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家族と共に殺されかけた少女、妖魔と契約して祓い師として立つ  作者: あるる


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第27話

 瀬名晶はいつも通り葵の姿で厳槌と今日もデートの体で缶詰工場に来ていた。

 正直フルーツ缶系の工場で良かったと内心でホッとしつつ、デート中のバカップルに見えるように注意は怠らない。


「先輩、見て見てー! フルーツが山盛りであのままでも幸せだね!」

「季節のフルーツは美味いからな」


 工場の見学は普通に面白かった。桃など剥きにくいフルーツが一瞬でつるんと剥ける瞬間や綺麗にカットされる様子などは壮観で、思わず見入ってしまう。


「先輩、すっごいね~。人の手でもできるんだろうけど、機械でフルーツを傷めないようにできるのがびっくり」

「そうだな、センサーで制御していると言われても、繊細な制御ができるように調整されているのが素晴らしいな」

「やっぱ工場見学系は楽しーねぇ!」


 自然と感嘆のため息が出るくらい、芸術的に桃の皮が剥かれていく。そして専用の機械でカットされ種を抜き、次の工程へと流されていく。工場だから当たり前だけど、次から次に流れながらフルーツが加工されていくのは一種綺麗で感動的だった。

 語彙力なく「凄い」以外の言葉が消えていく。


「瀬名、試食も出来るようだぞ」

「ほんとだー! ってゆか、せんぱーい、あ・お・いですぅ~」

「お、おう。葵、行くぞ」

「はぁ~い! じん先輩!」


 小さな小さな目印(マーカー)を通路と食品に気を付けつつ作業スペースにも落とす。晶の見る限り、ここは何もないが状況が変わった時のリスクヘッジは大事だ。

 試食コーナーでは詰めたてのちょっと温かいものから、ちゃんと冷やしてあるフルーツまで様々あった。フルーツの種類も様々でさっき見た桃だけじゃなくてみかん、ミックス、サクランボと色々あった。


「せんぱい、あったかいの美味しい! これはちょっと斬新かも!」

「ほう、甘味が増すせいか? これも美味いな」

「ねー! お土産に買って帰ろう? きっと美味しいデザート作ってくれるよ!」

「ったく、仕方ないな。だが、喜ぶだろうから多めに買って帰ろう」

「はーい! やった~」


 そのままお土産コーナーに行き、肩透かしなくらいこの工場見学で見学した範囲では、異常は何もなかった。おかしいな、と先輩とそれとなく目くばせをし、最後に工場全体の模型を見て当たりを付けたが完全に部外者立ち入り禁止のエリアだった。仕方ないので展望台からまずは場所のチェックをすることにした。


「おおー! 絶景ー! 先輩見てみてー、うちらの高校見えるよー!」

「へえ、これはまた見晴らしいいな」


 山に近いせいか風も爽やかで気持ち良かった。風に当たりながら、学校を写メっているふりをしつつ目標を見ると小さな社が遠目に見えた。アレで間違いないだろう、と目印(マーカー)をなるべく遠くへと投げた。

 風に乗って黒い小さなビーズは、何か(・・)に触れた瞬間、弾けた。


「やっば」

「行くぞ」


 返事もせず、お互い人混みに紛れてエレベーターに乗り込んで、そのまま展望台を去り、販売スペースも抜けて工場を出た。

 その瞬間、嫌な予感と共に、あのチャイムが響いた。


 キィィイイイイイインコォオオオオオン……カァアアアアアン……コォオオオオオオオン――



 真っ赤に染まった工場には、葵と仁の二人しかいなかった。


「はあ、やっちゃったなぁ~……ごめん、先輩」

「仁だろ? 葵」

「うん、仁先輩。どーする?」

「巻き込まれた一般人は居ない。ならここで無理をする必要はない」

「おっけー! クロにもらった使い捨ての最強の一発があるよ」

「俺は準備があるから、15秒だけ結界を頼む」

「任せて! うちらを守るだけなら楽勝」


 いつの間にか二人は影人間のような、揺らめいた人影に囲まれていたが焦りはなかった。物理的な存在じゃない時点でかなり低位の妖魔であるのが想像つくし、(プレッシャー)を感じない。

 普通に人間では突破は不可能だろうから、これで普通は十分なのだろうけど、祓い師二人を相手にするには脆弱過ぎた。


 葵は結界を張りつつ、同時に無作為に複数の妖魔を拘束して行った。最終的には逃走経路確保のために邪魔なものだけ拘束するが、最初からそうしては意図がバレるため少し焦っている風を装い、仁をチラチラ見つつこなす。


「待たせた、行くぞ」

「了解!」

(りん)(びょう)(とう)(しゃ)(かい)(じん)(れつ)(ぜん)(ぎょう)ーー!」


 仁の放った雷の斬撃が全てを薙ぎ払い、開けた道を走りながら晶はクロの作った札を投げナイフを使ってに二人を囲っている結界に向かって投げつける。

【ギィィイイイイイイイイ】と言う耳障りな声と共に何もないはずの空間に亀裂が生まれ、そこに向かって二人は走って行く。

 もう一息、という所で『トン』と乾いた音が響き、葵の心臓が貫かれた。衝撃と共に力が抜ける。


「あっ……」

「葵!!」

「に、げて……仁、さん」


 振り返って手を伸ばして来る仁を、結界ではじき出しつつ。葵は倒れた。


「がっ……ほんと、やっちゃった…」


 葵を十重二十重に取り囲む妖魔たちはタイミングを見ているのが分かるが、この身体を奴らにくれてやるつもりはない。


「大事な、だ、いじな、身体なのに……おぼえてろ、よ」


 『カチリ』と言う不穏な音のきっちり1秒後に葵の肉体は爆破し、粉々に吹き飛んだ。周りの妖魔共々再生も遺体の利用も不可能なように。

 爆炎も収まった頃、……コツコツと足音が響く。爆炎の残滓を踏み分けながら、長身の男が現れ、跡を睨んだ。


「ふむ、流石プロと言うべきか。こちらには情報を残す気はない、か。

 まあ、いい。そろそろ目障りになって来たから消すか」


 そう独り呟くとまた闇の中へと去って行った。

 工場に通り抜ける夜風が焦げた匂いを運び去り、静寂だけが残った。



 一方、仁は無事脱出し、追跡がない事を確認してから隠れ家(セーフハウス)へと移動した。晶は遠隔で操作していたとは言え、葵を使っている時は精神を完全にその体と同調をしていたため、ナイフによる痛みと衝撃は晶自身にも届いていたが、致命傷は避けられた。

 とは言え、二人共疲労困憊になっていたので、しばらく動けそうにはなかった。また、帰宅は危険なため結子とクロにも帰宅しないように連絡だけ入れて、倒れた。

読んでいただきありがとうございます!

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