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家族と共に殺されかけた少女、妖魔と契約して祓い師として立つ  作者: あるる


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第25話

 スパイスの香ばしい匂いが食欲を誘い、しっかりと煮込んだ野菜や鶏肉に染み込んでいく。

 一晩寝かしたカレーはもちろん最高だけど、私は案外作りたてもサッパリめで結構好きなんだ。

 なんなら翌日になったカレーは出汁で少しさらりとさせてうどんで食べる方が好きかもしれない。

 ああ、でも溶けたジャガイモがもったりとしてるのも捨てがたい。

 まあ、何にせよカレーは美味しいという事で、今夜は夏野菜のカレーなのです!肉厚なナスを先に炒めて、これは最後に乗せる。色鮮やかなパプリカは最後のひと煮立ち前に投入して食感と彩りを残す。

 よし、盛り付けも完璧!


「チーズのせる人いるー?」

「はいはーい! チーズ欲しいー!」

「俺はいらん」

「おっけー、じゃあ持ってくよー」


 チーズのせは晶くんとクロ、私と厳槌先輩は無し。カレーとブロッコリーとコーンのサラダに冷たいコンソメスープ。デザートに奮発したシャインマスカットのソーダ漬け。

 去年見つけたこのシャインマスカットを一晩サイダーに漬けると、マスカットが少しシュワシュワして、楽しくて好き。


「お待たせー、食べよー」

「「いただきます」」


 いつも通りクロは軽くだけぺこっとして食べ始める。

 クロは辛いのが好きじゃないから、私の作るカレーは甘口なんだけど、それでもやっぱり苦手みたいで、チーズのまろやかさが必要みたい。

 反面シュワシュワマスカットは好きみたいで、楽しそうに目を細めながら口の中で味わってる。

 晶くんは好き嫌いはなく、なんでも美味しく食べてくれる。今日は「ナスうまーー!!」って喜んでて可愛い。

 厳槌先輩はクロと逆に炭酸が苦手なのかなんとも難しい顔でマスカットを食べていた。


「先輩苦手だったら残してくださいね?」

「あ、ああ……すまんな」

「なんだ、でかぶつはソレ好きじゃないのか?」

「炭酸は慣れなくてな。しかしクロ、そろそろ俺も名前を呼んでくれないか?」

「ああ?……ジン」

「おう、その方が有難い。クロ悪いが、マスカット貰ってくれるか?」

「いいぞ」


 素っ気なく言いつつも嬉しそうなのが見え隠れするクロに私は晶くんの視線を合わせてこっそり笑う。バレると怒られちゃうからね!


 楽しいお食事の後は、楽しい楽しいお仕事の時間!……なんて誤魔化さないとちょっと厄介な状況だから気が重い。

 結局現在分かっているのは――

 1、頂点の1つである住宅街にあるらしい社は結界で守られていた。

 2、中心にある神社は近くの池に幻惑がかけられており、何かがいたらしい。

 3、頂点の1つである学校は絶賛警戒されている。

 4、山は御山というくらい、敵の本境地だろうからノープランで行くのは、怖すぎる。

 残り2ヶ所も重要な結界があるはず。最悪、4~5ヶ所を同時に襲撃しなければならないかもしれない。晶くんが完全な戦闘向きでない事、私の体調を考えると純粋に人手が足りない。私とクロも完全に別行動の場合は能力に制限もかかると言うデメリットもある。

 増員を申請すれば良い事ではあるが、そもそも祓い師はそう数は多くない事を考えると打てる手は限られてくる。


「瀬名」

「はーい! 葵ちゃん以外のドッペルは準備できるよー。

 ユウちゃんも先輩も作れるし、結界破壊に札でも持たせれば全然いける。ただしボクも人間だから、複数操作している時は動きが雑になるから使い捨ての方がいいかな。

 簡単言うと特攻させて、そのまま消えてもらう感じだね。だから見た目もその辺の知らない人の姿を使う。なんなら動物でもいいよ」


 流石晶くんだな~と思っていると、先輩は難しい顔で腕を組んだまま動かない。

 なんだかとっても困った顔をしてるので、どうしたもんかと晶くんと顔を合わせると、首をかしげている。


「瀬名」

「なにか、間違っちゃった?」

「いや。……人の心を読むな」

「へっ!? やだなー察しただけで人の心なんて読めないよー?」

「さすが晶くん。葵ちゃんもだけど、ほんと良く状況や人を見てるよね」

「もっちろん! ボクは相手を知って、それでダミーや分身を作り出しているからね。

 葵ちゃんは物心ついた頃から知っているからクオリティ高いのは当たり前だけど、ちょっと動かすだけでも意外と違和感感じられちゃうから色々視てるよ。

 どこを、とか何をって言うのは企業秘密だから言えないけどね」

「常に状況を読んで先回りできるのは才能だが、無理はするな。

 それは非常に疲れるはずだ。俺たちと居る時は肩の力を多少は抜くようにして欲しい。オンオフは大事だ」

「先輩……! 了解です」


 厳槌先輩は心配そうな、ちょっと困った顔してるけど、晶くんは嬉しそうにしているからそんなに心配しなくてもいいと思うんだけどね。先輩って意外と苦労性だったんだなぁ~と思ってしまった。


 満月まであとほぼ5日。時間は無駄にできない。

 週末まで待たないで、明日の放課後、総合体育館と工場の両方を分かれて調査に行く。今回も先輩と晶くん、私とクロ兄で、私たちは市営の総合体育館に行く。体力づくりと言えば、不審に思われる事もなさそうだしね。

 逆に先輩たちはカップルとして何ヶ所かでアピールしているから、デートだと思わせられる工場見学だ。


 明日の放課後クロに持って来てもらう用にスポーツバッグを準備する。

 総合体育館って名前だけど体育館、グラウンドだけでなくプールやジム、ボルダリングや、更にはダンスなど用のスタジオまであるらしい。ちょっと楽しみ。

 ボルダリングはちょっとやってみたかったんだよね~。少しウキウキしつつ、一見普通のジャージやスポーツ用のスパッツに見える戦闘服をバッグに詰めていく。当然事前に暗器も仕込んであるので、まあ何があっても大丈夫でしょう!


 明日はちょっとスポーツを楽しめるといいな。


 ――なんて、気楽に考えていたけど、不意に嫌な予感がした。


 バッグの中の戦闘服に手を触れながら、ふと窓の外を見る。夜風に揺れる街灯の影が、どこか妙に長く伸びている。

 普段なら見慣れたはずの風景なのに、ほんの一瞬、背筋にぞくりと這うような違和感が走った。


 「……何でもない、よね」


 小さく呟いて、私はその気配を振り払う。けれど、確かにこの街には、まだ見えていないものが潜んでいる――そう思わずにはいられなかった。


読んでいただきありがとうございます!

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