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家族と共に殺されかけた少女、妖魔と契約して祓い師として立つ  作者: あるる


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第28話

 クロに背負われながらプールを離れ、なんとか一番遠い更衣室へと行き、急いで着替えてフル武装した。一見ランニングするような格好にしか見えないだろうが、薄刃のナイフも数本いつでも出せるようにしている。髪もクロがさっと編んでくれたので邪魔にならない。腰には晶くんとクロが作ってくれた護符がある。

 これのおかげで、魂自体への攻撃も数回なら弾けるだろう。


 戻るとクロが険しい顔で待っていた。何か、あったのだろうか?

 

「ユウ、動けるか?」

「うん、大丈夫」

「そうか。落ち着いて聞け、ジンとアオイが襲われた」


 クロの言葉に、咄嗟に反応しそうになるが、小さく息を吐き出し続きを待つ。小さく、無事を祈りつつ。


「ジンはかすり傷、葵は――ドッペルゲンガー(・・・・・・・)を失った。本人は軽症ではないが、重体でもない。本人曰く一晩休めば問題ないとのことだが、魂が受けた傷は目に見えないだけ厄介だ」

「わかった。二人はどこに?」

「第6」

「私たちもそこに?」

「ああ」


 第6とはセーフハウスとして確保している場所だけど、そう言いながら、クロはハンドサインで別のことを伝えてくる。フェイクの第9セーフハウスに寄ってから時間を置いて、本命の第3セーフハウスへ移動。声には出せない、つまり現状既にどこに耳があるか分からない状態になっている、と分かったので自分の中の警戒レベルを最大に上げる。

 

【体育館の吊り天井から覗く顔】の舞台となる体育館は当たり前のように並高の体育館だと思っていたけど――こちらが本命の可能性が高くなった。もっとも、この市全体の警戒装置と言うか監視カメラ的な役割がメインと考えた方がいいのかもしれない。


 ただし、昔話によるとやりすぎた(・・・・・)者は吊られるという事を考えると、敵として立ちはだかった時は詰んでいる可能性が高い。奴の攻撃方法が物理的に吊るのであれば抵抗もできるだろうけど、そうでない場合だと初見は危険だから避けたい。

 ゲームと違って、初見殺しはガチで有効だから、私は死にゲーが嫌い。そんなん死ぬ前に分からなきゃどうにもならんじゃん!って思う。まあ、なので祓い師は死ぬ時は敵の情報を最大限残すようにしている。

 後任が敵を討ってくれると信じて、残せる情報全てを残す。葵ちゃんも、前任の二人も残せる情報は残してくれた。葵ちゃんを殺した妖魔の情報は私は聞いていないけど、晶くんが本部に報告はしていたのは知っている。


 私はクロと世間話をしながら、バスに乗って中心街へ行ってスーパーでゆっくりお買い物をした。そのまま自宅にクロの能力で作り出した分身を向かわせて、私たちは途中の路地からいくつかの雑居ビルを抜けて「第9」のフェイク用セーフハウスへと行った。

 その間も分身は道を進み、自宅から2ブロック離れた公園の辺りで徐々に薄めて消した。この間45分、ここに近付く気配もトラップにかかったものもない。


「60分経過、移動しよっ」

『おう。外はもう暗い』

「まあ、私たちも闇は不利じゃないし」

『そうだな』


 嗤うクロはやっぱり獰猛さがあって、この子は強いんだって安心感がある。私のこの感覚も大分おかしい自覚はあるけど、常に死が近い祓い師としては強い味方は嬉しいものだから仕方ないよね。

 また2つほど雑居ビルを経由して「第3」セーフハウスに到着した。


 コンコンと二回ノックした後、コン・ココンともう一度ノックをすると鍵が開いたのでそっと入る。中は電気をつけず真っ暗だが人の気配が三つはある。

 一人はサポートの人員だったので私たちと交代で退避してもらった。

 後ろ手でドアを静かに閉めて、ロックをかけ、更に札で結界を張る。安全を確保して、やっと息がつける。


「電気、つけても?」

「問題ない」


 明かりの眩しさを覚悟しながら付けるけど、やっぱり目が慣れなくて一瞬目をつぶって視界がようやく慣れると、奥に晶くんが蹲っているのが見えた。

 心臓が嫌な音を立てるのを抑えて、そっと近づいて熱と脈を確認すると、そっと手を握られて緊張が緩んだ。


「大丈夫、生きてるよ……」

「良かった、痛みは?」

「物理的にはないかな、でも疲労感がヤバイ。ちょっと寝たいんだけど、いい?」

「うん、結界は私とクロに任せて寝て。ご飯も用意しておくから」

「うれし、ごめ……ねむ」


 言い終わるかどうかで気絶するように寝てしまったので、ブランケットをかけて寝かす。クロは無言で結界を張って、この部屋の中だけは安全になったはず。

 晶くんが眠ったのを確認して、仁先輩がホッとして声をかけてくれた。


「助かる、クロ。俺は、結界は張れるが甘いから、晶がずっと頑張っていてくれたんだ」

「魂が傷を受けたのに、頑張ったんだね」

『ユウ、腹減った』

「あ、そうだった。簡単だけど作るね」


 今日は簡単にピリ辛の焼うどんにして、食べやすく冷めても美味しいようにした。

 醤油ベースでニンニクと少しの唐辛子、みりんと出汁でまとめると10分足らずでさっくりと出来上がってしまった。それぞれに取り分けて、晶くんの分はラップをかけて取り置く。

 スープもワカメと溶き卵とゴマでさっぱりしたものにして食べやすくする。幸いお椀やお皿はいっぱいあったのでそこだけは助かった。


「できたよー。今日は簡単だけど」

「いつも悪いな、助かる」

「いえいえ」

『ユウ、食っていいか?』

「はいはい、食べててー!スープいれてくるから」


 珍しくクロがお腹を空かせているのを見て、クロも大分消耗しているのかもしれない。私が倒れかかっていた時は周囲にあまり注意もできなかったから、その時に何かあった可能性は大いにある。

 でもクロが大人しく話すことはないだろう。よし、後で猫に戻った時に確認するしかないな、と心に決めつつそのチャンスを伺うことにした。




 晶くんは身じろぎすることもなく寝ていたので、自然と起きるまで放っておくことにした。厳槌先輩も隠していたけど、なんだかんだ傷を受けていたので治療をしてから晶くんの隣に寝かした。

 珍しく時間ができたので、私は今までの内容をまとめ直しておくことにする。


 並河高校の七不思議をテーマに学生たちが亡くなりつつも、何故か表ざたになっていなかったが、昨年度の転校生が亡くなり、その友人が声を上げてくれたことで発覚した。


 まずは【図書室の持ち出し禁止書架】。

 最初から怪しさ満載で、明らかに罠がある図書室だったけど、クラスメイトの佐々木美優さんが選別され、狙われたことで巻き込まれた。でも、そのお陰で三塚八重子夫人と出会い、この街に伝わる山神の存在が判明。

 佐々木美優さんはおそらく眷属化、行方不明。

 そして、瀬名葵を【保健室の二人目の先生】に殺された。


 次に【プールの底に引きずり込む手】。被害者は清水浩一くん。

 囮として狙われた宮本くんではなく、清水くんが本命で静かに連れていかれそうになった所を危うく助けられたものの、結局は妖魔討伐のための囮にして、最終的に死なせてしまった。

 唯一の救いは、亡くなってしまった瀬名葵の能力を瀬名晶が引き継げたこと。


 同時にこの件をきっかけに【聞いてはいけないチャイム】は妖魔の領域へ変化するトリガーであることも判明した。おそらく【開かない校門】も同様に妖魔の領域から逃がさないための仕組みだろうと思われるが、まだ確認できていない。


 最後に体育館裏から確認できた、街に仕込まれた六芒星と【体育館の吊り天井から覗く顔】。この顔はまだ全ては判明していないけど、第一には警報アラートの役目は分かっている。あれもまた妖魔であることを考えると、どう捕獲して滅殺するか対処方法ができていない。


「アレはね、広範囲結界に捕らえて、徐々に範囲を狭めて圧殺でいいかなって思ってるよ?」

「……晶くん、もうびっくりするじゃん」

「ユウちゃん、集中しすぎー。ボクが起きても気付かないし、めっちゃ堂々と覗き込んでたのに」

「嘘、気配消してたでしょ?」


 ジト目で晶くんを振り返れば嬉しそうに「うん」ってにっこりされちゃった。


「だってさ、ビックリさせたかったし?」

「もう! お腹は空いてない? 焼うどんと卵とワカメのスープあるよ?」

「嬉しいな、めっちゃお腹空いてる」


 話しながらレンジで焼うどんを温めつつスープも小鍋だからすぐに温まる。ささっと用意して渡すと、嬉しそうに食べてくれる晶くんの様子を見つつ、さっきまで書いていたメモをチェックしながら残りの七不思議の再確認をした。やはり実際に妖魔が確認されているのは残り2つ。体育館と保健室。

 何が起きるか不明なのは3日後、満月の深夜に起きるという【合わせ鏡の廊下】の確認だ。これは直接的に行方不明になりそうな案件のため、現状分かっている体育館の妖魔の解決を急ぎたい所だ。


「ふう、美味しかった~! ごちそうさま!」

「お粗末様でした」

「ユウちゃんのご飯はほんとさいこーだね。ところでユウちゃんも気にしてる体育館の妖魔だけど、この後総合体育館にいこっか」

「えっ、マジ?」

「うん、ガチ。仁先輩もね、そろそろ向こうもこちらの排除しようと本気になって来ているから、残り時間は少ないって見てる。ユウちゃんたち合流してから確認するつもりで、タイムスケジュールも組んであるよ」

「ほあ~~……流石すぎるわぁ」

「実は人間もやっぱり出て来てね、あれは間違いなく眷属ではなく人だったんだよね。

 恐らく今までの情報だとこの街の有力者である(にのまえ)家か二宮(にのみや)家の宮司かなんかだと思う。低級とは言え多数の妖魔を好きに扱っていた」

「なるほどねぇ……それで、決行時間は?」

「二時。だからユウちゃんもまだ小一時間寝られるから休んでおいて。ボクと交代」

「了解」


 そう答えると、先輩が休んでいるソファとは別のソファで横になって、目にハンカチを乗せてさっさと寝る。大きく息を吸って、小さく吐き出しながら。手足から力を抜いて行く……体が沈んでいく感覚と共に意識も遠くなっていった――。



読んでいただきありがとうございます!

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