蹲っている瀬名さんを無視して去って行った。私はなんと声をかけるべきだろうかと悩んでいたら、勢いよく立ち上がって復活した。立ち直り早いな、この子。


「あんのクソネコーー!!! この可愛い葵ちゃんを拘束するのは十歩譲って許すけど、投げ捨てるのは許さん!! こっち戻ってこいクソネコ!! 私と勝負しろーー!!」

「ええと、瀬名さん?」

「出てこいネコ!! ……っ!! ごめんなさい!ちょっと頭に血が上って暴走しちゃいました~~!!」


 見るからに「やっべ」と顔に書いてある瀬名さんはどこか憎めなくて可愛い。


「こちらこそ乱暴にしちゃって、ごめんなさい」

「いえいえいえ! 先任が2人死亡して、神崎さんも昨日アタックがあったと報告受けています。 私が軽率でした。が!!!! あのクロネコとはいつか決着をつけますので、そこだけはご理解ください!!」

「あはは……お手柔らかにね。一旦はお互い休戦で話を進めたいのと、明日の準備を進めたいんだけどいいかな? クロもだよ?」

「はい! クロネコ、早く出てこい。今は神崎さんに免じて我慢してやる!」

『ああ? オレ様がてめぇをのすのを我慢してやってんだ。調子乗ってんじゃねえぞ!』

「はんっ! 口先だけはいっちょまえね!」

『なんだと!?』

「ストーーープッ!! 話進まないし、時間無駄だからね? 大人しくできないなら2人共出てってね、私は寝るから」

「むぅ……」

『チッ』


 ようやく話ができる状態になり、瀬名の話を聞くと前任の四国からの祓い師は瀬名の先輩で山本和人と言う3年の男性だった。山本さんは(イヌ)を使って広範囲調査などに定評があったけど、並高の特殊性から人海戦術的な広範囲調査ができないため苦戦させられていた。山本さん本人は体術など一通り修めているが、その腕前はそこそこだったため、調査がある程度進んだ段階で追加人員の要望を出して来たのは対戦闘要員として九州分校から宮田ありすと言う薙刀を使う祓い師だった。

 2人で例の旧校舎の図書室へ潜入、戦闘となる可能性ありと連絡を入れて深夜に校舎へと忍び込んだが、それ以降連絡は途絶えた。とは言えすぐに誰かを派遣するのは悪手だ。第2、第3の被害者を増やす訳には行かないため、祓い手ではない人間を高校へ業者として入り込ませたりなどして調査を行っていたが、芳しくなかった。3ヶ月の期間を置いて私が派遣されるに至った、と。

 攻守可能で広範囲殲滅を得意としつつも、能力としては強大な一体とも対峙可能。何より行方不明となった2人が生きていれば保護できるかもしれないと考えての人選だった。


「なるほどねぇ~、諸々しっくりきたわ」

「山本先輩は私に調査や防御について色々教えてくれたんです。私は直接の戦闘能力は高くないですが、神崎さんの事は絶対守ります。防御と幻惑による囮とか、攪乱とかは得意なんです。なので、そこのネコ……毛を1本寄こせ。神崎さんのコピーを作る」

『……チッ、ユウのための身代わりならしゃーねぇ。絶対にユウを守れよ』

「言われんでも! 神崎さん、私は明日転校生として隣のクラスに入るからよろしくね! 転校生同士ー!って挨拶に行くよ」

「分かった、待ってるね」

「じゃ、今日はお邪魔様。ネコ、その護符出来上がったら私も幻惑かけるから明日朝持って来い」

『てめぇが取りに来い!!』


 最後まで賑やかに瀬名さんは去って行った。……嵐のような子だったけど、なんとも憎めない可愛い嵐だった。クロにとっては災厄そのものかもしれないけど。

 話しながら作り上げた組み紐のストラップをクロにお願いして、一足先に横になった私は明日もきっと賑やかなんだろうなと思うと、自然と笑顔になっていた。

読んでいただきありがとうございます!

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