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家族と共に殺されかけた少女、妖魔と契約して祓い師として立つ  作者: あるる


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第41話

 翌朝登校すると、並河高校は普通の学校になっていた。

 あの神社並みの静謐な空間は、今は学生たちの活気あふれる日常の場に戻っていた。校舎やグラウンドなど人の多い場所の近くには街中と同じように低位の妖魔が確認できた。

 クラスは明るかったけど、美優ちゃんと清水くんの席がぽっかりと空いていて、胸がきゅっとなる。


 仕方ない。

 そう、自分に言い聞かせながら、美優ちゃんがいないことを寂しがる級友たちと、一緒に悲しんでいた。罪悪感に、少し、息が苦しい……。


 ようやく中休みになり、人の少ない屋上でボーっと学校の様子を眺めながら、思考は美優ちゃんへ行っていた。

 寂しいのも、仕方ないと切り捨てたのも、全部本当。嫌いじゃない、むしろ彼女の明るさに救われていた。

 でも、私が私の判断で彼女を切り捨てた。

 その事実が、やっぱり重いし、痛い。後悔はしていない。でも、他に手段があったというなら、知りたかった、とは思うだろう。


『ユウ』

「ん、大丈夫。分かってるよ……」


 クロに心配をかけている自分も嫌い。

 最近、自分のメンタルが不安定な自覚はあるけれど、今はネガティブ期なのだと思う。全てが、しんどい。自分らしくないって分かっているけど、自棄になっている自分をうまく止められない。


 そんなぐちゃぐちゃの気持ちを持て余しながら学校を何となく見ていると、旧校舎の図書室が目に入った。


 わざとらしい妖気がなくなった図書室は、校舎のノスタルジックさと合わさって趣きがある。


「そっか、図書室で調べるのは基本だよね。って言うか、この街の図書館ってまだ行ったことが無かったかも」

『言われてみれば、そうだな。……図書館、あったか?』

「クロ、お願いできる?」


 宙に浮いている相棒を見上げると、猫の癖にニヤリと器用に笑う。


『高いぞ?』

「リクエストは?」

『マグロとサーモン、海鮮尽くしでフルコース』


 フ、フルコースとな……でも、ここは背に腹は代えられない。覚悟を決めてグッと親指を上げると、クロはスっと消えていった。

 昼休みに図書室へ行こうと、葵ちゃんにメッセすると「一緒に行くー!」と即レスが来た。



 ◇



 授業が終わるや否や、葵ちゃんが楽しそうに迎えに来てくれた。


「ユウちゃーんっ、お昼行こっ!」

「葵ちゃん! うん、ちょっと待ってね、お弁当出すから」


 クラスメイトたちもそれぞれに教室を出ていく流れの中で、私たちも紛れてカフェテリアへと向かう。陽射しが眩しいお昼時だからブラインドが閉められているけど、それでも広く開放的なカフェテリアは学生で溢れ、明るく賑やかだった。

 この後の話をするのであれば、本来は中庭とかの方が良いけど、暑すぎて無理なのでエアコンの効いた場所でお昼は食べたい。


「久々の学校だね〜」

「ねー。ちょっと不思議で、ちょっとダルい」

「あはは、休み明けの憂鬱って奴だねー!」


 暑いしねーと他愛のない会話をしつつ、葵ちゃん(あきらくん)がハンドサインで図書室の目的について聞いてきたので「湖、歴史」と返すとにこりと了承してくれた。

 学校は解放されているとは言え、妖魔が普通に存在するようになった今、油断はできない。


 内階段と連絡通路を使って涼しいまま旧校舎へと向かう。

 校舎内は全部空調が効いていて、本当にありがたい。


 旧校舎は外観もだけど、内観も風情がある。妖魔さえ絡まなければ、観光地でも通用しそうな飴色の木造廊下は普通に絵になる。

 図書室へ入ると、心地良い静けさと、紙とインクの匂いが迎えてくれる。最近では珍しい、本の多い図書室らしい匂いだった。


 とりあえず、街の歴史とか写真がありそうなコーナーを探す。


「ユウちゃん、何調べるの〜?」


 敢えて、聞いて来る葵ちゃんに私もさりげなく答える。そう、私たちがあの公園へ行ったことは知られていると思って行動した方がいい。


「この間行った公園が綺麗だったじゃん? あそこ、湖跡ってなってたからどんな湖だったんだろーって、気になって」

「あ、あのお花の綺麗な公園?

 おっけー!あたしも湖気になるから探してみるね」


 葵ちゃんは図書委員の方に向かったので、そのまま私は航空写真などを見ていく。

 八重子夫人の所で見た古地図に湖を見た記憶はないけど、見たのは一度だけだから記憶違いの可能性もある。

 ようやく見つけた写真を遡って行くと違和感を感じた。地図を探して比較すると、一点だけ差があった。


「これ神社? それにしては、小さい……お稲荷さん?」

「ユウちゃんっ」


 私の独り言を隠すように笑顔の葵ちゃんが差し出したのは、公園の写真集のような一冊のパンフレットだった。


「きれーい。そそ、ここ綺麗だったね〜」

「ねー! 涼しくなったら、また行こー」


 葵ちゃんが指さすパンフレットにしれっと書いてある一文は「この地で祀られていた伊津那(いづな)の神の社は移設され、この跡地は公園として生まれ変わった」とある。

 でも、その神社の写真はパンフレットにはなく、市の中心の神社と同じものかは確認できなかった。


 それとなく航空写真の神社のような鳥居もない、小さな建物を指さすと葵ちゃんは小さく頷く。


「どれも綺麗だけど、湖の写真とかはないねえ」

「うん、残念〜」


 葵ちゃんとパンフレットを詳しく見て行くと、伊津那(いづな)湖跡公園の辺りは昔から曼珠沙華が多く、秋は一面赤い花で覆われて美しかったらしい。


 ――違和感。

 昨日見た公園に曼珠沙華は、一部しかも奥まった場所に多少残っているだけだった。あの時感じた異様な空気、「狐花」という別名が引っ掛かる。そして小さな社に見える写真。


 やけに狐の存在が見える。

 罠だろうか? それとも、これは隠されているもののヒントなんだろうか?


「ユウちゃんっ」

「えっ?」

「もう、何度か声かけたんだよ? もうお昼休み終わるよ」

「あっ、ごめん、ボーっとしてた」


 そんな会話をしながら、葵ちゃんが他に見えないように「気をつけて」とハンドサインを送ってきつつ本を返しに行ってくれた。話したいことはあったけど、時間が時間だったから大人しくお互い自分のクラスへと戻った。

 メッセンジャーの会話は、ハッキングじゃなくても妖魔は垣間見れるので、後は夜の報告会で。

 放課後はお互い調査がある。


 不思議なくらい、湖についての情報はなかったけど、わざとなのか狐の存在が目に付いた。狐の妖魔はきっと関りがあるんだろうけど、現時点では山神やこの街の主導者たちとの関係性が見えないから注意しなければ。

 ……三塚から移設された神社。まさか、そこまで繋がるのだろうか?

 分からないことだらけで、不安が募るけど、ひとつひとつ調べるしかない。切り替えるように息を吐き出す。


 今は、落ち着こう。仮に湖と三塚の神社が繋がるなら、八重子夫人の所でなにか手がかりがあるかもしれない。

 現地へ赴く葵ちゃん(あきらくん)と仁先輩が心配だけど、二人は素でも決して弱くはない。サポートもきっとついているから、大丈夫だと信じるしかない。


 そう、自分に言い聞かせて、授業へと意識を切り替える。

 放課後、いつも通り校門で待っていてくれたクロ兄の姿になったクロと一緒に八重子夫人に会いにいく。

読んでいただきありがとうございます!

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