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家族と共に殺されかけた少女、妖魔と契約して祓い師として立つ  作者: あるる


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第21話

 厳槌先輩が八重子夫人宅で見つけた昔話で並高の七不思議と共通する昔話が見つかったと、その内容をまとめたレポートと元々の書籍を読ませてもらった。



 ◇◆◇◆◇◆◇



 昔々、伊津那(いづな)の村に住んでいる大人しい少年は、気が弱いせいで他の子どもたちと馴染むことができなくていつも独りでぽつんとしてた。

 楽しそうに遊んでいる子供たちに交じりたいけど、声がかけられない少年を何度か誘う子供たちもいたが、もじもじとしてろくに返答もしないため誘いに来た子供たちも困ってしまい、徐々に少年は声をかけられなくなった。


 少年の両親もなんとか村に馴染ませようと連れて歩くが、結局は目も合わせられず話ができなくて、少年は独りのまま成長していった。そんな少年なので、今日も独りで高台から村を眺めながら過ごしていた。

 村を走り回る同年代の子供たちを少し羨ましく思いつつも、どうやってもまともに話すどころか視線も合わせられないので、少年は、もう諦めるしかなかった。代わりにみんなが楽しく過ごしているのを見るのが少年の楽しみになった。


 不幸なことに、見られている子供たちの中には数人、何もしていない少年に対して気味悪がっていた子がいた。彼らにしてみたら、ろくに話すこともなく、見かけるときは遠くから一方的に自分たちを眺める少年が気持ち悪がった。

 その中でも特に一人、少年に唯一親切にしていた村娘に惚れ込んでいた村長の息子は少年を目の敵にしていた。少年が何をしなくても文句を言い、益々人々から距離を取る少年を無理やり力づくで引っ張り出し、できない事をさせては馬鹿にして、徐々に徐々に少年は追い詰められていった。

 可愛そうに思う村人は多かったが、相手は村長の息子で、少年を助けることは出来なかった。


 唯一、少年を助けてくれた村娘のすず以外は。村長の息子も惚れた弱みですずには手が出せなかった。そしてそれが故にすずと少年は気付いたら結ばれていて村長の息子は心底後悔した。

 本当にすずが欲しかったなら遠慮なんてするんじゃなかったと。やがて自分が村長になった時にはすずを奪い返し、あの男には痛い目を見せてやろう、と人知れず決心をしていた。


 一方少年は青年となり、すずと結ばれ、夫婦となり平和に静かに暮らしていた。何年も平和な時が過ぎ、2人の間に可愛い娘も生まれ何もかもが順調だと思ったある時……大雨が降った。

 雨は何日も降り続け、田畑の野菜にも影響が出始め、村人たちは村長に対策について相談に集まる事になった。


 男も他の男衆と共に村長の家に集まりに参加していた。正直雨に対する対策なんて分からないが、過去にあった事などは村長の家に残されているのでなんとかなるだろう、となんとなく考えていた。

 甘い、と言われればそうかもしれないが、当時学のない村人の考えなどその程度だった。自分たちに手に余るものは村長や寺の住職、もしくはその上の人間がやればいい、と。

 自分たち百姓はお上に言われた通り働いていればいいのだ、と今なら完全に思考放棄だと言われるだろうが当時はそれが常識だった。そして、それをいいように使うあくどいものもまたいた。


 村長は大分老齢になり、寝込むことが多くなっていた。最近では村長の息子か「若」と呼ばれて村の差配をしていた。そこへ大雨による問題ごとだったが、目障りで仕方ない、自分のすずを奪った憎い男を見て最悪の計画を思いついたのだった。


 ――人柱。

 それは古来より神の怒りを鎮めるための取ってきた手段であるが、村長の息子はこれを持ち出し、更にその対象をすずとした。自分の妻を贄に出せと言われた男はもちろん拒否したが、村長の息子が村人たちにお前たちの所の娘でも構わないぞ、と脅しをかけた。人柱は美しい女であればいいから、自分は慈悲をかけて既に子も産んだすずにしたんだが、と。

 まだ幼い村の娘たちを思えば、大人になり夫婦となって娘も設けたすずの方が確かに良かろう、と男の抵抗空しくすずは人柱に奪われてしまった。


 だが、男は諦めていなかった。

 人柱として、流れの激しい川に流される前に寺に連れていかれたすずを助けるため、男は一人娘を親類に預け、全て落ち着いたらこっそり村を出ろと言い残して独りで寺に向かった。

 そこで見たものは、悍ましいとしか言いようにないものだった。散々に弄ばれた妻すずを助け出し、逃げようとした所を二人は捕まってしまい、力づくで男は寺のへりに吊られた。


 夫が吊られるのをすずはやめてくれと泣きわめき、懇願するが、無慈悲に夫は殺され、無残な姿を見せつけられた。その上でまた、亡くなっているとはいえ夫の前で嬲られ、すずは心を壊しながら、「みんな死ねばいい、呪われろ」と言い残して自ら濁流へと身を投げた。


 村長の息子は最後まで自分の思うように行かないことに腹を立てたが、長年思い煩っていたすずを好き放題できたので割と満足もしていたが、それも長くは続かなかった。

 その夜、村長の家と寺を含む村の三分の二は濁流に流された。

 村長の息子はモズのはやにえのように木に串刺しとなり発見され、寺にいた男たちも住職も、皆苦悶の表情で見つかったが、すずとその夫は見つからなかった。

 村は半壊したが、残った者たちは細々と生き続けた。時折高所からの視線を感じるが、悪さをしていなければ問題なかった。


 あまりに悪さをするものは、ある日村の目立つ場所に吊られるようになった。

 それはもう知る人もいないが、妻を助けに行ったあの男のように――。



 ◇◆◇◆◇◆◇


 ――と、ここまでが厳槌先輩が持ってきた昔話の内容だった。


「……」


 なんとも言えない、救われなさに思わず無言になってしまう。山間の盆地と言う地域性から起きた悲しい話、では片づけがたい内容だった。

 

「ふう……なんというか、うん、昔話だね。しれっとえぐいよね」

「そうだね~、まあ一番えぐいとこの描写がないだけ、マシかも?」

「まあ……。はあ、気を取り直して! これが【体育館の吊り天井から覗く顔】でしょう?【合わせ鏡の廊下】の方は?」

「あれ、この辺にあったんだけど……先輩持って行ったのかも? 結論から言うと、満月の深夜1時合わせ鏡を行うと亡くした大切な人に会えるってお話だったよ」

「満月……1週間後か。じゃあ、明日からは体育館の方の調査だけど、この昔話を見るに悪さをしていると寄って来るってはなしだけど、悪さってなんだろ?」

「うーん、タバコ吸うとか?」

「……晶くん? たしかにこってこてのワルさだけど!ってゆうか、私そんなもん吸ったら倒れるよ?」

「たしかに~! まあ、本当に吸う必要もないと思うけどねー。火をつけるだけでいいんじゃん?」

「マジで? ……はあ、しゃーない先に本部にネゴっておいてもらうか。仕事で指導受けるとかやだもん」


 なんやかんやと言いながら、結局思い当たる他のワルさなんてないので明日先生に確認して試してみる事にした。


 なんというか、ヤンキー感あって、ちょっとだけ楽しい。

 本当には吸わないし、吸えないけど。



 少しだけワクワクして、明日の昼休みに晶くんと一緒に体育館の周りを確認していい(・・)ロケーションを見つけるのだ。

 尻尾をぺしぺししながらこっちを見ている、クロの呆れたような視線を感じるけど、気にしない!気にしない!!


読んでいただきありがとうございます!

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